Presentation Information
[R5-16]Active Early Solar Activity Recorded by He-rich Schreibersite in Meteorite
*Tomoya Obase1,2,3, Ken-ichi Bajo3, Megumi Matsumoto4, Sohei Wada3,5, Hisayoshi Yurimoto3 (1. IPGP, 2. Science Tokyo, 3. Hokkaido Univ., 4. Tohoku Univ., 5. JAXA)
Keywords:
Schreibersite,Solar energetic particles,Pre-main-sequence Sun,Helium,Isotope imaging
若い太陽質量星の観測から、前主系列星期の太陽は現在よりもはるかに活発であり、現在の105倍に達するような高フラックスの太陽高エネルギー粒子(solar energetic particles: SEP)を放出していたと推定されている[1]。このような原始太陽活動についての物質的証拠はほとんど見つかっていないが、近年、CMコンドライト中の一部の難揮発性鉱物における過剰な宇宙線起源21Neの存在が、母天体集積前に浴びた強力な太陽宇宙線によって生成されたものと解釈され、活発な原始太陽の証拠として提案されている[2]。
一般に、希ガス元素は高い揮発性および化学的不活性のため、隕石鉱物中にはほとんど含まれない。一方、太陽風によるイオン注入の結果、月や小惑星表層のレゴリス物質には多量の太陽風希ガスが打ち込まれている。そのため、多量の太陽風希ガスを含む一部の隕石は、母天体レゴリス物質に由来すると考えられている。MIL 090657(CRコンドライト)は、母天体集積後の熱変成や水質変質をほとんど経験していない、始原的隕石である。また、太陽風希ガスに乏しいことから、母天体集積後の太陽風照射を経験していない[3]。このため、もし母天体集積前に強力な太陽風/SEP照射があったとしたら、その証拠をMIL 090657中の物質から見出せる可能性がある。今回、Laser Ionization Mass Nanoscope(LIMAS)を用いた4He同位体イメージングによって、MIL 090657中から4Heに富むシュライバーサイトを含む特異なクラストを新たに発見した。本発表では、このクラストの鉱物学的特徴および4He分布に基づき、Heの起源と原始太陽活動について議論する。
分析試料として、MIL 090657の研磨薄片を作製し、真空蒸着法によって試料表面に約10 nm厚の金コーティングを施した。その後、北海道大学のLIMASを用いて、4He、24Mg、32S、58Niの同位体イメージングを行った。4Heをイオン注入(20 keV、3 × 1015 atoms/cm2)したカンラン石標準試料を用いて感度を評価することで4He濃度の定量を行った[4]。LIMAS分析後、4Heに富むクラストの鉱物学的特徴をSEM/EDSおよびTEM/EDSを用いて分析した。
大きさ約6 × 10 μmのクラストは、MIL 090657の細粒マトリックス中に包有されており、主として多孔質なナノ結晶集合体(porous aggregate of nanocrystals: PAN)から構成されていた(図1)。PANの主要構成鉱物は約10―30 nmの硫化鉄であり、少量のマグネタイトおよびNiに富む硫化物も含まれていた。シュライバーサイト結晶(最大2 μm)の一部はPAN中に包有されており、その他はクラスト周縁部に分布していた。クラスト周縁部には、半自形のピロータイト結晶(最大3 μm)が分布しており、一部はシュライバーサイト結晶を取り囲んでいた。LIMAS分析の結果、シュライバーサイト結晶中には高濃度の4He(約3 × 1019 atoms/cm3)が含まれていた(図1)。一方、PANおよび半自形ピロータイトからは4Heがほとんど検出されなかった。さらに、約400 nmの高空間分解能での同位体イメージングの結果、2 μmサイズのシュライバーサイト結晶内部には4Heが均一に分布していることが明らかになった。
PANの多孔質組織と鉱物組成は、PANがMgに乏しいトチリナイトの熱分解によって形成されたことを示唆する[5]。このトチリナイトは、Fe-Ni合金または硫化物が水質変質作用を受けて変化したものであると考えられる。半自形ピロータイトもまた、水質変質作用によって形成された可能性が高い。シュライバーサイトは、星雲ガス中でPAN前駆物質とともに形成されたと考えられる。
4Heに富むシュライバーサイトがPANやトチリナイト中に包有されていることは、シュライバーサイトへの4Heの取り込みが水質変質作用の前に起こったことを示している。CRコンドライトの水質変質作用は太陽系形成から数百万年後に起きたため[6]、この時期の太陽は前主系列星の段階にあった可能性が高い[1]。2 μmサイズのシュライバーサイト中の均一な4He分布は、注入深さが約20 nmの現在の太陽風4He(約4 keV)とは整合しない。この4He分布は、1 MeV以上のエネルギーを持つSEP-Heが注入されたことを示唆している。さらに、4He濃度から推定される当時のSEPフラックスは、現在の太陽と比べて数桁高かった。以上より、4Heに富むシュライバーサイトは、原始太陽が非常に活動的であり、高強度のSEPを放出していたことを示す直接的な証拠である。
引用文献:[1] Feigelson E. D. et al. (2002) Astrophysical Journal 572:335–349. [2] Kööp L. et al. (2018) Nature Astronomy 2:709–713. [3] Obase T. et al. (2021) Geochimica et Cosmochimica Acta 312:75–105. [4] Otsuki Y. et al. (2025) Journal of Analytical Atomic Spectrometry 40:1505–1517. [5] Harries D. and Langenhorst F. (2013) Meteoritics & Planetary Science 48:879–903. [6] Jilly-Rehak C. E. et al. (2017) Geochimica et Cosmochimica Acta 201:224–244.
一般に、希ガス元素は高い揮発性および化学的不活性のため、隕石鉱物中にはほとんど含まれない。一方、太陽風によるイオン注入の結果、月や小惑星表層のレゴリス物質には多量の太陽風希ガスが打ち込まれている。そのため、多量の太陽風希ガスを含む一部の隕石は、母天体レゴリス物質に由来すると考えられている。MIL 090657(CRコンドライト)は、母天体集積後の熱変成や水質変質をほとんど経験していない、始原的隕石である。また、太陽風希ガスに乏しいことから、母天体集積後の太陽風照射を経験していない[3]。このため、もし母天体集積前に強力な太陽風/SEP照射があったとしたら、その証拠をMIL 090657中の物質から見出せる可能性がある。今回、Laser Ionization Mass Nanoscope(LIMAS)を用いた4He同位体イメージングによって、MIL 090657中から4Heに富むシュライバーサイトを含む特異なクラストを新たに発見した。本発表では、このクラストの鉱物学的特徴および4He分布に基づき、Heの起源と原始太陽活動について議論する。
分析試料として、MIL 090657の研磨薄片を作製し、真空蒸着法によって試料表面に約10 nm厚の金コーティングを施した。その後、北海道大学のLIMASを用いて、4He、24Mg、32S、58Niの同位体イメージングを行った。4Heをイオン注入(20 keV、3 × 1015 atoms/cm2)したカンラン石標準試料を用いて感度を評価することで4He濃度の定量を行った[4]。LIMAS分析後、4Heに富むクラストの鉱物学的特徴をSEM/EDSおよびTEM/EDSを用いて分析した。
大きさ約6 × 10 μmのクラストは、MIL 090657の細粒マトリックス中に包有されており、主として多孔質なナノ結晶集合体(porous aggregate of nanocrystals: PAN)から構成されていた(図1)。PANの主要構成鉱物は約10―30 nmの硫化鉄であり、少量のマグネタイトおよびNiに富む硫化物も含まれていた。シュライバーサイト結晶(最大2 μm)の一部はPAN中に包有されており、その他はクラスト周縁部に分布していた。クラスト周縁部には、半自形のピロータイト結晶(最大3 μm)が分布しており、一部はシュライバーサイト結晶を取り囲んでいた。LIMAS分析の結果、シュライバーサイト結晶中には高濃度の4He(約3 × 1019 atoms/cm3)が含まれていた(図1)。一方、PANおよび半自形ピロータイトからは4Heがほとんど検出されなかった。さらに、約400 nmの高空間分解能での同位体イメージングの結果、2 μmサイズのシュライバーサイト結晶内部には4Heが均一に分布していることが明らかになった。
PANの多孔質組織と鉱物組成は、PANがMgに乏しいトチリナイトの熱分解によって形成されたことを示唆する[5]。このトチリナイトは、Fe-Ni合金または硫化物が水質変質作用を受けて変化したものであると考えられる。半自形ピロータイトもまた、水質変質作用によって形成された可能性が高い。シュライバーサイトは、星雲ガス中でPAN前駆物質とともに形成されたと考えられる。
4Heに富むシュライバーサイトがPANやトチリナイト中に包有されていることは、シュライバーサイトへの4Heの取り込みが水質変質作用の前に起こったことを示している。CRコンドライトの水質変質作用は太陽系形成から数百万年後に起きたため[6]、この時期の太陽は前主系列星の段階にあった可能性が高い[1]。2 μmサイズのシュライバーサイト中の均一な4He分布は、注入深さが約20 nmの現在の太陽風4He(約4 keV)とは整合しない。この4He分布は、1 MeV以上のエネルギーを持つSEP-Heが注入されたことを示唆している。さらに、4He濃度から推定される当時のSEPフラックスは、現在の太陽と比べて数桁高かった。以上より、4Heに富むシュライバーサイトは、原始太陽が非常に活動的であり、高強度のSEPを放出していたことを示す直接的な証拠である。
引用文献:[1] Feigelson E. D. et al. (2002) Astrophysical Journal 572:335–349. [2] Kööp L. et al. (2018) Nature Astronomy 2:709–713. [3] Obase T. et al. (2021) Geochimica et Cosmochimica Acta 312:75–105. [4] Otsuki Y. et al. (2025) Journal of Analytical Atomic Spectrometry 40:1505–1517. [5] Harries D. and Langenhorst F. (2013) Meteoritics & Planetary Science 48:879–903. [6] Jilly-Rehak C. E. et al. (2017) Geochimica et Cosmochimica Acta 201:224–244.

