Presentation Information
[R1-08]Intensity tensors of quadrupole doublets of Fe2+ and Fe3+ in Hornblende by Mössbauer spectroscopy.
*Machi Tanaka1, Keiji Shinoda1, Yasuhiro Kobayashi2 (1. Osaka Metropolitan Univ. Sci., 2. KURNS.)
Keywords:
Hornblende,Mössbauer spectroscopy,Quadpole doublet,Intensity tensor
はじめに
角閃石は主要な造岩鉱物の1つであり、多席固溶体である。普通角閃石の一般化学式は、A0-1B2C5T8O22(OH,F,Cl)2で表され、Fe2+はBのM4席とCのM1,M2,M3に、Fe3+は主にCのM2席にそれぞれ配位する。鉱物中の鉄イオンの価数の量比などの詳細な状態はメスバウアースペクトル測定で明らかにできる。
メスバウアースペクトルとは57Co放射性同位体線源を往復運動させて生じるドップラー効果により、ガンマ線の狭いエネルギー幅内に現れる超微細な吸収スペクトルである。鉄イオンを含む角閃石の測定時においては四極子ダブレットが現れ、四極子ダブレットのピーク形状により、Fe2+とFe3+とを区別できる。四極子ダブレットの形状は、アイソマーシフト、四極子分裂、ピーク半値幅、ピーク強度比の4つのパラメーターで特徴付けられる。特に、Fe3+の四極子ダブレットは、Fe2+のものよりも四極子分裂が小さいことが特徴である。
普通角閃石は単斜晶系に属する結晶である。Zimmermann(1983)によると、単斜晶系のメスバウアースペクトルのピーク強度比は、単結晶の結晶に設定した直交軸に対するガンマ線の入射方向の方向余弦とピーク強度テンソルにより算出される。ピーク強度比は粉末試料の場合はガンマ線の入射方向によらず等しいが、単結晶の薄片試料の場合はガンマ線の入射方向によって変化する。鉄イオンが複数のM席に配位している普通角閃石の場合、複数の四極子ダブレットが重なったメスバウアースペクトルが得られる。各四極子ダブレットがどのM席の鉄イオンに由来するかを調べるためには、各四極子ダブレットの強度テンソルを求めることが重要である。先行研究例として、Fukuyama et al.(2022)により、角閃石と同じく多席固溶体である輝石について、2つのM席を占める鉄イオンの四極子ダブレットの強度テンソルが求められており、強度テンソルの各成分には化学組成依存性が認められることが報告されている。しかし、角閃石の強度テンソルについては報告例がない。
本研究では、普通角閃石の単結晶の薄片試料を対象にメスバウアースペクトル測定を行い、得られた各四極子ダブレットのピークの強度テンソルを推定することを目的とする。
試料と手法
粉末X線回折法により同定した普通角閃石(産地:unknown)を使用した。化学組成分析のため、走査型電子顕微鏡(SEM)付属のエネルギー分散型X線分光器(EDS)を使用した。結晶方位の決定のため、バックラウエX線カメラとプリセッションX線カメラを使用し、同一の単結晶から、b軸に平行な断面の薄片試料を2枚、へき開面に平行な断面の薄片試料を1枚作成した。薄片試料はゴニオメーターに固定しており、b軸に平行な薄片試料2枚は、断面の法線軸周りに90°異なる方向で固定した。
メスバウアー分光装置を用い、粉末試料と薄片試料それぞれのメスバウアースペクトルを測定した。粉末試料は、薄片試料の結果の解析に必要な基礎データを取得するために測定した。薄片試料は、ゴニオメーターを1軸方向に回転させることにより、ガンマ線の入射方向を変化させた。
結果
メスバウアースペクトルは、粉末試料、薄片試料とも、複数の四極子ダブレットが重なっている形状を示した。メスバウアースペクトル解析ソフトウェアMossWinnを使用した。粉末試料のメスバウアースペクトルは、3組または4組の四極子ダブレットが含まれていることが解析された。特に、4組の四極子ダブレットの場合、複数の組み合わせが得られた。どの組み合わせにおいても、うち1組の四極子ダブレットの四極子分裂が小さいことから、Fe3+に由来することを示唆している。残りの2組または3組の四極子ダブレットはFe2+に由来することを示唆している。Goldman(1979)とGoldman and Rossman(1977)に基づくと、各四極子ダブレットのアイソマーシフトと四極子分裂の値にFe3+はM2席、Fe2+はM1、M2、M3、M4席に配位していることが考えられる。
薄片試料では、合計15方向のガンマ線入射によるメスバウアースペクトルが得られた。粉末試料の解析結果で得られた四極子ダブレットの組み合わせを各方向から得られたメスバウアースペクトルに当てはめることにより、組合せ毎の各四極子ダブレットのピーク強度比を得ることができた。得られた15のピーク強度比をもとに、最小二乗法に基づき強度テンソルを推定したところ、組合せ毎の各四極子ダブレットとも、Zimmermann(1983)によるテンソル成分の関係式Ixx+Iyy+Izz=3/2を大きく逸脱することはなかった。
角閃石は主要な造岩鉱物の1つであり、多席固溶体である。普通角閃石の一般化学式は、A0-1B2C5T8O22(OH,F,Cl)2で表され、Fe2+はBのM4席とCのM1,M2,M3に、Fe3+は主にCのM2席にそれぞれ配位する。鉱物中の鉄イオンの価数の量比などの詳細な状態はメスバウアースペクトル測定で明らかにできる。
メスバウアースペクトルとは57Co放射性同位体線源を往復運動させて生じるドップラー効果により、ガンマ線の狭いエネルギー幅内に現れる超微細な吸収スペクトルである。鉄イオンを含む角閃石の測定時においては四極子ダブレットが現れ、四極子ダブレットのピーク形状により、Fe2+とFe3+とを区別できる。四極子ダブレットの形状は、アイソマーシフト、四極子分裂、ピーク半値幅、ピーク強度比の4つのパラメーターで特徴付けられる。特に、Fe3+の四極子ダブレットは、Fe2+のものよりも四極子分裂が小さいことが特徴である。
普通角閃石は単斜晶系に属する結晶である。Zimmermann(1983)によると、単斜晶系のメスバウアースペクトルのピーク強度比は、単結晶の結晶に設定した直交軸に対するガンマ線の入射方向の方向余弦とピーク強度テンソルにより算出される。ピーク強度比は粉末試料の場合はガンマ線の入射方向によらず等しいが、単結晶の薄片試料の場合はガンマ線の入射方向によって変化する。鉄イオンが複数のM席に配位している普通角閃石の場合、複数の四極子ダブレットが重なったメスバウアースペクトルが得られる。各四極子ダブレットがどのM席の鉄イオンに由来するかを調べるためには、各四極子ダブレットの強度テンソルを求めることが重要である。先行研究例として、Fukuyama et al.(2022)により、角閃石と同じく多席固溶体である輝石について、2つのM席を占める鉄イオンの四極子ダブレットの強度テンソルが求められており、強度テンソルの各成分には化学組成依存性が認められることが報告されている。しかし、角閃石の強度テンソルについては報告例がない。
本研究では、普通角閃石の単結晶の薄片試料を対象にメスバウアースペクトル測定を行い、得られた各四極子ダブレットのピークの強度テンソルを推定することを目的とする。
試料と手法
粉末X線回折法により同定した普通角閃石(産地:unknown)を使用した。化学組成分析のため、走査型電子顕微鏡(SEM)付属のエネルギー分散型X線分光器(EDS)を使用した。結晶方位の決定のため、バックラウエX線カメラとプリセッションX線カメラを使用し、同一の単結晶から、b軸に平行な断面の薄片試料を2枚、へき開面に平行な断面の薄片試料を1枚作成した。薄片試料はゴニオメーターに固定しており、b軸に平行な薄片試料2枚は、断面の法線軸周りに90°異なる方向で固定した。
メスバウアー分光装置を用い、粉末試料と薄片試料それぞれのメスバウアースペクトルを測定した。粉末試料は、薄片試料の結果の解析に必要な基礎データを取得するために測定した。薄片試料は、ゴニオメーターを1軸方向に回転させることにより、ガンマ線の入射方向を変化させた。
結果
メスバウアースペクトルは、粉末試料、薄片試料とも、複数の四極子ダブレットが重なっている形状を示した。メスバウアースペクトル解析ソフトウェアMossWinnを使用した。粉末試料のメスバウアースペクトルは、3組または4組の四極子ダブレットが含まれていることが解析された。特に、4組の四極子ダブレットの場合、複数の組み合わせが得られた。どの組み合わせにおいても、うち1組の四極子ダブレットの四極子分裂が小さいことから、Fe3+に由来することを示唆している。残りの2組または3組の四極子ダブレットはFe2+に由来することを示唆している。Goldman(1979)とGoldman and Rossman(1977)に基づくと、各四極子ダブレットのアイソマーシフトと四極子分裂の値にFe3+はM2席、Fe2+はM1、M2、M3、M4席に配位していることが考えられる。
薄片試料では、合計15方向のガンマ線入射によるメスバウアースペクトルが得られた。粉末試料の解析結果で得られた四極子ダブレットの組み合わせを各方向から得られたメスバウアースペクトルに当てはめることにより、組合せ毎の各四極子ダブレットのピーク強度比を得ることができた。得られた15のピーク強度比をもとに、最小二乗法に基づき強度テンソルを推定したところ、組合せ毎の各四極子ダブレットとも、Zimmermann(1983)によるテンソル成分の関係式Ixx+Iyy+Izz=3/2を大きく逸脱することはなかった。
