Presentation Information
[R6-03]Oceanic plate evolution and mantle heterogeneity constrained by the geochemistry of oceanic basalts: insights from oceanic crust, petit-spot, and hotspot
*Kazuto Mikuni1,2, Akira Ishikawa2, Naoto Hirano3, Tetsuya Yokoyama2 (1. Geological Survey of Japan, AIST, 2. Science Tokyo, 3. Tohoku Univ.)
Keywords:
Oceanic basalt,Oceanic crust,Pitcairn island,Petit-spot,Highly siderophile element
海洋に産する玄武岩は、マントルの部分溶融によって生じたマグマが大規模な地殻混染を受けることなく上昇・冷却固化し形成したため、初生的な情報を保持しており、マントルの化学的特徴を探る上で重要である。これまで中央海嶺玄武岩(MORB)を中心とした同位体地球化学データの蓄積により、上部マントルは大局的には化学的に均質であると考えられ、アセノスフェアの主要成分としてDepleted MORB mantle (DMM)が定義された(例えば[1])。一方、ホットスポット起源の海洋島玄武岩(OIB)は地域ごとに多様なSr-Nd-Pb-Hf同位体組成を示し、深部マントルにはリサイクル物質に由来するEM1、EM2、HIMUといった化学的不均質端成分の存在が想定されている(例えば[2])。
そのような中、アセノスフェアに起源を持つプチスポット火山がEM1的な特徴を有することが明らかとなり、上部マントルは必ずしも均質ではないことが明らかとなった [3]。EM1成分は海洋プレート内火山のみならず大陸内アルカリ玄武岩などにも認められ、普遍的な成分である可能性が示唆されるが、その起源については、炭素に富む海洋堆積物 [4, 5]、大陸下部地殻 [6]、大陸下リソスフェアマントル(SCLM)[7] など文献・地域により解釈は多様であり、統一的な見解は得られていない。
本発表では、白亜紀海洋地殻と、EM1成分の寄与を示すピトケアン島・プチスポット火山といった様々なテクトニックセッティング由来の玄武岩の化学組成・Sr-Nd-Pb-Os同位体組成を用い、太平洋下マントルの化学的不均質性について議論する。特に、Sr-Nd-Pb-Hf同位体系とは独立した、あるいはそれらを補完する情報を与えるOs同位体比と強親鉄性元素(Ru, Rh, Pd, Re, Os, Ir, Pt, Au)組成にフォーカスし、それらの有用性について紹介する。
187Re–187Os系では、親核種Reと娘核種Osの火成作用における分配挙動が著しく異なる。Reは部分溶融や結晶分別時に液相へ濃集するのに対し、Osは強い固相濃集性を示すため、地殻物質では高いRe/Os比(場合によりRe/Os = ~10,000)となり、時間と共に高い187Os/188Os比へと進化する。一方、メルト抽出を経験した溶け残りマントルではReに枯渇するため、大規模な部分溶融を経験したSCLMのようなマントルは低いOs同位体比を長期間保持する。そのため、海洋玄武岩のOs同位体比は、リサイクル地殻物質だけでなく、古融解マントル物質の寄与にも高い感度を持つトレーサーとなる。つまり、EM1成分の起源が複数提案されている中で、Os同位体系はその成因を制約する有力な指標となる可能性がある。さらに、その他の同位体系(Rb-Sr, Sm-Ndなど)と比べ親娘比の分別が未分化な玄武岩においても大きくなるということは、アイソクロン法による年代測定のツールとしても有用であることを意味する。一方、Osを含む強親鉄性元素はその名が示す通り地球の金属核に99%以上が濃集しており、地殻中の濃度はppb–pptオーダーである。したがって、超低ブランクかつ高精度測定が求められる。また、Os濃度の低い(結晶分別の進んだ)玄武岩ほど、Reの壊変だけでは説明できない高い187Os/188Os比がしばしば認められ、外的な影響を否定できない一方その要因は明らかでないなど、未解決問題もある。本発表では、これらの問題についても最新の研究成果をもとに議論し、海洋玄武岩の強親鉄性地球化学がもたらす知見について総合的に紹介する。
[1] Workman and Hart (2005) EPSL, 231, 53–72
[2] Zinder and Hart (1987) Annu. Rev. Earth Pl. Sci., 14, 493–571
[3] Machida et al. (2009) GCA, 73, 3028–3037
[4] Wang et al. (2018) PNAS, 115, 8682–8687
[5] Liu et al. (2020) Nat. Commun., 11, 172
[6] Willbold and Stracke (2010) Chem Geol, 276, 188–197
[7] McKenzie and O’Nions (1983) Nature, 30, 229–231
そのような中、アセノスフェアに起源を持つプチスポット火山がEM1的な特徴を有することが明らかとなり、上部マントルは必ずしも均質ではないことが明らかとなった [3]。EM1成分は海洋プレート内火山のみならず大陸内アルカリ玄武岩などにも認められ、普遍的な成分である可能性が示唆されるが、その起源については、炭素に富む海洋堆積物 [4, 5]、大陸下部地殻 [6]、大陸下リソスフェアマントル(SCLM)[7] など文献・地域により解釈は多様であり、統一的な見解は得られていない。
本発表では、白亜紀海洋地殻と、EM1成分の寄与を示すピトケアン島・プチスポット火山といった様々なテクトニックセッティング由来の玄武岩の化学組成・Sr-Nd-Pb-Os同位体組成を用い、太平洋下マントルの化学的不均質性について議論する。特に、Sr-Nd-Pb-Hf同位体系とは独立した、あるいはそれらを補完する情報を与えるOs同位体比と強親鉄性元素(Ru, Rh, Pd, Re, Os, Ir, Pt, Au)組成にフォーカスし、それらの有用性について紹介する。
187Re–187Os系では、親核種Reと娘核種Osの火成作用における分配挙動が著しく異なる。Reは部分溶融や結晶分別時に液相へ濃集するのに対し、Osは強い固相濃集性を示すため、地殻物質では高いRe/Os比(場合によりRe/Os = ~10,000)となり、時間と共に高い187Os/188Os比へと進化する。一方、メルト抽出を経験した溶け残りマントルではReに枯渇するため、大規模な部分溶融を経験したSCLMのようなマントルは低いOs同位体比を長期間保持する。そのため、海洋玄武岩のOs同位体比は、リサイクル地殻物質だけでなく、古融解マントル物質の寄与にも高い感度を持つトレーサーとなる。つまり、EM1成分の起源が複数提案されている中で、Os同位体系はその成因を制約する有力な指標となる可能性がある。さらに、その他の同位体系(Rb-Sr, Sm-Ndなど)と比べ親娘比の分別が未分化な玄武岩においても大きくなるということは、アイソクロン法による年代測定のツールとしても有用であることを意味する。一方、Osを含む強親鉄性元素はその名が示す通り地球の金属核に99%以上が濃集しており、地殻中の濃度はppb–pptオーダーである。したがって、超低ブランクかつ高精度測定が求められる。また、Os濃度の低い(結晶分別の進んだ)玄武岩ほど、Reの壊変だけでは説明できない高い187Os/188Os比がしばしば認められ、外的な影響を否定できない一方その要因は明らかでないなど、未解決問題もある。本発表では、これらの問題についても最新の研究成果をもとに議論し、海洋玄武岩の強親鉄性地球化学がもたらす知見について総合的に紹介する。
[1] Workman and Hart (2005) EPSL, 231, 53–72
[2] Zinder and Hart (1987) Annu. Rev. Earth Pl. Sci., 14, 493–571
[3] Machida et al. (2009) GCA, 73, 3028–3037
[4] Wang et al. (2018) PNAS, 115, 8682–8687
[5] Liu et al. (2020) Nat. Commun., 11, 172
[6] Willbold and Stracke (2010) Chem Geol, 276, 188–197
[7] McKenzie and O’Nions (1983) Nature, 30, 229–231
