Presentation Information
[S2-04]Microstructural Formation of Lizardite and Antigorite Coexisting with Olivine at Hodono, Niihama, Ehime, Japan
*Hinano Wada1, Enju Satomi1 (1. Ehime Univ. Sci.)
Keywords:
peridotite,serpentinite,antigorite,lizardite,Higashi-akaishi peridotite body
【はじめに】
蛇紋石は、リザーダイト、クリソタイル、アンチゴライトの3種に分類され、アンチゴライトは比較的高温条件下で安定である(Evans, 2004)。蛇紋岩中では、蛇紋石とかんらん石の様々な共存組織が見られ、例えばかんらん石の粒間や割れ目から水が浸透し、外側から内側へ順にリザーダイトやクリソタイルへ置換されることでメッシュ組織が形成される。Schwartz et al. (2013) は、リザーダイトのリム、クリソタイルのコアをもつメッシュ組織が短冊状のアンチゴライトに置換された組織、Boudier et al. (2009) は、かんらん石の一定方向の亀裂に沿ってアンチゴライトが形成された組織を報告している。しかし、アンチゴライトとリザーダイト共存時の組織やそれらの形成順序、蛇紋岩化の進行度に伴う組織の多様性は十分に議論されていない。本研究ではこれらについて明らかにするため、三波川変成帯東赤石かんらん岩体南端の保土野谷川上流の露頭を対象に、かんらん石と共存するアンチゴライトとリザーダイトの組織に着目し、形成過程の考察を行った。
【研究手法】
南北50 mの露頭の14地点から試料を採取し、RIGAKU製 Ultima Ⅳによる粉末X線回折で主要構成鉱物と蛇紋石種を同定した。代表的試料には偏光顕微鏡による組織観察と、Oxford製EDSを装着したJEOL製走査型顕微鏡JSM-6510LVを用いた分析を行った。さらに、日本分光製NRS-5100grを用いたラマン分析より組織中の蛇紋石種を同定した。
【結果・考察】
露頭は蛇紋岩化の程度の異なるかんらん岩から構成され、産状や組織から4タイプに分類した。露頭上部の片状または塊状かんらん岩は粗粒かんらん石(500 µm~1 mm)からなり、蛇紋岩化はあまりしておらず、アンチゴライトやリザーダイトを少量含む(タイプ①)。露頭下部の塊状かんらん岩は、細〜中粒のかんらん石(50-300 µm)からなり、蛇紋岩化が進みアンチゴライトが多く、ブルーサイトも含まれる(タイプ②)。露頭中部には性質の異なる2種類の小規模な岩体が見られた。一方は塊状かんらん岩で、細〜中粒のかんらん石(50-300 µm)からなり、蛇紋岩化が進みリザーダイトを多く含む(タイプ③)。かんらん石のコア、リザーダイトのリムからなるメッシュ組織やクロム鉄鉱周囲の菫泥石が特徴的であり、ブルーサイトも含む。もう一方の岩体は片状の蛇紋岩で、アンチゴライトとごく少量の細粒かんらん石(50-100 µm)からなる(タイプ④)。各タイプのかんらん石のMg#はタイプ①91-93、タイプ②90-91、タイプ③95-96、タイプ④93-94である。
アンチゴライトは短冊状と細粒部があり、短冊状は比較的Alに富む。リザーダイトはかんらん石の割れ目や周縁部、メッシュ組織のリムに分布していた。かんらん石は、形状や割れ方にいくつか種類が見られた。くさび-板状のかんらん石は、アンチゴライトに富む試料で多く確認され、特にタイプ②で顕著であった。中には、へき開のように一定方向の直線的な割れ目をもつ「Cleavable Olivine」も含まれ、これはタイプ②にのみ見られた。くさび状かんらん石は主にアンチゴライトが共存し、周縁部や割れ目の一部にリザーダイトを伴うものもみられた。一方、粒状かんらん石は全タイプで見られ、特にタイプ③で多く、周縁部や割れ目にリザーダイトを伴う。タイプ③では、コアに粒状かんらん石、リムにリザーダイトをもつメッシュ組織も確認できた。タイプ①の粗粒かんらん石も粒状であるが、蛇紋岩化の程度が他より低く、形状が異なる。粒間や割れ目にはリザーダイトがみられ、短冊状アンチゴライトが粒間や割れ目を横断して産する。本研究では、アンチゴライトに富んだ試料であってもかんらん石の割れ目や周縁部にも少量のリザーダイトが確認され、タイプ④を除く全試料でアンチゴライトとリザーダイトが共存しており、これらのかんらん岩は高温・低温両環境下で蛇紋岩化を受けたと考えられる。さらに、くさび状およびCleavable Olは高温、粒状やメッシュ組織は低温条件でのかんらん石の亀裂形成と蛇紋岩化を示唆する。各タイプのかんらん石の組織から、タイプ①は蛇紋岩化の程度が低いが高温・低温両方を経験し、タイプ③では主に低温、②や④では主に高温条件で蛇紋岩化が進行したと考えられる。また、かんらん石やクロム鉄鉱の組成から、タイプ③のかんらん岩は他タイプと異なる起源をもつた可能性がある。以上より、保土野のかんらん岩体では、低温域から高温域までかんらん石から蛇紋石の形成が起こっており、岩体ごとに主な蛇紋岩化の段階が異なりそれが組織の多様性をもたらしていた。
蛇紋石は、リザーダイト、クリソタイル、アンチゴライトの3種に分類され、アンチゴライトは比較的高温条件下で安定である(Evans, 2004)。蛇紋岩中では、蛇紋石とかんらん石の様々な共存組織が見られ、例えばかんらん石の粒間や割れ目から水が浸透し、外側から内側へ順にリザーダイトやクリソタイルへ置換されることでメッシュ組織が形成される。Schwartz et al. (2013) は、リザーダイトのリム、クリソタイルのコアをもつメッシュ組織が短冊状のアンチゴライトに置換された組織、Boudier et al. (2009) は、かんらん石の一定方向の亀裂に沿ってアンチゴライトが形成された組織を報告している。しかし、アンチゴライトとリザーダイト共存時の組織やそれらの形成順序、蛇紋岩化の進行度に伴う組織の多様性は十分に議論されていない。本研究ではこれらについて明らかにするため、三波川変成帯東赤石かんらん岩体南端の保土野谷川上流の露頭を対象に、かんらん石と共存するアンチゴライトとリザーダイトの組織に着目し、形成過程の考察を行った。
【研究手法】
南北50 mの露頭の14地点から試料を採取し、RIGAKU製 Ultima Ⅳによる粉末X線回折で主要構成鉱物と蛇紋石種を同定した。代表的試料には偏光顕微鏡による組織観察と、Oxford製EDSを装着したJEOL製走査型顕微鏡JSM-6510LVを用いた分析を行った。さらに、日本分光製NRS-5100grを用いたラマン分析より組織中の蛇紋石種を同定した。
【結果・考察】
露頭は蛇紋岩化の程度の異なるかんらん岩から構成され、産状や組織から4タイプに分類した。露頭上部の片状または塊状かんらん岩は粗粒かんらん石(500 µm~1 mm)からなり、蛇紋岩化はあまりしておらず、アンチゴライトやリザーダイトを少量含む(タイプ①)。露頭下部の塊状かんらん岩は、細〜中粒のかんらん石(50-300 µm)からなり、蛇紋岩化が進みアンチゴライトが多く、ブルーサイトも含まれる(タイプ②)。露頭中部には性質の異なる2種類の小規模な岩体が見られた。一方は塊状かんらん岩で、細〜中粒のかんらん石(50-300 µm)からなり、蛇紋岩化が進みリザーダイトを多く含む(タイプ③)。かんらん石のコア、リザーダイトのリムからなるメッシュ組織やクロム鉄鉱周囲の菫泥石が特徴的であり、ブルーサイトも含む。もう一方の岩体は片状の蛇紋岩で、アンチゴライトとごく少量の細粒かんらん石(50-100 µm)からなる(タイプ④)。各タイプのかんらん石のMg#はタイプ①91-93、タイプ②90-91、タイプ③95-96、タイプ④93-94である。
アンチゴライトは短冊状と細粒部があり、短冊状は比較的Alに富む。リザーダイトはかんらん石の割れ目や周縁部、メッシュ組織のリムに分布していた。かんらん石は、形状や割れ方にいくつか種類が見られた。くさび-板状のかんらん石は、アンチゴライトに富む試料で多く確認され、特にタイプ②で顕著であった。中には、へき開のように一定方向の直線的な割れ目をもつ「Cleavable Olivine」も含まれ、これはタイプ②にのみ見られた。くさび状かんらん石は主にアンチゴライトが共存し、周縁部や割れ目の一部にリザーダイトを伴うものもみられた。一方、粒状かんらん石は全タイプで見られ、特にタイプ③で多く、周縁部や割れ目にリザーダイトを伴う。タイプ③では、コアに粒状かんらん石、リムにリザーダイトをもつメッシュ組織も確認できた。タイプ①の粗粒かんらん石も粒状であるが、蛇紋岩化の程度が他より低く、形状が異なる。粒間や割れ目にはリザーダイトがみられ、短冊状アンチゴライトが粒間や割れ目を横断して産する。本研究では、アンチゴライトに富んだ試料であってもかんらん石の割れ目や周縁部にも少量のリザーダイトが確認され、タイプ④を除く全試料でアンチゴライトとリザーダイトが共存しており、これらのかんらん岩は高温・低温両環境下で蛇紋岩化を受けたと考えられる。さらに、くさび状およびCleavable Olは高温、粒状やメッシュ組織は低温条件でのかんらん石の亀裂形成と蛇紋岩化を示唆する。各タイプのかんらん石の組織から、タイプ①は蛇紋岩化の程度が低いが高温・低温両方を経験し、タイプ③では主に低温、②や④では主に高温条件で蛇紋岩化が進行したと考えられる。また、かんらん石やクロム鉄鉱の組成から、タイプ③のかんらん岩は他タイプと異なる起源をもつた可能性がある。以上より、保土野のかんらん岩体では、低温域から高温域までかんらん石から蛇紋石の形成が起こっており、岩体ごとに主な蛇紋岩化の段階が異なりそれが組織の多様性をもたらしていた。