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[R4P-05]Mineral particle selection for nest building by caddisflies in Goroku, Aobayama, Sendai

*Hiroaki OHFUJI1, Harumasa Kano2 (1. Univ. Tokyo, Sci., 2. Fukui Pref. Univ., Dino.)

Keywords:

caddisflies,mineral particles,X-ray computed tomography,beta quartz,ilmenite

トビケラは日本各地の河川や渓流に生息する水生昆虫で,一生のほとんどを幼虫として水中で過ごし,羽化すると大きな翅を持つ成虫となり,水中に卵を産みその生涯を終える.日本にも400種以上が生息するが,多くの種で幼虫がシルクを分泌して水中の小石や枯れ葉を集めて身を守るための巣を作ることが知られている.特に,フトヒゲトビケラの仲間は,川底の砂粒子をミノムシのように体の周囲に纏って,チューブ状の巣を作る.この際,巣の内部で自分の体をうねらせて,呼吸のために新鮮な水を取り込みやすいように,表面粗さの小さな石英などの粒子を選択的に利用し,巣の内壁を平滑にしていると考えられている(Okano et al., 2010; 2011).
 講演者らは高温石英の産地として有名な仙台市青葉山郷六の沢底の砂礫の中から,ほぼ高温石英のみで構成された長さ1cmほどのチューブ状の物質を偶然発見し,後にそれがフトヒゲトビケラの巣であることに気づいた.他産地のものに比べて,特に石英に富み,巣全体の透明度が高く光沢も強く,トビケラの幼虫が周辺の地層に由来する高温石英を選択的に利用した結果と考えられる.しかし,鏡下でよく観察すると,石英の粒間には光沢のある小さな黒い粒子がところどころに含まれており,巣材である沢底の砂粒子も含め鉱物学的なアプローチで調べてみることとした.
 試料には,東北大学青葉山キャンパスの北側に位置する郷六(化石の森)の沢より採取したトビケラの巣を含む砂礫を用いた.沢の周囲には,化石を含む海成の竜の口層とその下位に高温石英を含む凝灰質砂岩が分布している.採取した砂礫は流水で洗浄後乾燥させ,トビケラの巣をハンドピックした.また,0.25,0.5,0.85,1,2 mmのふるいを用いて砂粒子を分級し,光学顕微鏡観察とSEM-EDSによりそれぞれ100粒子の構成鉱物を同定して構成割合を求め,画像解析によりそれぞれの形状特性も調べた.さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いて各鉱物粒子の表面粗さを計測した.一方,トビケラの巣については,光学顕微鏡およびSEM-EDSを用いてそのサイズや構成粒子の大きさ,鉱物組成を調べ,さらにX線CTで内部構造を詳細に調べた.
 観察したトビケラの巣は10個で,最小のものは長さ1.6 mm,入口径0.4 mm,最大のものは長さ10.5 mm,入口径2.4 mmで,巣のサイズと構成粒子のサイズには明瞭な正の相関が認められた.構成粒子は巣の長さが3 mm以上のものでは石英(高温石英)が8~9割以上を占め,残りは斜長石とチタン鉄鉱,稀に角閃石やカリ長石であった.一方,最小(長さ1.6 mm)のものでは8割以上が斜長石で,石英はわずかであった.興味深いことに,全ての試料において石英の粒間を埋めるようにごく小さなチタン鉄鉱が含まれていた.一方,巣材となる沢底の砂粒子は,径0-0.25 mmでは斜長石が最も多く(>6割),石英は1割程度,0.25-0.5 mmの粒子では石英と斜長石がそれぞれ約3割ずつ,0.5 mm以上の粒子では約半数が石英で,その他は斜長石や岩片であった.これは,風化に強く等方的な形状を持つ高温石英は,あまり細かなサイズまで破砕されにくいことを示している.結果として,幼齢のトビケラが利用する小さな粒子では石英の存在率が低いため,斜長石を中心に利用して営巣を行っていると考えられる.実際,このような傾向は,人工粒子を用いたトビケラによる巣の再構築実験でも報告されている(Okano et al., 2011).
 X線CTによるトビケラの巣の立体観察では,構成する石英粒子の粒間に100-300 μmほどのチタン鉄鉱がかなり多く含まれていることが明らかになった.チタン鉄鉱は板状の自形結晶で表面粗さは石英と同等に低く,“石垣”のように粒子の隙間を埋めて強度を向上させる目的で,トビケラが積極的に利用している可能性が高い.これほど小さな粒子をトビケラの幼虫がいかに分別し,隙間に適切にはめ込んでいるのかは,非常に興味深い.