Presentation Information
[R2P-10]Structural control on the dehydration behavior of inderite and kurnakovite, polymorphs of hydrous magnesium borate
*Kodai Shibuya1, Atsushi Kyono2 (1. Univ. Tsukuba, Degree Programs in Life and Earth Sciences, Graduate School of Science and TechnologyMaster's Program in Geosciences, 2. Univ. Tsukuba, Institute of Life and Environmental Sciences)
Keywords:
Inderite,Kurnakovite,Borate,dehydration,polymorphism
【はじめに】
ホウ素は,耐熱ガラス・セラミックス,合金,放射線遮蔽材料,農薬など,産業的に極めて幅広い用途を有する重要元素である.そのため,ホウ素資源を安定的に確保し有効に利用するためには,ホウ酸塩鉱物の結晶化学および相安定性の理解が重要である.ホウ酸塩鉱物であるinderite MgB3O3(OH)5·5H2O は,kurnakovite と多形関係にある.いずれも,2つのBO4四面体と1つのBO3三角形が頂点共有してできる3員環に,6配位のMg八面体が結合したクラスターを基本単位としている.Inderiteはこのクラスターが互いに孤立しており,H2O分子を介した水素結合ネットワークによって三次元的に連結している.一方,kurnakoviteはクラスター同士が鎖状に連結し,その鎖間をH2O分子の水素結合が連結している.したがって,inderiteとkurnakoviteはクラスターの結合様式が異なることから,両者は,ホウ酸塩鉱物の脱水における結晶構造特性が与える影響を明らかにするうえで重要な鉱物群である.そこで本研究では,inderiteの脱水・相転移挙動を明らかにし,kurnakoviteの実験結果と比較することで,ホウ酸塩鉱物の脱水過程に結晶構造が与える影響を検討した.
【実験方法】
本研究ではinderiteをメノウ乳鉢で粉砕し,各粉末試料を室温から1000℃までの各温度で1時間加熱した.これらの試料に対してex-situ高温放射光X線回折(XRD)をKEK-PF BL8Bにおいて実施した.
【結果】
Inderiteは,100℃までは主要な回折ピーク強度は維持され,120℃から主要ピークの強度が減少し,100℃における強度の約1/20以下まで低下した.その後,わずかに残存した微弱なピークも160℃でほぼ消失した.200~600℃の温度域では回折ピークは見られず,ほぼ完全な非晶質状態を示した.700℃で回折ピークが出現し再結晶化が確認され,t-Mg2B2O5およびm-Mg2B2O5と同定された.800~900℃ではt-Mg2B2O5およびm-Mg2B2O5の回折強度の増大がみられ,1000℃では多数の新たな回折ピークが出現し,一部の既存ピークにわずかな位置のシフトが認められた.
【考察】
Kurnakoviteのex-situ高温XRDの結果と比較すると,kurnakovite は100℃まで主要な回折ピークの強度を保ち,120℃で主要ピークの強度が減少し,140℃で完全に消失する(Yamaguchi et al., 2026 投稿中).また,TG-DTAから,kurnakovite は140℃付近で4H2Oに相当する脱水が起こり,それに伴って非晶質化することが示されている.一方,inderiteについては,TG-DTAから150℃付近で5H2Oに相当する脱水が起こることが報告されている(Figen et al., 2010).本研究の結果から,inderiteは120℃から回折ピーク強度が大きく低下し,160℃でほぼ完全に消失することが明らかになった.両鉱物の脱水特性を比較すると,inderiteでは孤立したクラスターが水素結合によって三次元的に連結した構造である.そのため,120℃付近からクラスター間の水分子が脱離し始めることで,結晶構造の長距離秩序が失われる可能性がある.一方,kurnakoviteでは,クラスターが鎖状に連結しているため,鎖間の水分子が脱離しても鎖構造が一定程度維持される可能性がある.その結果,kurnakoviteではピーク強度の低下から完全な非晶質化までが,inderiteよりも急激に進行した可能性がある. 非晶質化の挙動については,両鉱物に高い共通性が認められた.Kurnakoviteは140~650℃の範囲で非晶質状態を示し,inderiteも200~600℃でほぼ完全な非晶質状態を示した.また,kurnakoviteは650~700℃付近から,t-Mg2B2O5およびm-Mg2B2O5が形成され,inderiteも700℃で同様の相が形成されたことから,両鉱物の再結晶化温度はほぼ同じであると言える.したがって,両者は脱水反応・脱水酸基反応後,最終的には同一の無水ホウ酸マグネシウム相に再結晶化すると考えられる. 以上の結果から,多形関係にあるinderiteとkurnakoviteは,脱水初期の構造変化には明確な相違が認められた.一方,非晶質化を経て再結晶化に至る温度域や無水相の形成過程には高い共通性が認められた.今後は,単結晶XRDやTG/DTAなどを組み合わせ,inderiteの脱水相への転移過程を詳細に解明し,ホウ酸塩鉱物の脱水における結晶構造の役割を検討していく.
ホウ素は,耐熱ガラス・セラミックス,合金,放射線遮蔽材料,農薬など,産業的に極めて幅広い用途を有する重要元素である.そのため,ホウ素資源を安定的に確保し有効に利用するためには,ホウ酸塩鉱物の結晶化学および相安定性の理解が重要である.ホウ酸塩鉱物であるinderite MgB3O3(OH)5·5H2O は,kurnakovite と多形関係にある.いずれも,2つのBO4四面体と1つのBO3三角形が頂点共有してできる3員環に,6配位のMg八面体が結合したクラスターを基本単位としている.Inderiteはこのクラスターが互いに孤立しており,H2O分子を介した水素結合ネットワークによって三次元的に連結している.一方,kurnakoviteはクラスター同士が鎖状に連結し,その鎖間をH2O分子の水素結合が連結している.したがって,inderiteとkurnakoviteはクラスターの結合様式が異なることから,両者は,ホウ酸塩鉱物の脱水における結晶構造特性が与える影響を明らかにするうえで重要な鉱物群である.そこで本研究では,inderiteの脱水・相転移挙動を明らかにし,kurnakoviteの実験結果と比較することで,ホウ酸塩鉱物の脱水過程に結晶構造が与える影響を検討した.
【実験方法】
本研究ではinderiteをメノウ乳鉢で粉砕し,各粉末試料を室温から1000℃までの各温度で1時間加熱した.これらの試料に対してex-situ高温放射光X線回折(XRD)をKEK-PF BL8Bにおいて実施した.
【結果】
Inderiteは,100℃までは主要な回折ピーク強度は維持され,120℃から主要ピークの強度が減少し,100℃における強度の約1/20以下まで低下した.その後,わずかに残存した微弱なピークも160℃でほぼ消失した.200~600℃の温度域では回折ピークは見られず,ほぼ完全な非晶質状態を示した.700℃で回折ピークが出現し再結晶化が確認され,t-Mg2B2O5およびm-Mg2B2O5と同定された.800~900℃ではt-Mg2B2O5およびm-Mg2B2O5の回折強度の増大がみられ,1000℃では多数の新たな回折ピークが出現し,一部の既存ピークにわずかな位置のシフトが認められた.
【考察】
Kurnakoviteのex-situ高温XRDの結果と比較すると,kurnakovite は100℃まで主要な回折ピークの強度を保ち,120℃で主要ピークの強度が減少し,140℃で完全に消失する(Yamaguchi et al., 2026 投稿中).また,TG-DTAから,kurnakovite は140℃付近で4H2Oに相当する脱水が起こり,それに伴って非晶質化することが示されている.一方,inderiteについては,TG-DTAから150℃付近で5H2Oに相当する脱水が起こることが報告されている(Figen et al., 2010).本研究の結果から,inderiteは120℃から回折ピーク強度が大きく低下し,160℃でほぼ完全に消失することが明らかになった.両鉱物の脱水特性を比較すると,inderiteでは孤立したクラスターが水素結合によって三次元的に連結した構造である.そのため,120℃付近からクラスター間の水分子が脱離し始めることで,結晶構造の長距離秩序が失われる可能性がある.一方,kurnakoviteでは,クラスターが鎖状に連結しているため,鎖間の水分子が脱離しても鎖構造が一定程度維持される可能性がある.その結果,kurnakoviteではピーク強度の低下から完全な非晶質化までが,inderiteよりも急激に進行した可能性がある. 非晶質化の挙動については,両鉱物に高い共通性が認められた.Kurnakoviteは140~650℃の範囲で非晶質状態を示し,inderiteも200~600℃でほぼ完全な非晶質状態を示した.また,kurnakoviteは650~700℃付近から,t-Mg2B2O5およびm-Mg2B2O5が形成され,inderiteも700℃で同様の相が形成されたことから,両鉱物の再結晶化温度はほぼ同じであると言える.したがって,両者は脱水反応・脱水酸基反応後,最終的には同一の無水ホウ酸マグネシウム相に再結晶化すると考えられる. 以上の結果から,多形関係にあるinderiteとkurnakoviteは,脱水初期の構造変化には明確な相違が認められた.一方,非晶質化を経て再結晶化に至る温度域や無水相の形成過程には高い共通性が認められた.今後は,単結晶XRDやTG/DTAなどを組み合わせ,inderiteの脱水相への転移過程を詳細に解明し,ホウ酸塩鉱物の脱水における結晶構造の役割を検討していく.
