Presentation Information
[R2P-06]Formation Properties of Amorphous Calcium Phosphate
*Eisuke Sugimoto1, Atsushi Kyono2, Rio Midorikawa1 (1. Tsukuba Univ. Life and Earth Sci., 2. Tsukuba Univ. Life and Environmental Sci.)
Keywords:
ACP,Ca/P ratio,Amorphous
【はじめに】 リン酸は,DNA・RNA,エネルギー代謝,細胞膜リン脂質など,生命活動不可欠な生体分子の構成要素である.しかし,リン酸は地球表層環境においてはCaと反応して難溶性のhydroxylapatite (HAp)として固定されやすく,水への可給性が低い.そのため,原始地球においてリン酸がどのように濃集し,生体分子合成に利用可能な形で存在したのかは,生命の起源の研究においては未解決な問題である(phosphate problem).近年,炭酸塩に富む湖水・塩水環境では,Caが炭酸塩鉱物として除去されることにより,リン酸が溶存種として濃集し得ることが指摘されている(Toner and Catling, 2020, PNAS).一方で,Ca-P-H2O系において,リン酸カルシウム相がどのような固相として沈殿し,その後どのように結晶化するかについては十分に理解されていない.本研究では,HApよりも反応性が高い非晶質リン酸カルシウム(ACP)に着目し,水溶液のCa/P値が,ACPの形成および結晶化に与える影響を検討した.
【実験方法】 出発物質としてCaCl2・2H2OおよびNa2HPO4・12H2Oを用,出発溶液のCa/Pモル比を0.33,1.00,1.50,3.33に調整した.その後,各溶液にNaOHを加えてpHを約12.5とし,攪拌後ただちに遠心分離によって沈殿物を回収した.得られた生成物を超純水で洗浄後,72時間フリーズドライを行った.生成物について,放射光粉末X線回折測定(XRD),ラマン分光分析,熱分析を実施した.
【結果と考察】 XRDの結果,出発物質のCa/Pモル比が1.00及び1.50の試料では,明瞭な結晶性回折ピークは認められず,先行研究で報告されているACPに特徴的なアモルファイスハローが確認された.一方,Ca/Pモル比が0.33及び3.33の試料では,ACPとは異なる回折パターンを示し,calcium-deficient hydroxyapatite(CDHA)に対応する回折ピークが確認された.このことから,ACPの形成は単純にCa過剰またはP過剰下では進行せず,特定のCa/P範囲において選択的に生じる可能性が示された.ラマン分光分析の結果,ACPとCDHAにおけるP–O伸縮振動およびP–O変角振動領域のバンド形状の違いが見られた.特に,XRDではいずれも非晶質相として観察されるCa/P = 1.00および1.50の試料についても,局所構造の違いがラマンバンドの位置や半値幅に反映される可能性がある.さらに,熱分析の結果から,Ca/P比の違いがACPの熱的安定性に影響を与えることが明らかになった.本研究の結果は,リン酸カルシウムの初期沈殿相が水溶液中のCa/P比によって決定されることを示している.特に,ACPが限られた組成範囲で形成されることは,原始地球表層のアルカリ性水環境において,リン酸がただちに安定なアパタイトとして固定されるのではなく,準安定な非晶質相として一時的に保持され得ることを示唆する.このようなACPは,結晶質アパタイトよりも反応性・溶解性が高いリン酸リザーバーとして働き,湿潤・乾燥サイクルや水環境の変化に応じてリン酸を再供給する場となった可能性が考えられる.
【実験方法】 出発物質としてCaCl2・2H2OおよびNa2HPO4・12H2Oを用,出発溶液のCa/Pモル比を0.33,1.00,1.50,3.33に調整した.その後,各溶液にNaOHを加えてpHを約12.5とし,攪拌後ただちに遠心分離によって沈殿物を回収した.得られた生成物を超純水で洗浄後,72時間フリーズドライを行った.生成物について,放射光粉末X線回折測定(XRD),ラマン分光分析,熱分析を実施した.
【結果と考察】 XRDの結果,出発物質のCa/Pモル比が1.00及び1.50の試料では,明瞭な結晶性回折ピークは認められず,先行研究で報告されているACPに特徴的なアモルファイスハローが確認された.一方,Ca/Pモル比が0.33及び3.33の試料では,ACPとは異なる回折パターンを示し,calcium-deficient hydroxyapatite(CDHA)に対応する回折ピークが確認された.このことから,ACPの形成は単純にCa過剰またはP過剰下では進行せず,特定のCa/P範囲において選択的に生じる可能性が示された.ラマン分光分析の結果,ACPとCDHAにおけるP–O伸縮振動およびP–O変角振動領域のバンド形状の違いが見られた.特に,XRDではいずれも非晶質相として観察されるCa/P = 1.00および1.50の試料についても,局所構造の違いがラマンバンドの位置や半値幅に反映される可能性がある.さらに,熱分析の結果から,Ca/P比の違いがACPの熱的安定性に影響を与えることが明らかになった.本研究の結果は,リン酸カルシウムの初期沈殿相が水溶液中のCa/P比によって決定されることを示している.特に,ACPが限られた組成範囲で形成されることは,原始地球表層のアルカリ性水環境において,リン酸がただちに安定なアパタイトとして固定されるのではなく,準安定な非晶質相として一時的に保持され得ることを示唆する.このようなACPは,結晶質アパタイトよりも反応性・溶解性が高いリン酸リザーバーとして働き,湿潤・乾燥サイクルや水環境の変化に応じてリン酸を再供給する場となった可能性が考えられる.
