Presentation Information
[R4-12]Ce enrichment in biofilm-like materials in ferromanganese crust from Takuyo-Daisan-Seamount
*Taichi Kubo1, Hiroshi Kawabata2, Hiroaki Ohfuji3, Akira Usui4 (1. Tohoku Univ., Sci., 2. Kochi Univ., Sci. Tech., 3. Univ. Tokyo, Sci., 4. Kochi Univ., MaCRI)
Keywords:
Ferromanganese crust,Biofilm-like materials,Ce-enrichment
【はじめに】
鉄マンガンクラストは,岩盤が露出する海洋底において形成される鉄マンガン酸化物を主成分とした化学堆積岩である. La, CeをはじめとするREEやNi, Co等の金属元素が濃集しており,資源開発に向けた調査・研究が継続されている(JOGMEC, 2020).従来,鉄マンガン酸化物の形成ならびにREE濃集は無機的なメカニズムによって起こると考えられてきたが,近年,微生物の関与が多くの研究で示唆されている(e.g. Usui et al., 2020).最近の報告では, Tokumaru et al. (2026)は拓洋第五海山で採取された鉄マンガンクラスト表面付近に存在する微生物様組織へのCe濃集を報告している.これは,微生物活動により局所的に生じた還元的な環境下で鉄マンガン酸化物が還元されることでCeが溶出し,微生物様組織中の有機官能基への吸着により再固定されたというプロセスを示唆する.しかしながら,そのような微生物様組織中におけるCeのホストおよびCe濃集の詳細なメカニズムはよく分かっていない.最近,我々は拓洋第三海山より採取した鉄マンガンクラスト中に含まれる底生有孔虫殻に,Ceが濃集したバイオフィルム様の物質が含まれることをを発見した.本研究では,この物質に対してSEMやTEMを用いた詳細な組織観察と化学分析を行い, Ceのホスト相の同定と,その起源の解明を目指した.
【研究手法】
研究試料として,房総半島東南東約350 km沖に位置する拓洋第三海山の水深2700 m付近において海洋研究開発機構の無人潜水艇かいこうMk. Ⅳによって採取された鉄マンガンクラストを用いた.試料は母船上で切断後,自然乾燥された状態で保管されていた.これをさらに小さなブロックに切断し,鉄マンガンクラスト全体の組織観察を行った.また,試料の一部を粉砕して内部に含まれる底生有孔虫殻を取り出し,光学顕微鏡およびSEMを用いてその表面観察を行った.有孔虫殻内で確認されたバイオフィルム様物質については,SEM-EDSを用いた元素分析や組織観察を行い,一部についてはFIBで薄膜を作成し,TEMによる微細組織観察と制限視野電子回折,STEM-EDSによる元素分析を行った.
【結果と考察】
鉄マンガンクラスト内部に含まれている有孔虫殻内側に付着しているバイオフィルム様物質は,表面が平滑な不定形のかたまりで,その表面には粒状の物質が付着していた.SEM-EDS分析の結果,バイオフィルム様物質中におけるCe濃度は部分によって異なり,1〜25 wt%の範囲で,その分布は P, Ca, Tiと強い正の相関を示す一方,Si, Alとは負の相関を示していた.この領域から切り出した薄膜のSTEM-EDS分析を行ったところ,Ceはバイオフィルム様物質の主体をなす塊状部分には高濃度で分布するのに対し,その表面に付着している粒状物質にはほとんど含まれないことが分かった.また塊状部分の内部においてもCeの濃度差が存在していた.電子線回折の結果,塊状部位内のCe濃度が高い領域からは約3Åの面間隔を持つブロードなリングパターンのみが観察され,元素分析の結果も踏まえ,非晶質リン酸カルシウム(Amorphous calcium phosphate, ACP)で構成されると考えられる.この部分のHRTEM像観察では,非晶質マトリックス内に散在する結晶質ドメインが確認され,フーリエ変換によって得られた回折点はアパタイトの逆格子で説明できることがわかった.一方,Ce濃度の低い領域においてはフェリハイドライトやレピドクロサイトに対応する回折パターンが確認された.また,粒状物質からはアパタイトのリング状パターンが認められ,リン酸カルシウムの結晶化が進行したものであることが示された.本研究の観察の結果,バイオフィルム様物質中におけるCeのホストは,ACPであることが明らかとなった.その産状に基づくと,次のようなプロセスが考えられる.1)鉄マンガンクラストでは微生物活動により局所的に還元環境となり,鉄マンガン酸化物の還元によってCeが間隙水中に放出され,2)微生物が作ったバイオフィルム中に形成されたACPが間隙水中のCeを継続的に吸着・濃集する.その後,3)ACPがアパタイトへ結晶化する過程でCeの大半が排斥され,バイオフィルム中ではCe濃度の不均衡が生じた.
鉄マンガンクラストは,岩盤が露出する海洋底において形成される鉄マンガン酸化物を主成分とした化学堆積岩である. La, CeをはじめとするREEやNi, Co等の金属元素が濃集しており,資源開発に向けた調査・研究が継続されている(JOGMEC, 2020).従来,鉄マンガン酸化物の形成ならびにREE濃集は無機的なメカニズムによって起こると考えられてきたが,近年,微生物の関与が多くの研究で示唆されている(e.g. Usui et al., 2020).最近の報告では, Tokumaru et al. (2026)は拓洋第五海山で採取された鉄マンガンクラスト表面付近に存在する微生物様組織へのCe濃集を報告している.これは,微生物活動により局所的に生じた還元的な環境下で鉄マンガン酸化物が還元されることでCeが溶出し,微生物様組織中の有機官能基への吸着により再固定されたというプロセスを示唆する.しかしながら,そのような微生物様組織中におけるCeのホストおよびCe濃集の詳細なメカニズムはよく分かっていない.最近,我々は拓洋第三海山より採取した鉄マンガンクラスト中に含まれる底生有孔虫殻に,Ceが濃集したバイオフィルム様の物質が含まれることをを発見した.本研究では,この物質に対してSEMやTEMを用いた詳細な組織観察と化学分析を行い, Ceのホスト相の同定と,その起源の解明を目指した.
【研究手法】
研究試料として,房総半島東南東約350 km沖に位置する拓洋第三海山の水深2700 m付近において海洋研究開発機構の無人潜水艇かいこうMk. Ⅳによって採取された鉄マンガンクラストを用いた.試料は母船上で切断後,自然乾燥された状態で保管されていた.これをさらに小さなブロックに切断し,鉄マンガンクラスト全体の組織観察を行った.また,試料の一部を粉砕して内部に含まれる底生有孔虫殻を取り出し,光学顕微鏡およびSEMを用いてその表面観察を行った.有孔虫殻内で確認されたバイオフィルム様物質については,SEM-EDSを用いた元素分析や組織観察を行い,一部についてはFIBで薄膜を作成し,TEMによる微細組織観察と制限視野電子回折,STEM-EDSによる元素分析を行った.
【結果と考察】
鉄マンガンクラスト内部に含まれている有孔虫殻内側に付着しているバイオフィルム様物質は,表面が平滑な不定形のかたまりで,その表面には粒状の物質が付着していた.SEM-EDS分析の結果,バイオフィルム様物質中におけるCe濃度は部分によって異なり,1〜25 wt%の範囲で,その分布は P, Ca, Tiと強い正の相関を示す一方,Si, Alとは負の相関を示していた.この領域から切り出した薄膜のSTEM-EDS分析を行ったところ,Ceはバイオフィルム様物質の主体をなす塊状部分には高濃度で分布するのに対し,その表面に付着している粒状物質にはほとんど含まれないことが分かった.また塊状部分の内部においてもCeの濃度差が存在していた.電子線回折の結果,塊状部位内のCe濃度が高い領域からは約3Åの面間隔を持つブロードなリングパターンのみが観察され,元素分析の結果も踏まえ,非晶質リン酸カルシウム(Amorphous calcium phosphate, ACP)で構成されると考えられる.この部分のHRTEM像観察では,非晶質マトリックス内に散在する結晶質ドメインが確認され,フーリエ変換によって得られた回折点はアパタイトの逆格子で説明できることがわかった.一方,Ce濃度の低い領域においてはフェリハイドライトやレピドクロサイトに対応する回折パターンが確認された.また,粒状物質からはアパタイトのリング状パターンが認められ,リン酸カルシウムの結晶化が進行したものであることが示された.本研究の観察の結果,バイオフィルム様物質中におけるCeのホストは,ACPであることが明らかとなった.その産状に基づくと,次のようなプロセスが考えられる.1)鉄マンガンクラストでは微生物活動により局所的に還元環境となり,鉄マンガン酸化物の還元によってCeが間隙水中に放出され,2)微生物が作ったバイオフィルム中に形成されたACPが間隙水中のCeを継続的に吸着・濃集する.その後,3)ACPがアパタイトへ結晶化する過程でCeの大半が排斥され,バイオフィルム中ではCe濃度の不均衡が生じた.
