Presentation Information
[S2-05]Dehydration of magma: Its Role in geothermal resources, mineral resources, and catastrophic eruption
*Isoji Miyagi1 (1. GSJ/AIST)
Keywords:
magmatic water,geothermal resources,melt inclusions,porphyry copper,catastrophic eruption
本講演では、セッションテーマである「水」の役割を学際的・分野横断的に探るため、マグマ水に焦点を当て、地熱資源、鉱物資源、そして巨大噴火とのかかわりを紹介します。
そもそもマグマ中にどれほどの水が存在するのかを正確に把握することが、本テーマにおいて極めて重要です。マグマ水の大部分は噴火時に放出されてしまうため、その量を見積もるには工夫が必要です。この課題には、主に以下の二つのアプローチがあります。一つは、噴火時に水が逃げにくい斑晶ガラス包有物を直接分析する方法です。この方法では、数マイクロメートルの空間分解能を持つ分析技術が求められます。もう一つは、斑晶鉱物の組み合わせや組成から間接的にマグマ水を見積もる方法です。これは、既知の含水量試料を用いた高温高圧実験の結果と天然試料を比較することで行われます。さらに、熱力学計算は、これらの高温高圧実験の成果を体系的にまとめる強力なツールとして機能します。
マグマから水が抜けるプロセスは、基本的に減圧と結晶化の2つに集約されます。メルトへの水の飽和溶解度は圧力に強く依存するため、マグマが上昇して減圧すると、飽和溶解度が低下し、その結果、水がマグマから分離します。一方、ほとんどの造岩鉱物は水をほとんど含まないため、マグマが冷却して結晶化が進行すると、残りのメルト中に水が濃集し、飽和溶解度に到達します。また、減圧によっても鉱物相平衡が変化し、結晶化が促進されることがあります。このようにしてマグマから放出される水は、地熱資源や鉱物資源の形成、そして巨大噴火のメカニズムに深く関わっています。
地熱の熱源はマグマですが、熱源から地熱貯留層までは数キロメートル離れており、遅い熱伝導では効率的な熱の運搬は困難です。これに対し結晶化によって放出されるマグマ水は、亀裂を高速移動し、浅所の岩石を効率的に加熱できます。この水が去った後に天水が通れば、天水起源の地熱貯留層が形成されると考えられます。また、マグマの減圧に伴なう脱水は、条件がそろうと「火道内マグマ対流」を引き起こします。火道内マグマ対流は、含水マグマが火口直下で脱ガスし比重を増した結果地下深部に戻ることの繰り返しで大量のマグマ水を浅所で放出する現象で、未着手だが巨大な地熱資源です。
この火道内マグマ対流は、何百立方キロメートルもの膨大なマグマを一点で脱ガスさせるため、広範囲に分散していた物質を一箇所に濃集させると考えられ、鉱物資源、特に斑岩銅鉱床のモデルとされています。例えば、二酸化硫黄を1日あたり1000トン放出している火山(阿蘇中岳や桜島)は、銅を約1トン/日、金を約15トン/年も大気に放出していると見積られ、これを回収しないことは大きな損失と言えます。
最後に、マグマ水は巨大噴火の発生にも関連しています。過飽和になった水や二酸化炭素は大量の高圧ガスとしてマグマを地下深部から地上へと一気に移動させるからです。巨大噴火(噴出量10立方キロメートル以上)はおよそ1万年に一度発生する低頻度事象ですが、その被害範囲の広さから、東日本大震災と比較して数十倍も危険であると考えられ、しかも事実上避難は不可能です。我々は、巨大噴火の発生を阻止するという発想を本格的に検討すべきです。あるタイプの火山に対しては巨大噴火の発生を抑止できる可能性が見えてきました(特許出願手続き中)。この重要な課題に興味のある方は、ぜひ仲間になっていただきたいと思います。
そもそもマグマ中にどれほどの水が存在するのかを正確に把握することが、本テーマにおいて極めて重要です。マグマ水の大部分は噴火時に放出されてしまうため、その量を見積もるには工夫が必要です。この課題には、主に以下の二つのアプローチがあります。一つは、噴火時に水が逃げにくい斑晶ガラス包有物を直接分析する方法です。この方法では、数マイクロメートルの空間分解能を持つ分析技術が求められます。もう一つは、斑晶鉱物の組み合わせや組成から間接的にマグマ水を見積もる方法です。これは、既知の含水量試料を用いた高温高圧実験の結果と天然試料を比較することで行われます。さらに、熱力学計算は、これらの高温高圧実験の成果を体系的にまとめる強力なツールとして機能します。
マグマから水が抜けるプロセスは、基本的に減圧と結晶化の2つに集約されます。メルトへの水の飽和溶解度は圧力に強く依存するため、マグマが上昇して減圧すると、飽和溶解度が低下し、その結果、水がマグマから分離します。一方、ほとんどの造岩鉱物は水をほとんど含まないため、マグマが冷却して結晶化が進行すると、残りのメルト中に水が濃集し、飽和溶解度に到達します。また、減圧によっても鉱物相平衡が変化し、結晶化が促進されることがあります。このようにしてマグマから放出される水は、地熱資源や鉱物資源の形成、そして巨大噴火のメカニズムに深く関わっています。
地熱の熱源はマグマですが、熱源から地熱貯留層までは数キロメートル離れており、遅い熱伝導では効率的な熱の運搬は困難です。これに対し結晶化によって放出されるマグマ水は、亀裂を高速移動し、浅所の岩石を効率的に加熱できます。この水が去った後に天水が通れば、天水起源の地熱貯留層が形成されると考えられます。また、マグマの減圧に伴なう脱水は、条件がそろうと「火道内マグマ対流」を引き起こします。火道内マグマ対流は、含水マグマが火口直下で脱ガスし比重を増した結果地下深部に戻ることの繰り返しで大量のマグマ水を浅所で放出する現象で、未着手だが巨大な地熱資源です。
この火道内マグマ対流は、何百立方キロメートルもの膨大なマグマを一点で脱ガスさせるため、広範囲に分散していた物質を一箇所に濃集させると考えられ、鉱物資源、特に斑岩銅鉱床のモデルとされています。例えば、二酸化硫黄を1日あたり1000トン放出している火山(阿蘇中岳や桜島)は、銅を約1トン/日、金を約15トン/年も大気に放出していると見積られ、これを回収しないことは大きな損失と言えます。
最後に、マグマ水は巨大噴火の発生にも関連しています。過飽和になった水や二酸化炭素は大量の高圧ガスとしてマグマを地下深部から地上へと一気に移動させるからです。巨大噴火(噴出量10立方キロメートル以上)はおよそ1万年に一度発生する低頻度事象ですが、その被害範囲の広さから、東日本大震災と比較して数十倍も危険であると考えられ、しかも事実上避難は不可能です。我々は、巨大噴火の発生を阻止するという発想を本格的に検討すべきです。あるタイプの火山に対しては巨大噴火の発生を抑止できる可能性が見えてきました(特許出願手続き中)。この重要な課題に興味のある方は、ぜひ仲間になっていただきたいと思います。