Presentation Information
[R3-02]Excess heat capacity of divalent transition metal cation-bearing olivine-type silicates
*Hiroshi KOJITANI1, Ryota Takato1, Yuta Asami1, Itaru Ohira1 (1. Gakushuin University)
Keywords:
excess heat capacity,olivine-type crystal structure,transition metal cation,d-orbital electron,lattice vibrational model calculation
地球上部マントルの最主要構成鉱物である(Mg,Fe)2SiO4オリビン(Ol)は、マグネシウムと鉄を主体とするケイ酸塩物質である。このオリビンを熱力学的に取り扱う際には、それらの端成分の熱力学パラメータが必要となる。特に、定圧熱容量(CP)はエンタルピーやエントロピーの温度依存性を計算するために必要となる重要なパラメータである。(Mg,Fe)2SiO4 Olの鉄端成分であるFe2SiO4 Olにおいて、Benisek et al. (2012)は実測によるCPobsから非調和振動効果を除いて求められる定積熱容量(CV)が調和振動のみを仮定したもの(CVh)よりも大きな値を示すことを報告している。この過剰熱容量(CVex)は、Mg2SiO4端成分では見られないことから、Fe2+に由来する熱容量であることが推測される。Mg2+と異なるのは、Fe2+がd軌道に電子を持つことである。したがって、d電子の存在がCVexに何らかの寄与をしていることが予想される。そこで、本研究では3d電子の数を変化させたときのCVexへの影響を調べるために、Fe2+以外の二価遷移金属イオンを含んだオリビン型化合物のMn2SiO4 Ol、Co2SiO4 Ol、Ni2SiO4 OlについてCVexの決定を行い、それらの系統性を明らかにすることを目的とした。
Mn2SiO4 Olは、MnCO3とSiO2石英の混合物をCO2:H2=1:2の混合ガス気流下1273 Kで合計80時間加熱して合成した。Co2SiO4 OlはCo3O4:SiO2石英= 2:3(モル比)の混合物を、Ni2SiO4 OlはNiO:SiO2石英= 2.1:1(モル比)の混合物を、大気中それぞれ1473 Kで30時間、1673 Kで96時間加熱することにより合成した。
Mn2SiO4 Olの高温CPは、データが存在していなかったため示差走査熱量測定法(DSC)により決定した。アルミニウム容器に粉末状の試料(約20 mg)を充填した。標準試料にはα-Al2O3を用いた。10 Kの温度ステップで、300~830 Kの温度範囲でデータを取得した。格子振動の振動数の圧力依存性は高圧ラマン分光測定により決定した。励起光はNd:YAGレーザー(λ= 532 nm)であり、露光時間50秒、積算回数3回でデータを取得した。また、試料の加圧には、ダイヤモンドアンビル高圧発生装置を使用した。キュレット径が0.6 mmのダイヤモンドアンビル、SUS304ステンレスのガスケット、メタノール:エタノール=4:1(体積比)混合溶液による圧媒体を用いた。実験圧力は、ルビー蛍光法により決定した。高温X線回折測定は、303~923 Kの温度範囲において、50 K置きにX線プロファイルの取得を行った。各ステップでは、10 K/minの昇温速度により昇温し、10分待機した後にプロファイル測定を開始した。試料は、内部標準として20 wt%のSiを添加した。
CVhは、キーファーモデルを用いて計算した。このとき、CVhが磁気相転移および非調和振動効果の影響の少ない150~250 KにおけるCPobsを再現するようにフォノン状態密度モデルを微調整した。さらに、得られたCVhをグリューナイゼンの関係式 α(T) = γth·CVh(T)/[KT(T)·V(T)]に適用することにより、実測のαに調和的なαの計算結果を与えるようにγthと等温体積弾性率KTの温度依存性である(∂KT/∂T)Pを同時に最適化した。この手法を用いてCVh、α、KT、γthが自己調和した熱力学データセットを求めた。そして、得られた信頼性の高い熱力学パラメータを用いることにより、CPvib(T) = CVh(T) + α(T)2·KT(T)·V(T)·Tの式からMn2SiO4 Ol、Co2SiO4 Ol、Ni2SiO4 OlのCPvibを推定した。
CVexはCPobsからCPvibを差し引くことで求めた。Fig. 1に、Robie et al. (1984)によるCo2SiO4 OlとNi2SiO4 Olの高温CPobsデータ、および本研究による高温CPobsとCPvibの計算値により得られたMn2SiO4 Ol、Co2SiO4 Ol、Ni2SiO4 OlのCVexをFe2SiO4 Olのデータと併せて示す。オリビン型構造において、Mn2SiO4<Ni2SiO4<Co2SiO4<Fe2SiO4の順でCVexは大きくなる。Fe2SiO4 Olは他と比べるとかなり大きなCVexを比較的低い温度から与えることが判明した。Co2SiO4 OlのCVexはFe2SiO4 Olの約7割の大きさであり、温度依存性は類似しているものの、約600 K付近でのピークを境にそれより高温側では下降する傾向がみられた。また、Ni2SiO4 OlとMn2SiO4 OlのCVexはそれらの半分以下の大きさであり、約600 Kまではゼロとみなすことができる。そして600 Kより高温側で温度の上昇に伴って少しずつ大きくなっていくことが分かった。CVexの大きさや起ち上がり温度は3d電子数と単純な関係がみられるわけではなく、その解釈には異なるエネルギー準位への電子遷移などを考慮したアプローチが必要となることが推測される。
引用文献
Benisek, A., Kroll, H., Dachs, E. (2012) American Mineralogist, 97, 657-660.
Robie, R.A., Hemingway, B.S., Ito, J., Krupka, K.M. (1984) American Mineralogist, 69, 1096-1101.
Mn2SiO4 Olは、MnCO3とSiO2石英の混合物をCO2:H2=1:2の混合ガス気流下1273 Kで合計80時間加熱して合成した。Co2SiO4 OlはCo3O4:SiO2石英= 2:3(モル比)の混合物を、Ni2SiO4 OlはNiO:SiO2石英= 2.1:1(モル比)の混合物を、大気中それぞれ1473 Kで30時間、1673 Kで96時間加熱することにより合成した。
Mn2SiO4 Olの高温CPは、データが存在していなかったため示差走査熱量測定法(DSC)により決定した。アルミニウム容器に粉末状の試料(約20 mg)を充填した。標準試料にはα-Al2O3を用いた。10 Kの温度ステップで、300~830 Kの温度範囲でデータを取得した。格子振動の振動数の圧力依存性は高圧ラマン分光測定により決定した。励起光はNd:YAGレーザー(λ= 532 nm)であり、露光時間50秒、積算回数3回でデータを取得した。また、試料の加圧には、ダイヤモンドアンビル高圧発生装置を使用した。キュレット径が0.6 mmのダイヤモンドアンビル、SUS304ステンレスのガスケット、メタノール:エタノール=4:1(体積比)混合溶液による圧媒体を用いた。実験圧力は、ルビー蛍光法により決定した。高温X線回折測定は、303~923 Kの温度範囲において、50 K置きにX線プロファイルの取得を行った。各ステップでは、10 K/minの昇温速度により昇温し、10分待機した後にプロファイル測定を開始した。試料は、内部標準として20 wt%のSiを添加した。
CVhは、キーファーモデルを用いて計算した。このとき、CVhが磁気相転移および非調和振動効果の影響の少ない150~250 KにおけるCPobsを再現するようにフォノン状態密度モデルを微調整した。さらに、得られたCVhをグリューナイゼンの関係式 α(T) = γth·CVh(T)/[KT(T)·V(T)]に適用することにより、実測のαに調和的なαの計算結果を与えるようにγthと等温体積弾性率KTの温度依存性である(∂KT/∂T)Pを同時に最適化した。この手法を用いてCVh、α、KT、γthが自己調和した熱力学データセットを求めた。そして、得られた信頼性の高い熱力学パラメータを用いることにより、CPvib(T) = CVh(T) + α(T)2·KT(T)·V(T)·Tの式からMn2SiO4 Ol、Co2SiO4 Ol、Ni2SiO4 OlのCPvibを推定した。
CVexはCPobsからCPvibを差し引くことで求めた。Fig. 1に、Robie et al. (1984)によるCo2SiO4 OlとNi2SiO4 Olの高温CPobsデータ、および本研究による高温CPobsとCPvibの計算値により得られたMn2SiO4 Ol、Co2SiO4 Ol、Ni2SiO4 OlのCVexをFe2SiO4 Olのデータと併せて示す。オリビン型構造において、Mn2SiO4<Ni2SiO4<Co2SiO4<Fe2SiO4の順でCVexは大きくなる。Fe2SiO4 Olは他と比べるとかなり大きなCVexを比較的低い温度から与えることが判明した。Co2SiO4 OlのCVexはFe2SiO4 Olの約7割の大きさであり、温度依存性は類似しているものの、約600 K付近でのピークを境にそれより高温側では下降する傾向がみられた。また、Ni2SiO4 OlとMn2SiO4 OlのCVexはそれらの半分以下の大きさであり、約600 Kまではゼロとみなすことができる。そして600 Kより高温側で温度の上昇に伴って少しずつ大きくなっていくことが分かった。CVexの大きさや起ち上がり温度は3d電子数と単純な関係がみられるわけではなく、その解釈には異なるエネルギー準位への電子遷移などを考慮したアプローチが必要となることが推測される。
引用文献
Benisek, A., Kroll, H., Dachs, E. (2012) American Mineralogist, 97, 657-660.
Robie, R.A., Hemingway, B.S., Ito, J., Krupka, K.M. (1984) American Mineralogist, 69, 1096-1101.

