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[S1-P-01]Depth variation of water contents decoded from petit-spot mantle xenolith

*Yuto SATO1, Norikatsu AKIZAWA2, Akira ISHIKAWA5, Kenji SHIMIZU1, Takayuki USHIKUBO1, Shiki MACHIDA3, Naoto HIRANO4 (1. JAMSTEC Kochi, 2. Hiroshima Univ. Sci., 3. ChibaTech ORCeNG, 4. Tohoku Univ. CNEAS, 5. Science Tokyo Sci.)
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Keywords:

Petit spot,Lithosphere-asthenosphere boundary,Mantle xenolith,FTIR,Water in NAMs

地球表層の約7割を構成する海洋プレートの生成と沈み込みは地球物質循環を駆動する重要な要素であり、海洋プレートの底であるリソスフェアーアセノスフェア境界(LAB)はプレートテクトニクスが存在する要因である。粘性コントラストであるLABの成因については主に①マントルに微量に含まれる水が直接かつ劇的にマントル物質を軟らかくする、②部分溶融によって生じたメルトがマントル物質を軟らかくするという二つの要素が考えられている。海洋域LABについては、①と関連して海嶺において玄武岩質地殻を生じた際に溶け残ったマントルは水に枯渇し、硬いリソスフェリックマントルを形成するというモデル(e.g., Hirth and Kohlstedt, 1996 EPSL)や、②と関連して海洋域LABの温度圧力条件が含水カンラン岩のソリダス条件と一致することから部分溶融こそがLABの本質であるとするモデル(e.g., Green et al., 2010 Nature)などが立てられている。これらのモデルを物質科学的に検証することはサンプリングの困難さゆえに達成されてこなかった。日本海溝近傍のアウターライズに伴って産するプチスポット火山は海洋プレート直下に溜まったマグマに由来するが、海洋域LABの貴重な物質的情報源となるマントルカンラン岩捕獲岩を含む(Hirano et al., 2006 Science)。本研究はこれらプチスポット産マントル捕獲岩を対象に含水量測定を行い、温度圧力推定結果と組み合わせることで海洋域リソスフェリックマントルの上部から底(LAB)までの含水量分布を復元し、LABの成因モデルを検証することを目的とする。

しんかい6500を用いたプチスポットSite Aでの深海底調査(YK20-14S・YK24-10S)により採集された捕獲岩のうち7試料について、カンラン石・直方輝石・単斜輝石を対象にFTIRを用いた含水量分析を行い、地質温度圧力推定と結果を比較した。分析手法はSato et al. 2023 EPSLと同様である。代表的な赤外吸光スペクトルを図に示す。カンラン石は3572と3525 cm-1 (Ti-clinohumiteタイプ)、3355と3330 cm-1(三価イオンタイプ)、3220 cm-1付近(Mg-site欠陥タイプ)のピークに特徴づけられる。一方、単斜輝石は3630、3520、3450 cm-1付近に、直方輝石は3570、3500、3400 cm-1付近にブロードなピークを示す。推定された含水量はカンラン石・直方輝石・単斜輝石でそれぞれ6.2-13.2 ppm、50.9-89.3 ppm、92.5-164 ppmである(図を参照)。カンラン石と直方輝石は、高いカンラン石含水量を示す2試料を除いて正相関を示す。得られた分配係数(DOPX/OL)は11.4となったが、これは実験的に求められた分配係数(~10、Hauri et al., 2006 EPSL)と整合的である。直方輝石と単斜輝石の含水量も正相関を示し、世界中のマントルカンラン岩捕獲岩の報告値(Demouchy & Bolfan-Casanova, 2016)に基づいた分配係数(1.98)と整合的な値を示す。

得られた含水量は地質温度圧力推定によって得られた捕獲岩の温度圧力条件と相関し、大まかに系統的な深さ変化を示す。高温・高圧(~1100℃・~2.8 GPa)を示すハルツバージャイト試料ではカンラン石含水量が12-13 ppmと高いのに対し(図中の赤点)、より低温・低圧(1.6-2.2 GPa、700-950 ℃)を示すレルゾライト試料ではカンラン石含水量が4.7-7.4 ppmと低くなる傾向にある(図中の青点)。これは①カンラン石―輝石間のH2O分配係数の圧力依存性、あるいは②非平衡な流体/メルトの付加の可能性が考えられる。カンラン石―メルト間のH2O分配係数を0.002、直方輝石―メルト間では0.015、単斜輝石―メルト間では0.021を仮定すると、得られた鉱物の含水量から推定できる共存した可能性のあるメルトの含水量は0.24-0.78 (平均0.49) wt.% H2Oとなる。今後はFTIRで分析した試料を含む13捕獲岩試料とメガクリスト1試料について、SIMSを用いて揮発性成分(H2O、F、CO2)の含有量を分析する予定である。