Presentation Information
[S3-13]Seismic discontinuity in the Martian crust possibly caused by the presence of aquifer
*Ikuo KATAYAMA1, Yuya Akamatsu2 (1. Hiroshima University, 2. JAMSTEC)
Keywords:
Mars,Seismic discontinuity,Water
地震計を備えた火星探査機InSightによって,火星の地殻内に地震波速度の不連続面が存在することが明らかになりました(e.g., Lognonne et al. 2023)。その原因としては,火星地殻の岩石種が異なることや空隙率が変化することが提案されています(Wieczorek et al. 2022)。しかし,地震波速度は岩石中の空隙を満たす流体の種類(空気や水)によっても大きく異なるため,火星で検出された地震波不連続構造は,空隙を満たす流体が変化すること,すなわち帯水層が存在することでも説明が可能ではないかと考えました。そこで,私たちは火星を模擬した岩石を用い,空隙が空気と水で満たされた場合にどのような地震波速度になるかを実験室で検証しました。試料は,火星隕石のシャーゴッタイトに化学組成や組織が似ているスウェーデン産のダイアベースを用い,熱クラックを生成させることで空隙率の異なるサンプルを準備しました。その岩石を乾燥条件(空隙は空気で満たされる)と含水条件(空隙は水で満たされる)において,パルス透過法によって地震波速度(Vp, Vs)を測定しました。その結果,地震波速度は空隙率の増加とともに系統的に低下し,空隙が水で満たされた方が空気で満たされた場合よりも速度が顕著に速くなりました。これらの結果に有効媒質理論を適用すると,空隙の形状は扁平でクラック状であることが推察されました。これらの結果に基づいて,深さ方向に空隙率は一定と仮定し,乾燥条件から含水条件に移行することで地震波速度がどのように変化するかを計算しました。その結果,空隙率が1%程度であれば,空隙を満たす流体が空気から水に移行することで,地震波探査で検出される火星地殻内の地震波不連続面を説明できることがわかりました。また,その深さでVp/Vsが上昇していることも,空隙が水で満たされた帯水層があることと調和的です。地震波構造は現在の火星内部の状態を反映しているため,これらのことは現在の火星においても地下に液体の水が存在することを示唆します。とはいうものの,これは一つの仮説であって地震波不連続面の成因に決着がついたわけではありません。今後は水に敏感な性質をもつ電気比抵抗などの構造探査によって,火星内部での水の存在がさらに検証されていくことを期待したいと思います。