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[R5-11]Distribution and chemical state of interlayer ammonium in clay minerals from asteroid Ryugu samples

*Toru MATSUMOTO1, Hayato Yuzawa2, Mizuho Koike3, Yoko Kebukawa4, Takaaki Noguchi1, Toru Yada5, Hiroki Suga6, Toshiaki Ina6, HIroshi Sakuma7, Yohei Shirose8, Yuki Kitamura9, Yohei Igami1, Akira Miyake1 (1. Kyoto University, 2. UVSOR, 3. Hiroshima University, 4. Science Tokyo, 5. JAXA/ISAS, 6. JASRI, 7. NIMS, 8. Ehime University, 9. JASCO)

Keywords:

Ryugu

はじめに:アンモニアは初期太陽系においてアミノ酸や核酸塩基など含窒素有機物の形成に重要な役割を果たしたと考えられており、その分布を理解することは生命前駆物質の合成場を理解する上で重要である。準惑星セレスや複数の炭素質小惑星の反射スペクトルから、アンモニウムを含む粘土鉱物や塩の存在が推測されてきた[1]。一方で、炭素質隕石試料からはアンモニアが抽出されるが、どのような鉱物相に保持され、母天体内の水質変成過程でどのように進化したのかは十分に理解されていない。
 小惑星リュウグウやべヌー試料の赤外反射スペクトル分析では、N-H結合に対応する3マイクロメートル付近の吸収の存在から、アンモニアがリン酸塩や粘土に含まれることが示唆された[2, 3]。しかし赤外吸収帯のシグナルは有機物等とも重複している。本研究では、赤外分光に加えて、走査型透過X線顕微鏡(STXM)と透過電子顕微鏡(TEM)を用いることによって、リュウグウ試料中のアンモニアの貯蔵先について理解することを試みた。

手法:リュウグウ試料C0071およびC0369を分析試料として用いた。リュウグウ粒子は窒素雰囲気下で保管した。C0071は赤外反射スペクトル測定を行った。また一部の破片に対して透過FTIR(フーリエ変換赤外分光法)測定を行った。続いて集束イオンビーム法により厚さ100nm程度の切片を作製した。切片に対するSTXM分析によって、窒素や炭素のK吸収端のX線吸収スペクトルを取得し、窒素の化学状態を調べた。その後、試料の鉱物学的特徴をTEMを用いて観察した、また、標準物質として、アンモニウム塩の試薬や、NH₄⁺を層間に吸着させた合成サポナイト、アンモニウムを含む雲母である砥部雲母を用いた。

結果と議論:C0071粒子の層状珪酸塩マトリックスの表面には細粒のNa炭酸塩が分布している。この粒子表面の赤外反射スペクトルにはN–H伸縮振動に対応する3マイクロメートル付近の吸収が認められた。Na炭酸塩近傍の層状珪酸塩から得られた窒素K吸収端スペクトルには、約401 eV付近の振動ピークと406 eV付近の幅広いピークが認められた。この特徴は、標準試料のうちNH₄⁺を層間に含むサポナイトのスペクトルとよく一致する。これらの結果から、Na炭酸塩近傍の粘土鉱物には、NH₄⁺がサポナイト層間に保持されている可能性が高いと考えられる。層状ケイ酸塩のTEM観察では、一部に約1.3 nmの層間距離が観察され、サポナイト中の層間分子の存在が示唆される。Na炭酸塩は、リュウグウ母天体における水質変成の後期に、塩水が蒸発もしくは凍結することで消失する過程で、塩濃度の高い残存流体から沈殿した鉱物であると考えられる[4]。粘土鉱物中の層間アンモニウムは、主要な水質変成鉱物の形成後、残存塩水中で窒素成分の濃集やpH変化に伴いサポナイト層間に取り込まれた可能性がある。したがって、リュウグウ母天体において、アンモニアは水質変成の末期まで保持され、後期塩水の消失過程で粘土鉱物に固定されたと考えられる。

Reference:
[1] De Sanctis, M. C. et al. (2015) Nature 528, 241–244. [2] Pilorget, C. et al. (2024) Nat. Astron. 8, 1529–1535. [3] Jiang, T. et al. (2026) Nat. Commun. 5078. [4] Matsumoto, T., et al. (2024). Nat. Astron. 8, 1536-1543.