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[R5P-08]Laboratory Constraints on Amorphous Silicate Dust Compositions: Systematic Dependence of Optical Constants on Chemical Compositions and Structures

*Hanako Enomoto1, Aki Takigawa1 (1. The University of Tokyo)

Keywords:

Amorphous silicate,Condensation experiments,Circumstellar dust,Infrared spectroscopy

非晶質ケイ酸塩ダストは,星周・星間の難揮発性ダストの主成分であり,原始惑星系円盤などの様々な環境で観測される(Henning, 2020).多くの非晶質ケイ酸塩ダストを生成する漸近巨星分枝(AGB)星は,太陽系原材料物質であるプレソーラー粒子の主な起源でもある.AGB星周の非晶質ケイ酸塩の化学組成は,太陽系をはじめとした惑星系形成に至るダストの化学進化を議論するための手がかりとなる.AGB星起源のプレソーラーケイ酸塩の分析からは,(Mg+Fe)/Si比が鉱物組成を超えて様々な値を持つことが分かっている.(Floss & Haenecour, 2016).一方,AGB星の赤外観測は非晶質ケイ酸塩ダストの10,18 µmピークに多様性があることを示すが,個々の星の化学組成は十分に制約されていない.この背景には,非晶質ケイ酸塩は結晶と異なり幅広い化学組成を取りうるにもかかわらず,従来の実験研究は主にMg–Si–Fe–O系の鉱物組成に限定されている(Dorschner et al. 1995, Jäger et al. 2003),という問題がある.また,化学組成に加えて,非晶質ケイ酸塩のSiO4四面体ネットワークの重合度もスペクトルの特徴を支配する重要な要素であり,これは四面体あたりの非架橋酸素数(NBO/T)によって定量化される(Mutschke et al. 1998, Speck et al. 2011).NBO/Tの値は,Mg,Feに次ぐ太陽系元素存在度であるAl(網目形成カチオン)や,Ca(網目修飾カチオン)に強く依存する.そこで本研究は,Ca,Alを含む非化学量論範囲における化学組成およびNBO/Tと赤外スペクトルの関係を系統的に明らかにすることを目的とし,Ca/Mg比,Al/Si比,およびNBO/Tを系統的に変化させた非晶質ケイ酸塩の模擬ダストを生成し,光学定数を導出した.
非晶質ケイ酸塩の模擬ダスト気相凝縮実験では,誘導熱プラズマ(ITP)装置(JEOL TP-40020NPS: Kim et al. 2021)を用い,高温(約10⁴ K)のプラズマ炎と急冷により,直径10–200 nmの非晶質ケイ酸塩ナノ粒子が形成された.模擬ダストの化学組成は,Al,Ca,Mg,Si,Oを含む系において,CIコンドライト組成を基準としてAl/Si比およびCa/Mg比を非化学量論的な範囲で系統的に変化させた.生成物はXRD(Rigaku RINT-2100)により結晶相および非晶質相を確認し,EPMA(JEOL JXA-8530F)により化学組成を決定した.吸収および反射スペクトルはFTIR(JASCO FT/IR-4200,JASCO IRT5200)により測定し,クラマース・クローニッヒの関係式を用いて試料の光学定数を導出した(Takigawa 2026).
実験結果は,AlおよびCaの存在量と重合度が非晶質ケイ酸塩の赤外スペクトルに及ぼす影響を初めて体系的に明らかにした.10 µmピークは,SiO₄四面体の脱重合が進むにつれて長波長側へシフトした.さらに,この傾向はAl/Si比(0,0.08,0.5)によって異なり,これはSi–O結合に比べてAl–O結合が弱いことに起因すると考えられる.一方,18 µmピークは脱重合に伴って短波長側へシフトした.この変化は,Si–O–Si結合の角度の減少を反映している可能性がある.さらに,18 µmピークの位置はCa/(Ca+Mg)比にも依存し,Ca含有量の増加に伴って長波長側へ移動する.これらの系統的なピークシフトの傾向と,粒子サイズや形状といった物理パラメータを組み合わせることで,実験で直接検証した特定の化学組成に限定されずにダスト組成の制約が可能となった.典型的なケイ酸塩に富むAGB星であるTY Draを対象に,ダスト温度を300 Kとして,仮定するダストサイズをサブミクロンから直径2 µmまで変化させた場合,制約される化学組成の範囲が異なることが示された.
本発表では,TY Draに加えて複数のケイ酸塩に富むAGB星のダスト化学組成の範囲を制約し,観測されるAGB星ダストのスペクトル多様性の要因を探る.さらにプレソーラー粒子の非晶質ケイ酸塩の化学組成との比較を通し,太陽系原材料物質が経たプロセスを議論する.また,ピークシフトの傾向を用いたダスト組成制約の枠組みを,原始惑星系円盤で観測される非晶質ケイ酸塩ダストにも応用する.AGB星周,原始惑星系円盤それぞれの環境におけるダストの多様性と,環境間のダスト組成の違いを通じてダストの化学進化を議論する.