Presentation Information

[S1-P-02]Fluid inclusions in ultramafic xenoliths from Lanyu Island, Taiwan, in the northern Luzon volcanic arc

*wataru koguchi1, tomoyuki mizukami1, akihiro tamura1, kenichirou tani2, tomoaki morishita1 (1. Kanazawa Univ, Sci., 2. Natl. Mus. Nat. Sci.)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

Ultra mafic xenolith in islands arc,Fluid inclusion

沈み込み帯におけるスラブ流体は,スラブの脱水・脱炭酸反応により発生・移動し,マントルでの部分溶融を促す(例えば,Kimura et al., 2017 Geosphere).島弧火山岩中の超苦鉄質捕獲岩鉱物に産する流体包有物は,島弧下マントルにおける流体の挙動や化学組成に関する重要な手掛かりとなる(Kawamoto et al., 2013 PNAS).台湾東部からフィリピン中部にかけて南北に島弧火山が連なるルソンでは,複数の地点から超苦鉄質捕獲岩が報告されている(Arai & Ishimaru, 2008 Jour. Petrol.).本発表ではルソン火山弧北端に位置する台湾東部のLanyu島に産する超苦鉄質捕獲岩に着目し,鉱物中の流体包有物の記載・分析を行った結果を報告する.
 Lanyu島は,2.6Ma以前に起きた大規模な火山噴火によって形成された火山島である(Shao et al., 2014 Terr. Atmos. Ocean. Sci.).本研究で流体包有物を記載した超苦鉄質岩のサイズは数cm程度のものが多いが,ダナイト,ハルツバージャイト,レールゾライト,ウェールライト,単斜輝石-ホルンブレンドかんらん岩と多様である.これらの捕獲岩は,同じルソン火山弧に属する火山(Pinatubo,Iraya)中のかんらん岩捕獲岩と比較すると角閃石の形成や二次的な直方輝石の形成(Arai et al., 2004 Jour. Petrol.; Yoshikawa et al., 2016 Lithos)などはほとんど観察されない.本研究では,ラマン分光分析を用いて流体包有物内の相同定,フィールドエミッションSEM-EDS分析装置を用いて流体包有物の内部観察と化学組成定性分析を行った.流体包有物中からは,H₂O,蛇紋石,磁鉄鉱,マグネサイトなどのCO₂を含みH₂Oを主体とする流体とホスト鉱物であるかんらん石との反応生成物と解釈されるものに加えて,硬石膏(CaSO₄)が多くの流体包有物中から確認された.また,元素分析からは,Na,K,Ca,Al,Si,S,Cl,Pなどが普遍的に検出される.Kawamoto et al., (2013) は,同じルソン火山弧に属するPinatubo火山中のハルツバージャイト捕獲岩における流体包有物が塩素を含む水流体であることを報告した.ラマン分光分析およびSEM-EDS分析の結果から,Lanyu島の水流体も塩素を含んでいると考えられる.また,硬石膏の存在やSが高い頻度で検出されることから,Sに富む流体が存在することを示唆している.水流体に加えてケイ酸塩ガラス質と思われる流体も観察された.このガラス質包有物は亜球状の形態を示し,CO₂,硬石膏,マグネサイトが検出された.一部のケイ酸塩ガラス状包有物ではスピネルが付随して検出された.Iraya火山中のかんらん岩捕獲岩からは水を含むケイ酸塩ガラス包有物が報告されている(Schiano et al., 1995 Nature).他のルソン火山弧のかんらん岩捕獲岩とは記載岩石学的特徴は異なるものの,流体包有物として塩素を含む水流体とケイ酸塩ガラスが産することなど,類似した特徴を示す.流体包有物の頻度はLanyu島のものが少ないことから,Lanyu島では他のルソン火山弧下と同じ流体の流入は受けているが,その絶対量が少ないことからかんらん岩中の角閃石の形成や二次的な直方輝石の形成に至らなかった可能性などが考えられる.