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[S2-P-06]Changes in rock texture during the formation of episyenites from Hakata Island, Ehime Prefecture, Japan.

*Toko FUKUI1, Kazuya SHIMOOKA2, Toshiro TAKAHASHI3, Satoshi SAITO1 (1. Ehime Univ., 2. Kwansei Gakuin Univ., 3. Niigata Univ.)
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Keywords:

episyenite,granite,episyenitization,alkali metasomatism,Supercritical geothermal reservoir

1.はじめに
 エピ閃長岩は,花崗岩類とアルカリ成分に富む流体との岩石―水相互作用により形成される,石英に乏しく,アルカリ長石に富む岩石である(Suikkanen and Ramo, 2019).エピ閃長岩形成時には,原岩に含まれる石英の溶脱とそれに伴う空隙の形成,長石類のアルカリ長石化が主たる反応として進行する.また,その後の二次鉱物の充填などにより,空隙が失われる場合もある(例えば, Cathelineau, 1986).このように,エピ閃長岩はその形成過程において,花崗岩と熱水の反応による空隙・亀裂の発達とそれに伴う流路の形成,さらにその後の流路の閉塞までを経験した岩石であることから,地熱貯留層における熱水活動史を理解する上で重要な研究対象である.本研究では, エピ閃長岩形成時に起こる石英を始めとした鉱物の溶脱(空隙の発達による流路の形成)と,二次鉱物の晶出(空隙の充填による流路の閉塞)までの反応過程を明らかにするために, 愛媛県伯方島に分布するエピ閃長岩の野外産状および岩石記載をおこない, その組織変化を議論する. また,反応に関与した流体の温度条件についても議論し,当地域のエピ閃長岩が超臨界流体の活動により形成したものであることを示す.
2.野外産状・岩石記載
 当地域には2種類のエピ閃長岩が産し, その色調の違いにより, 真珠色閃長岩と牡蠣色閃長岩に区別される. これらのエピ閃長岩は黒雲母と角閃石を含む花崗岩に伴って産出している.真珠色閃長岩は, 露頭中に空隙やそれを繋ぐ亀裂が認められるほか,有色鉱物の集合体が配列する層状構造も認められる.主な構成鉱物はアルカリ長石および柘榴石であり,そのほか少量の単斜輝石,チタン石および二次的な石英が認められる.有色鉱物が少なく, 優白質な岩石である.柘榴石とチタン石は空隙を埋めるように晶出している.また,ごく僅かに微細で他形のジルコンが含まれることがある.一方, 牡蠣色閃長岩は,露頭中では視認できるサイズの空隙は認められない.また,真珠色閃長岩に比べ, 母岩の花崗岩の組織が残存している.構成鉱物はアルカリ長石および単斜輝石であり,そのほか少量の柘榴石,チタン石,ジルコン,燐灰石,褐簾石,磁鉄鉱および二次的な石英が認められる.単斜輝石と柘榴石は粒状集合組織を呈し,この粒状集合組織中に微細な空隙が認められる.一部では,単斜輝石,磁鉄鉱およびチタン石に伴う,角閃石および黒雲母の残存結晶が認められる.ジルコンは自形のものと他形のものとがみられ,他形のものはしばしば外縁部が湾状に融食されている.
3.議論:エピ閃長岩形成過程の組織変化(流路の形成と閉塞)
 当地域に産する2種類のエピ閃長岩は連続せず,それぞれが原岩と漸移していることから,両者は同一の原岩から別々の反応過程を経て形成したものと考えられる.本研究ではこの各エピ閃長岩の反応過程を,熱水の流路形成期と考えられる①エピ閃長岩化作用ステージ(石英などの鉱物の溶脱・長石のアルカリ長石化)と,流路の閉塞期と考えられる②空隙充填ステージ(二次鉱物の晶出),に区分した(図参照、福井・齊藤、印刷中).真珠色閃長岩は有色鉱物に乏しく空隙に富む特徴から,①での原岩からの石英,有色鉱物,ジルコンの溶脱が著しく,②おける空隙充填が限定的であったと考えられる.一方で,牡蠣色閃長岩は黒雲母や角閃石の残存結晶が認められ,空隙中に粒状集合組織が発達していることから,①での有色鉱物の溶脱が限定的であり,②では有色鉱物の交代や二次鉱物による空隙充填が顕著であったと考えられる.なお,Suikkanen and Ramo (2019)では,エピ閃長岩のうち輝石を含むものは比較的高温条件(> 450 ℃)で形成したとしている.当地域のエピ閃長岩にも輝石が含まれることから,本研究において議論した組織変化,特に空隙の発達(流路の形成)と充填(流路の閉塞)は,450℃を超える超臨界流体の活動により引き起こされたものと考えることができる.

引用文献
: Suikkanen and Ramo (2019) Min. Metall. Explor., 36, 861–878; Cathelineau (1986) J. Petrol., 27, 235–244; 福井・齊藤(印刷中)地質学雑誌