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[S3-05]Deformation-induced phase transition of enstatite

*Miki TASAKA1, Maya Iwago1 (1. Shizuoka University)
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Keywords:

enstatite,deformation,phase transition

Mg輝石のエンスタタイトは高温で安定なプロトエンスタタイト(PEn、T = 985-1557℃)から低温で安定なクライノエンスタタイト(CEn T <500℃)に相転移する際に体積が-6%減少し、相転移に伴う体積変化に起因して局所的に変形と破壊が進行する。この特性は試料にダメージを加えた時に結晶スケールの微細構造変化を調べるアナログ物質に応用できると考えた。先行研究よりPEnからCEnへの相転移に粒径や応力依存があることが分かっている(Ohi et al., 2022Can. Min.; Tasaka and Iwago, 2024PCM) 。
本研究はビッカース変形試験機を用い、ピラミット形状の圧子を鏡面研磨した試料に押し付け、荷重一定で15秒保持したのち圧子を抜く変形実験を行った。局所領域(7.6~2660mm2)に荷重0.1〜20 Nを加え試料に高応力(~10GPa)を加えた。出発試料は焼結温度と時間を変えることでPEn100%とPEnとCEnの割合が91:9%の試料を準備した。変形実験の結果、特に圧痕付近ではCEnの割合が顕著に増加した。圧痕をつけた直後は、荷重0.1~10Nの範囲では荷重が大きくなるほどCEnの割合が増加したのに対し、20NではCEnの割合は変化しなかった。また、圧痕を付けた直後よりも時間が経過するとCEnの割合がさらに増加する傾向が見られた。初期CEnの多い試料では、圧痕をつけて6カ月が経過した時点で初期CEn割合の2倍に増加していた。このことから、変形誘起相転移は荷重に依存し、PEnからCEnへの相転移は未変形試料のCEnの割合(初期試料の粒径)に影響を受けることが明らかになった。
本研究の実験結果は、局所的な変形が鉱物の相転移を促進させることを示している。ビッカース変形試験機による変形は低温塑性変形(パイエルス機構)の変形機構で起きる。本研究で調べた輝石の相転移はマントル遷移層(深さ520km)のウォズリアイトからリングウッダイトへの相転移と比較して、相転移の体積変化率が似ている、低温塑性変形で低温・高応力下で強く変形するという共有点があり、今後エンスタタイト以外のケイ酸塩鉱物への応用も期待される。