Presentation Information
[S3-12]Study of geological structures and rock textures associated with strain relief along plate boundary faults
*Haruki Yoshiasa1, Jun-ichi Ando1,3, Kaushik Das1,3, Dyuti Prakash Sarkar2,3 (1. Hiroshima Univ., 2. Yamaguchi Univ., 3. HiPeR)
Keywords:
Bedding plane slip,Main boundary fault,Microstructure observation,Frictional heating,Dynamic recrystallization
【はじめに】ヒマラヤ地域は、インド亜大陸とアジア大陸の衝突に伴い形成され、3つの主要なプレート収束境界断層 (主前縁衝上断層(MFT)・主境界衝上断層(MBT)・主中央衝上断層(MCT))が存在する。現在でもインド亜大陸は北上を続けており、その結果ヒマラヤ地域では地震が発生している。Bilham (2019)は、沈み込みに伴って蓄積された歪は、地震によって完全には解放されておらず、いずれMw=8.6レベルの地震が1~2回発生する可能性が強いと結論づけている。一方で、大陸プレートの衝突に際し、プレート境界でどのような地質現象が生じているのかということは明らかにされておらず、歪がどのように解放されているかは明らかにされていない。そこで本研究では、このことを明らかにするために、地質調査および岩石の微細組織のキャラクタリゼーションを行った。
【研究対象地域】インド・ヒマチャルプラデシュ州サバスー市に露出するMBTを挟む3×2 ㎞の範囲である。MBTは、約10 - 0.5 Maの間に活動した断層(Meigs et al.1995)である。地表に露出するMBTの上盤側は220℃、下盤側は180℃の温度条件下で変形した岩石が露出する(Sarkar et al.2021)。MBTの上盤には、先カンブリア時代の砂岩層が主に分布する。砂岩単層の層厚は約5 - 30 cmである。泥岩層(単層の層厚約2 ㎝)との互層も確認できる。下盤には新第三期の石灰質砂岩が主に露出し、方解石脈が広く確認できる。研究の結果、以下の事が明らかとなった。
【結果:野外調査】1)MBTの上盤側では、調査域全体で層面滑りの痕跡を確認した。2)褶曲や小断層が発達する幅100 - 500 mの領域(歪集中帯)が複数確認できる。歪集中帯と整然層の分布からセクション分けすると、それぞれの地層の走向はほぼ同一ながら、傾斜はセクションごとに最大で約60度回転している事が分かる。3)層面滑り面上に発達する“すべり線”と“キンクバンド”から、それぞれすべりの方向と主圧縮軸の方向を求めた。その結果、それらはMBTの活動と整合的なものが多いことが明らかとなった。4)滑り面上には、すべり線と平行な長さ5 – 10 ㎝の白い筋が確認された。
【結果:層面滑りを受けた砂岩の微細組織観察】5)層面滑りは、砂岩単層内部に層理面と平行に複数形成されている。剪断面は、1 – 10 mmの幅をもっており、この内部ですべりが生じている。6)各剪断面は小歪から大歪の状態を記録している。歪が大きくなるに従って、石英(あるいは長石)が流体と反応し細粒化するとともに白雲母が晶出する。7)すべり面の内部には、砂岩を構成する約10 μmの石英粒子が剪断方向に伸長し波動消光を示している。この様な塑性変形した石英から石英脈が生じている。このことは、砂岩を構成する石英粒子が剪断による摩擦熱によって塑性変形し、石英粒子から石英脈が形成されたことを強く示唆する。この石英脈は、結果4)の白い筋に対応する。8)塑性変形した石英粒子の結晶方位をEBSDによって測定した。その結果、basalすべりによる転位クリープによって形成されたCPOが確認できた。このCPOは300~400℃で卓越することが知られている(Zuo et al.2021)。石英脈中の動的再結晶を受けた石英の粒径は約2 μmである。再結晶粒径による地質差応力計を用いて差応力を見積もり、温度と差応力値から石英脈形成時の歪速度を推定した。その結果、差応力 925 MPa、歪速度 10-10 – 10-8 /s、すべり速度 10-12 – 10-10 m/sとなった。このすべり速度は、Rowe et al.(2015)で示されたSSEのすべり速度と対応する。
これらの結果から、プレート衝突帯の衝上断層の上盤側では、層面滑りが卓越しており、その運動による摩擦発熱によって80℃程度の温度の上昇があったことが明らかとなった。そのため、プレートの沈み込みを起因として生じる歪エネルギーの一部は、“層面滑りの運動”と“すべりによる摩擦発熱”によって解放されている可能性が示唆される。
現在、CPOを形成している石英粒子に亜結晶粒界での滑り系解析(Menegon et al.2011)を行っている。これらの結果についても、報告する予定である。
【研究対象地域】インド・ヒマチャルプラデシュ州サバスー市に露出するMBTを挟む3×2 ㎞の範囲である。MBTは、約10 - 0.5 Maの間に活動した断層(Meigs et al.1995)である。地表に露出するMBTの上盤側は220℃、下盤側は180℃の温度条件下で変形した岩石が露出する(Sarkar et al.2021)。MBTの上盤には、先カンブリア時代の砂岩層が主に分布する。砂岩単層の層厚は約5 - 30 cmである。泥岩層(単層の層厚約2 ㎝)との互層も確認できる。下盤には新第三期の石灰質砂岩が主に露出し、方解石脈が広く確認できる。研究の結果、以下の事が明らかとなった。
【結果:野外調査】1)MBTの上盤側では、調査域全体で層面滑りの痕跡を確認した。2)褶曲や小断層が発達する幅100 - 500 mの領域(歪集中帯)が複数確認できる。歪集中帯と整然層の分布からセクション分けすると、それぞれの地層の走向はほぼ同一ながら、傾斜はセクションごとに最大で約60度回転している事が分かる。3)層面滑り面上に発達する“すべり線”と“キンクバンド”から、それぞれすべりの方向と主圧縮軸の方向を求めた。その結果、それらはMBTの活動と整合的なものが多いことが明らかとなった。4)滑り面上には、すべり線と平行な長さ5 – 10 ㎝の白い筋が確認された。
【結果:層面滑りを受けた砂岩の微細組織観察】5)層面滑りは、砂岩単層内部に層理面と平行に複数形成されている。剪断面は、1 – 10 mmの幅をもっており、この内部ですべりが生じている。6)各剪断面は小歪から大歪の状態を記録している。歪が大きくなるに従って、石英(あるいは長石)が流体と反応し細粒化するとともに白雲母が晶出する。7)すべり面の内部には、砂岩を構成する約10 μmの石英粒子が剪断方向に伸長し波動消光を示している。この様な塑性変形した石英から石英脈が生じている。このことは、砂岩を構成する石英粒子が剪断による摩擦熱によって塑性変形し、石英粒子から石英脈が形成されたことを強く示唆する。この石英脈は、結果4)の白い筋に対応する。8)塑性変形した石英粒子の結晶方位をEBSDによって測定した。その結果、basalすべりによる転位クリープによって形成されたCPOが確認できた。このCPOは300~400℃で卓越することが知られている(Zuo et al.2021)。石英脈中の動的再結晶を受けた石英の粒径は約2 μmである。再結晶粒径による地質差応力計を用いて差応力を見積もり、温度と差応力値から石英脈形成時の歪速度を推定した。その結果、差応力 925 MPa、歪速度 10-10 – 10-8 /s、すべり速度 10-12 – 10-10 m/sとなった。このすべり速度は、Rowe et al.(2015)で示されたSSEのすべり速度と対応する。
これらの結果から、プレート衝突帯の衝上断層の上盤側では、層面滑りが卓越しており、その運動による摩擦発熱によって80℃程度の温度の上昇があったことが明らかとなった。そのため、プレートの沈み込みを起因として生じる歪エネルギーの一部は、“層面滑りの運動”と“すべりによる摩擦発熱”によって解放されている可能性が示唆される。
現在、CPOを形成している石英粒子に亜結晶粒界での滑り系解析(Menegon et al.2011)を行っている。これらの結果についても、報告する予定である。