Presentation Information
[R2-19]Synthesis of hydrogenated nanodiamonds under static ultrahigh pressure
*Takehiro Kunimoto1, Tetsuo Irifune1, Sayako Inoué1, Takeshi Sakai1, Hiroaki Ohfuji2 (1. GRC, Ehime Univ., 2. Grad. Sch. Sci., The Univ. Tokyo)
Keywords:
nanodiamond,Static high-pressure experiment,Hydrogenated diamond
はじめに
ダイヤモンドは、機械的特性、高い熱伝導率、化学的安定性など様々な物性において優れた機能性材料である。ナノ領域(<100 nm)の粒径を持つダイヤモンド粉末(NDs)は、これらの性質に加え高い比表面積や表面機能性が付与されることから、さらに幅広い分野への応用が期待される1)。しかし、一般的に爆轟法で合成されるナノダイヤモンド(DNDs)は粒径分布が広く、凝集や副生成物の混在を伴う2)。特に一桁ナノ粒径のDNDsの場合は、ダイヤモンド核の周囲にsp²炭素層が形成されるため純粋なNDsを得ることは困難である1,3)。従って、より高度な応用や幅広い分野への展開のためには、高純度かつ粒径を制御可能なNDsを実現する新たな合成技術の開発が求められる。
実験方法
出発物質として固形パラフィン(CnH2n+2, n≃30)を採用し、川井式マルチアンビル型高圧装置4)を用いて5-25 GPa、800~1700 ℃の条件で実験を行った。保持時間は数秒から360分とした。回収された試料に対して、X線回折(XRD)、ラマン分光(Raman)、透過型電子顕微鏡(TEM)、有機元素分析(OEA)、熱重量分析(TG)を用いて結晶構造、粒径、組成、安定性などを調べた。また、得られたXRD回折線に対してScherrer式5)およびWilliamson-Hallプロット6)を適用し、試料の結晶子サイズと歪みを評価した。
結果と議論
回収されたダイヤモンド試料は白色の粉末状であり、スライドガラスで挟んで圧縮することにより透光性を示した(Figure 1)。試料のXRDおよびTEM観察の結果、生成したダイヤモンドの粒径は約1.5~20 nmであり、圧力・温度条件によって系統的に制御可能であることが確認された。特に1000~1200 ℃では、爆轟法で生成することが難しい粒径5 nm以下で比較的均一なNDsを得ることに成功した。また、圧力の上昇に伴い高温条件でも粒成長が抑制されることが確認された。Ramanではダイヤモンドのピークに加えて2800~3000 cm⁻¹付近にC–H伸縮振動に由来するピークが認められ、さらにOEAでは最大6.48 mass%の水素を含有することが明らかとなった。これらの結果から、生成されたNDsは粒子表面が水素終端構造を形成していると考えられる。また、格子定数は天然ダイヤモンドの文献値と比較して大きく、これは水素含有量の減少に伴って文献値へ近づくことから、粒子表面の水素が格子膨張に寄与している可能性が示唆された。
以上本研究では、パラフィンを出発物質とする静的超高圧実験により、粒径および水素含有量を制御可能な水素化ナノダイヤモンド(HNDs)の合成に成功した7)。この成果は水素がナノダイヤモンドの生成・成長に果たす役割に新たな知見を与えるとともに、医療1,8)、量子技術1,9)、触媒1,10)など多岐にわたる分野への応用が期待される新たなナノダイヤモンド合成技術を提示する。
参考文献
1) V. N. Mochalin et al., Nat. Nanotechnol. 7, 11–23 (2012).
2) K. Katsiev et al., Eng. Rep., 3, e12375 (2021).
3) S. Osswald et al., J. Am. Chem. Soc. 128, 11635–11642 (2006).
4) N. Kawai, M. Togaya, and A. Onodera, Proc. Jpn. Acad. 49, 623–626 (1973).
5) A. L. Patterson, Phys. Rev. 56, 978–982 (1939).
6) G. K. Williamson and W. H. Hall, Acta Metall. 1(1), 22–31 (1953).
7) T. Kunimoto et al., Nat. Commun. (under revision).
8) E. K.-H. Chow et al., Sci. Transl. Med. 3, 73ra21 (2011).
9) Y. Wu and T. Weil, Adv. Sci. 9, 2200059 (2022).
10) J. Zhang et al., Angew. Chem. Int. Ed., 49, 8640–8644 (2010).
ダイヤモンドは、機械的特性、高い熱伝導率、化学的安定性など様々な物性において優れた機能性材料である。ナノ領域(<100 nm)の粒径を持つダイヤモンド粉末(NDs)は、これらの性質に加え高い比表面積や表面機能性が付与されることから、さらに幅広い分野への応用が期待される1)。しかし、一般的に爆轟法で合成されるナノダイヤモンド(DNDs)は粒径分布が広く、凝集や副生成物の混在を伴う2)。特に一桁ナノ粒径のDNDsの場合は、ダイヤモンド核の周囲にsp²炭素層が形成されるため純粋なNDsを得ることは困難である1,3)。従って、より高度な応用や幅広い分野への展開のためには、高純度かつ粒径を制御可能なNDsを実現する新たな合成技術の開発が求められる。
実験方法
出発物質として固形パラフィン(CnH2n+2, n≃30)を採用し、川井式マルチアンビル型高圧装置4)を用いて5-25 GPa、800~1700 ℃の条件で実験を行った。保持時間は数秒から360分とした。回収された試料に対して、X線回折(XRD)、ラマン分光(Raman)、透過型電子顕微鏡(TEM)、有機元素分析(OEA)、熱重量分析(TG)を用いて結晶構造、粒径、組成、安定性などを調べた。また、得られたXRD回折線に対してScherrer式5)およびWilliamson-Hallプロット6)を適用し、試料の結晶子サイズと歪みを評価した。
結果と議論
回収されたダイヤモンド試料は白色の粉末状であり、スライドガラスで挟んで圧縮することにより透光性を示した(Figure 1)。試料のXRDおよびTEM観察の結果、生成したダイヤモンドの粒径は約1.5~20 nmであり、圧力・温度条件によって系統的に制御可能であることが確認された。特に1000~1200 ℃では、爆轟法で生成することが難しい粒径5 nm以下で比較的均一なNDsを得ることに成功した。また、圧力の上昇に伴い高温条件でも粒成長が抑制されることが確認された。Ramanではダイヤモンドのピークに加えて2800~3000 cm⁻¹付近にC–H伸縮振動に由来するピークが認められ、さらにOEAでは最大6.48 mass%の水素を含有することが明らかとなった。これらの結果から、生成されたNDsは粒子表面が水素終端構造を形成していると考えられる。また、格子定数は天然ダイヤモンドの文献値と比較して大きく、これは水素含有量の減少に伴って文献値へ近づくことから、粒子表面の水素が格子膨張に寄与している可能性が示唆された。
以上本研究では、パラフィンを出発物質とする静的超高圧実験により、粒径および水素含有量を制御可能な水素化ナノダイヤモンド(HNDs)の合成に成功した7)。この成果は水素がナノダイヤモンドの生成・成長に果たす役割に新たな知見を与えるとともに、医療1,8)、量子技術1,9)、触媒1,10)など多岐にわたる分野への応用が期待される新たなナノダイヤモンド合成技術を提示する。
参考文献
1) V. N. Mochalin et al., Nat. Nanotechnol. 7, 11–23 (2012).
2) K. Katsiev et al., Eng. Rep., 3, e12375 (2021).
3) S. Osswald et al., J. Am. Chem. Soc. 128, 11635–11642 (2006).
4) N. Kawai, M. Togaya, and A. Onodera, Proc. Jpn. Acad. 49, 623–626 (1973).
5) A. L. Patterson, Phys. Rev. 56, 978–982 (1939).
6) G. K. Williamson and W. H. Hall, Acta Metall. 1(1), 22–31 (1953).
7) T. Kunimoto et al., Nat. Commun. (under revision).
8) E. K.-H. Chow et al., Sci. Transl. Med. 3, 73ra21 (2011).
9) Y. Wu and T. Weil, Adv. Sci. 9, 2200059 (2022).
10) J. Zhang et al., Angew. Chem. Int. Ed., 49, 8640–8644 (2010).

