Presentation Information
[R2P-08]High-pressure behavior of hydrogen bonding in hydromagnesite in the Mg–CO2–H2O system
*Riko Iizuka-Oku1, Towa Hazeki1, Satoshi Nakano2 (1. Waseda Univ., 2. NIMS)
Keywords:
hydromagnesite,high pressure behavior,hydrogen bonding,Raman spectroscopy
炭酸塩鉱物は、炭酸イオン(CO32−)を基本構造単位として持ち、地球表層環境に広く分布する主要な造岩鉱物の一つである。これらは主に水の存在する環境下で生成し、堆積作用や岩石−水反応と密接に関係しているだけなく、生物の殻や骨などのバイオミネラルとしても存在する。また、地殻中における炭素の重要な貯蔵庫として地球規模の炭素循環に大きく寄与し、大気中の二酸化炭素CO2の量を削減するための有望な技術の一つである鉱物炭酸化の役割を担う点からも注目されている。これまで、マグネサイト(MgCO3)、方解石 (CaCO3)、およびドロマイト [CaMg(CO3)2] に代表される炭酸塩鉱物の地質学的システムにおける生成および相転移のメカニズムについて、長年にわたり研究されてきた。とりわけマグネサイトは、マントルの大部分において最も安定な相であり、その高い融点ゆえに深部マントルまで沈み込み可能であることが分かっている。しかしながら、MgO–CO2–H2O系の水溶液中での反応においては、温度、CO2分圧、およびpHや反応時間に応じて、マグネサイトの代わりにさまざまな結晶性の含水炭酸マグネシウムが生成される(例えばHänchen et al., 2008)。 これらは、nesquehoniteグループ[MgCO3·nH2O]、hydromagnesiteグループ [Mg5(CO3)4(OH)2·nH2O]、およびartiniteグループ [Mg2CO3(OH)2·nH2O] の3つに分類され、温度変化に関する研究が多く報告されてきた。一方で、圧力変化に着目した研究は限られている。上記に述べたように含水マグネシウム炭酸塩は、CO2を固定する能力を有し、さらに地球表層から沈み込み帯に至る炭素循環および、水循環を理解する上で重要な存在であると考えられる。本研究では、天然でも多く見られるハイドロマグネサイト(hydromagnesite, Mg5(CO3)4(OH)2·4H2O)に着目し、室温高圧下における圧縮挙動および安定性を明らかにすることを目的とした。
水熱合成によって合成したhydromagnesiteを、X線回折(XRD), 赤外吸収分光(FT-IR), およびラマン分光分析により評価した。ダイヤモンドアンビルセル(DAC)に合成した試料を充填し、ラマン分光および放射光XRD測定による室温高圧下その場観察を行った。圧力媒体には、フロリナート、4:1メタノール-エタノール混合液、Heガスを用いた。18 GPaまでのラマンスペクトル測定の結果、炭酸基CO32−の対称伸縮振動に由来するラマンバンドは、低圧領域において分裂を示し、圧力の増加に伴い高波数側へシフトした後、約15 GPa付近で消失した。一方、結晶構造中の水酸基(OH−)に由来するラマンバンドは、低圧では高波数側へシフトし、6.3〜8.2 GPaを境に低波数側へシフトし始め、10 GPa超の高圧領域でピークのブロード化が観測された。これらの挙動は、圧力上昇に伴う結晶構造中の水素結合環境の変化を反映していると考えられる。また、加圧および減圧過程においてラマンバンドの圧力応答はほぼ一致した。高圧下でのXRD測定を行い、ハイドロマグネサイトの格子定数および単位胞体積の圧力依存性を調べたところ、9 GPaの圧力下でも安定に存在しており、6 GPa付近でアモルファス化したと報告している先行研究(Yamamoto et al., 2018)とは異なる結果が得られた。用いた圧力媒体によるばらつきは見られるものの、格子定数や単位胞体積は単調に減少し、減圧過程で可逆的な変化を示した。
これらの結果は、本研究での圧力範囲において、明瞭な相転移や脱水反応が起きていないことを示唆している。一方で、CO32−に由来するラマンバンドの分裂および消失や、OH−に由来するラマンバンドの特徴的な圧力依存性から、加圧に伴い炭酸基の配置の変化や水素結合の環境の変化が生じており、これらがハイドロマグネサイトの構造安定性に強く影響していることが推測される。本研究は、含水炭酸塩鉱物の圧力安定性に関する理解を深めるとともに、地球内部における炭素および水の輸送・固定機構を考える上で重要な知見を提供することが期待される。
水熱合成によって合成したhydromagnesiteを、X線回折(XRD), 赤外吸収分光(FT-IR), およびラマン分光分析により評価した。ダイヤモンドアンビルセル(DAC)に合成した試料を充填し、ラマン分光および放射光XRD測定による室温高圧下その場観察を行った。圧力媒体には、フロリナート、4:1メタノール-エタノール混合液、Heガスを用いた。18 GPaまでのラマンスペクトル測定の結果、炭酸基CO32−の対称伸縮振動に由来するラマンバンドは、低圧領域において分裂を示し、圧力の増加に伴い高波数側へシフトした後、約15 GPa付近で消失した。一方、結晶構造中の水酸基(OH−)に由来するラマンバンドは、低圧では高波数側へシフトし、6.3〜8.2 GPaを境に低波数側へシフトし始め、10 GPa超の高圧領域でピークのブロード化が観測された。これらの挙動は、圧力上昇に伴う結晶構造中の水素結合環境の変化を反映していると考えられる。また、加圧および減圧過程においてラマンバンドの圧力応答はほぼ一致した。高圧下でのXRD測定を行い、ハイドロマグネサイトの格子定数および単位胞体積の圧力依存性を調べたところ、9 GPaの圧力下でも安定に存在しており、6 GPa付近でアモルファス化したと報告している先行研究(Yamamoto et al., 2018)とは異なる結果が得られた。用いた圧力媒体によるばらつきは見られるものの、格子定数や単位胞体積は単調に減少し、減圧過程で可逆的な変化を示した。
これらの結果は、本研究での圧力範囲において、明瞭な相転移や脱水反応が起きていないことを示唆している。一方で、CO32−に由来するラマンバンドの分裂および消失や、OH−に由来するラマンバンドの特徴的な圧力依存性から、加圧に伴い炭酸基の配置の変化や水素結合の環境の変化が生じており、これらがハイドロマグネサイトの構造安定性に強く影響していることが推測される。本研究は、含水炭酸塩鉱物の圧力安定性に関する理解を深めるとともに、地球内部における炭素および水の輸送・固定機構を考える上で重要な知見を提供することが期待される。
