Presentation Information
[R2P-02]Evaluation of Forsterite Surface Energies via Molecular Dynamics with a Universal Machine Learning Interatomic Potential
*Mitsuki Shimizu1, Jun Kawano1, Takayoshi Nagaya2, Takaya Nagai1, Simon Wallis3 (1. Hokkaido Univ. Sci, 2. Waseda Univ. , 3. Tokyo Univ. Sci)
Keywords:
Molecular dynamics,Machine learning,olivine,brucite,Mineral interface
沈み込み帯のウェッジマントル浅部では、アンチゴライトとブルーサイトの脱水反応によりオリビンが生成する。近年Nagaya et al. (2022)およびMenzel et al. (2025)は、この反応におけるブルーサイト(brc)とオリビン(ol)の間にトポタキシャルな結晶方位関係の存在を報告した。前者は(001)brc//(011)ol、後者は(001)brc//(100)olの界面関係を示しており、複数のトポタキシャル関係の存在が示唆される。これらの関係が成立するならば、従来考えられてきた反応条件やウェッジマントルの鉱物分布に大きな影響を及ぼす可能性があるため、方位選択機構の解明は重要な課題である。発表者はこれまで分子動力学(MD)計算によりこの問題を検討してきたが、古典力場では鉱物界面を扱う際の原子のパラメータ選定が困難であった。そこで本研究では、元素の組み合わせを網羅的に学習した汎用機械学習ポテンシャルを導入してMD計算を実施し、界面の検討に先立ってブルーサイト、オリビンのMg端成分であるフォルステライト(fo)のバルク物性検証および表面エネルギー評価を行った。
計算には、汎用原子レベルシミュレータMatlantisに実装されている汎用機械学習原子間ポテンシャルPFP (Preferred Potential)を用いた。PFPは密度汎関数理論(DFT)計算データを学習しており、結晶、分子、表面エネルギーなど広範な系において実験値を精度よく再現する(Shinagawa et al., 2026)。本研究では、meta-GGA汎関数として中距離のファンデルワールス相互作用を部分的に内包し水を含む系の物質の再現性が高いとされる汎関数r2SCAN、およびこれにファンデルワールス力補正D3を加えたr2SCAN+D3によるDFT計算データを教師データとするポテンシャルを用いた。
まず、液体水、ブルーサイト、フォルステライトの300 K・1 barにおけるバルクMD計算を行って再現性を確認した。液体水は、r2SCANでは密度が実験値(0.995 g/cm³)とほぼ一致する0.993 g/cm³(差−0.2%)であったのに対し、+D3では実験値を7.0%上回る1.065 g/cm³となった。層状構造のブルーサイトはc軸差異がr2SCANで−2.6%、+D3で−4.1%となった。このような水素結合が支配的な系について、DFT計算ではr2SCANにD3補正を加えると水素結合を過剰に安定化することが示されおり(Ehlert et al., 2021)、本研究の結果はそれと整合的であった。一方、フォルステライトは体積差異がr2SCANで+1.35%、+D3で+0.05%と、D3補正を加えた方が実験値を正確に再現した。
次に、(001)brc とのトポタキシーが報告されている(011)foと (100)fo、および基準面として(001)foの表面エネルギーを、300 K におけるMD計算で評価した。表面エネルギーは両ポテンシャルともに(001)<(011)<(100)の順となり、トポタキシー面ではない面が最も安定となった。また、反応場に水が存在し、トポタキシーが成立する場合にはブルーサイトの構造を利用してオリビンが生成する可能性が想定されるため、各面について水の解離吸着を考慮した表面エネルギーの評価も行なった。H₂O分子をOH−とH+に解離してフォルステライト各表面のさまざまな位置に吸着させたスラブモデルを構築し、吸着させる水分子の量を逐次変化させながら、300 Kと750 KでMD計算を行なった。各面で最安定となる構造の表面エネルギーを比較したところ、温度・水の吸着量によって各面の安定性が変化し、トポタキシーが報告されている面が相対的に安定化する可能性が示唆された。
得られた表面エネルギーおよびOH最安定配置をもとに各界面のモデルを構築しMD計算を行うことで、報告されている複数のトポタキシャル関係の熱力学的安定性の議論が可能である。
引用文献
Nagaya et al. (2022), Contrib. Mineral. Petrol. 177, 87.
Menzel et al. (2025), Contrib. Mineral. Petrol. 180, 30.
Shinagawa et al. (2026), arXiv:2603.11063.
Ehlert et al. (2021), J. Chem. Phys. 154, 061101.
計算には、汎用原子レベルシミュレータMatlantisに実装されている汎用機械学習原子間ポテンシャルPFP (Preferred Potential)を用いた。PFPは密度汎関数理論(DFT)計算データを学習しており、結晶、分子、表面エネルギーなど広範な系において実験値を精度よく再現する(Shinagawa et al., 2026)。本研究では、meta-GGA汎関数として中距離のファンデルワールス相互作用を部分的に内包し水を含む系の物質の再現性が高いとされる汎関数r2SCAN、およびこれにファンデルワールス力補正D3を加えたr2SCAN+D3によるDFT計算データを教師データとするポテンシャルを用いた。
まず、液体水、ブルーサイト、フォルステライトの300 K・1 barにおけるバルクMD計算を行って再現性を確認した。液体水は、r2SCANでは密度が実験値(0.995 g/cm³)とほぼ一致する0.993 g/cm³(差−0.2%)であったのに対し、+D3では実験値を7.0%上回る1.065 g/cm³となった。層状構造のブルーサイトはc軸差異がr2SCANで−2.6%、+D3で−4.1%となった。このような水素結合が支配的な系について、DFT計算ではr2SCANにD3補正を加えると水素結合を過剰に安定化することが示されおり(Ehlert et al., 2021)、本研究の結果はそれと整合的であった。一方、フォルステライトは体積差異がr2SCANで+1.35%、+D3で+0.05%と、D3補正を加えた方が実験値を正確に再現した。
次に、(001)brc とのトポタキシーが報告されている(011)foと (100)fo、および基準面として(001)foの表面エネルギーを、300 K におけるMD計算で評価した。表面エネルギーは両ポテンシャルともに(001)<(011)<(100)の順となり、トポタキシー面ではない面が最も安定となった。また、反応場に水が存在し、トポタキシーが成立する場合にはブルーサイトの構造を利用してオリビンが生成する可能性が想定されるため、各面について水の解離吸着を考慮した表面エネルギーの評価も行なった。H₂O分子をOH−とH+に解離してフォルステライト各表面のさまざまな位置に吸着させたスラブモデルを構築し、吸着させる水分子の量を逐次変化させながら、300 Kと750 KでMD計算を行なった。各面で最安定となる構造の表面エネルギーを比較したところ、温度・水の吸着量によって各面の安定性が変化し、トポタキシーが報告されている面が相対的に安定化する可能性が示唆された。
得られた表面エネルギーおよびOH最安定配置をもとに各界面のモデルを構築しMD計算を行うことで、報告されている複数のトポタキシャル関係の熱力学的安定性の議論が可能である。
引用文献
Nagaya et al. (2022), Contrib. Mineral. Petrol. 177, 87.
Menzel et al. (2025), Contrib. Mineral. Petrol. 180, 30.
Shinagawa et al. (2026), arXiv:2603.11063.
Ehlert et al. (2021), J. Chem. Phys. 154, 061101.
