Presentation Information
[R2-10]Carbonation Mechanisms of Cement Constituent Phases: An Investigation Using Synchrotron X-ray Diffraction and Raman Spectroscopy
*Shumpei Tatsunami1, Atushi Kyono2, Koudai Shibuya1 (1. University of Tsukuba, Degree Programs in Life and Earth Sciences, 2. University of Tsukuba, Faculty of Life and Environmental Sciences)
Keywords:
Calcium silicate
【はじめに】 近年の地球を取り巻くさまざまな環境問題の中で,地球温暖化は最も規模の大きな課題の一つである.2015年にパリ協定が採択されて以降,温室効果ガス排出削減や脱炭素化技術の開発が行われている.中でもセメント産業は,コンクリートの原料であるセメントを製造する過程で石灰岩を高温焼成し,脱炭酸塩反応により大量のCO2を発生する.そのため,セメント産業に由来するCO2排出量は世界のCO2排出量の約7~8%を占めるとされる.したがって,コンクリートおよびセメント系材料を利用して大気中のCO2を固定する技術の開発は,環境負荷低減に向けた重要な課題である.普通ポルトランドセメント(OPC)は,Alite(Ca3SiO5)50∼70%,Belite(Ca2SiO4)15~30%,Aluminate(Ca3Al2O6)5~10%,Ferrite(Ca2AlFeO5)5∼15%の割合で構成されている.Sun et al. (2025)は,Alite, Belite,Aluminate,Ferriteの4相について,炭酸塩化反応に伴う組織変化,空隙率,反応率およびCaCO3多形の違いを比較した.その結果,AliteおよびBeliteでは主にcalciteが生成し,vateriteは中間生成物として少量認められる一方,AluminateおよびFerriteではvateriteが主要なCaCO3相として生成することを報告した.しかしながら,vateriteからcalciteへの転移メカニズムについてや,各相における水和相を経由したCaCO3の形成メカニズムについては十分に明らかにされていない.そこで本研究では,放射光粉末X線回折(XRD)およびRaman分光を用いて,セメント主要4相の炭酸塩化反応に伴う時間変化を追跡し,反応経路の詳細を検討した.【実験方法】 本研究では,焼成したAlite,Belite,Aluminate,Ferriteを粉末化し,温度20℃,相対湿度100%,100%CO2雰囲気下で静置した.回収試料について,高エネルギー加速器研究機構(KEK)放射光実験施設(Photon Factory)BL-8Bにおいて,放射光粉末X線回折(XRD)測定を行い,さらに,Raman分光分析を実施した.【結果と考察】放射光粉末XRDの結果,Aliteは・・・・した.Beliteは・・・・した.Aluminateは・・・・した.Ferriteは・・・・した.Sun et al. (2025)は4相すべてでCaCO3が形成されていたが,本研究では・・・であった.さらに,Sun et al. (2025)は,AliteとBeliteを比較しAliteでは急速に炭酸塩反応が進行し生成物が緻密な表層を形成しCO2の内部拡散を妨げていたのに対し,Beliteでは炭酸塩化生成物の組織が比較的疎であるため,CO2が試料内部まで浸透し,試料全体が炭酸塩化したことを報告している.しかし,本研究ではAlite,Beliteともにvateriteの形成は観察されず,Ca(OH)2もBeliteのみで観察された.この結果から,本実験条件下におけるAliteおよびBeliteの水和・炭酸塩化反応は,以下の反応式で表すことができる.Alite2Ca3SiO5+6H2O→3CaO⋅2SiO2⋅3H2O+3Ca(OH)2 3Ca(OH)2+3CO2→3CaCO3+3H2O Belite2Ca2SiO4+4H2O+xCO2 →3CaO⋅2SiO2⋅3H2O+(1-x)Ca(OH)2+ xCaCO3+xH2O (0<x<1)本実験条件では,AliteではCa(OH)2の明瞭な回折ピークが確認されなかったのに対し,BeliteではCa(OH)2の生成とcalciteの生成が確認された.このことから,Beliteの水和・炭酸塩化反応は,Ca(OH)2を経由して進行したことが示唆される.一方,AliteではCa(OH)2を主要相として経由しない,あるいは生成したCa(OH)2が速やかに消費される反応経路をとった可能性が考えられる. ラマン分光分析の結果,Aliteでは1hから72hまでOH伸縮振動のピークが連続的に鋭くなる傾向を示したのに対し,Beliteでは12hまでOH伸縮振動のピークが確認され,その後消失した.BeliteにおけるOH伸縮振動ピークの消失は,生成したCa(OH)2がCO2と反応しcalcite が形成された結果である.一方,Aliteの場合は,炭酸塩化反応の過程でCa(OH)2とは異なる水和相が形成している可能性が示唆される. 放射光XRDの結果,AliteではAlite,Beliteのピーク強度が時間経過に伴って減少しcalciteのピークが卓越した.しかし,Ca(OH)2のピークは確認されなかった.一方で,Beliteでは時間経過に伴ってBeliteとCa(OH)2のピークが減少しcalciteが析出した.また,2相ともに24h程度で明らかな反応が停止した.
