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[R7-06]Characterization of serpentinite from Mt. Shirouma: The highest-elevation mantle rock in Japan

*Karin Saito1, Seinosuke Yamada1, Terumi Ejima2, Shoji Arai3 (1. Shinshu Univ. Sci., 2. Shinshu Univ. Sci. , 3. Kanazawa Univ.)

Keywords:

Mt. Shirouma,Hida Gaien Belt,mantle peridotite,serpentinite

プレート収束域では,マントルの断片が地殻内に併入・上昇し,地表,時に高所まで運ばれる。本来地下深部に存在するマントル物質が地表に露出しているということは,それ自体が大規模な垂直方向の累積的変動があったことを示す,物質的な証拠として興味深い。北アルプス白馬岳の周辺に分布する蛇紋岩は,報告されている国内の超苦鉄質岩としては最も高所(標高約2850 m)に位置すると思われる。この“白馬岳蛇紋岩”は飛驒外縁帯を構成する超苦鉄質岩の一部であり,ペルム系白馬岳層に衝上するクリッペとして分布する(竹内, 1998; 竹内ほか, 2004)。同帯の超苦鉄質岩の中でも,青海,小滝,八方尾根,伊勢地域に分布するものについては岩石学的検討が進められ,マントルウェッジ起源であると考えられている(e.g., Khedr and Arai, 2009)。しかし白馬岳蛇紋岩は高山地帯に小規模に分布しており,岩石学的研究は行われておらず,その性質は不明である。
 本研究では,野外調査,岩石記載,顕微鏡観察および電界放出型電子プローブマイクロアナライザー(信州大学設置)を用いた鉱物組成分析により,白馬岳付近の蛇紋岩がマントル起源であることを検証し,原岩特性を検討した。
 白馬岳蛇紋岩は全体的に高度に剪断されているが,一部は塊状である。この塊状部分は大部分が蛇紋石(アンチゴライトを含む),滑石,炭酸塩鉱物(方解石,苦灰石)で構成され,少量のクロムスピネル,磁鉄鉱,硫化鉱物(磁硫鉄鉱)が産する。またかんらん石の仮像組織であるメッシュ組織と,直方輝石の仮像組織であるバスタイトが認められる。この両者は蛇紋石,滑石,磁鉄鉱で構成される。バスタイトを構成する蛇紋石はキンクバンドを有し,波動消光し,先行鉱物の変形を記憶している。バスタイトのモードは,32.2 cm2の範囲で測定した結果,10%である。クロムスピネルは唯一部分的に保存されている初生鉱物であり,特徴的なアメーバ状で産する。また,バスタイトとアメーバ状のクロムスピネルからなる集合体が存在する。クロムスピネルのCr#(Cr/(Cr+Al)原子比)は0.36–0.41である。
 白馬岳付近の塊状蛇紋岩には,かんらん石と直方輝石の仮像が顕著にみられ,原岩はかんらん岩であるといえる。完全な蛇紋岩化により,かんらん石のFo値は不明であるが,クロムスピネルのCr#が低~中程度であることと,バスタイトのモードから,原岩はハルツバーガイト(レールゾライトに近い?)であると考えられる(Arai, 1994)。
 飛驒外縁帯最大のマントルかんらん岩体である八方尾根かんらん岩体では,レールゾライトが優勢である(Khedr and Arai, 2009)が,白馬岳蛇紋岩のクロムスピネルのCr#は飛驒外縁帯の小滝,伊勢地域のハルツバーガイトのもの(町・石渡, 2010; Khedr and Arai, 2011)と同様であり,白馬岳蛇紋岩の原岩は,飛驒外縁帯に広く分布する比較的低枯渇度のハルツバーガイトと同様のものと推定される。アメーバ状クロムスピネルおよび輝石との集合体は,西南日本の日本海側から飛驒外縁帯にかけて分布するマントル起源岩に共通する特徴として知られる(e.g., Arai, 1980; 町・石渡, 2010)。したがって本岩体も,それらの超苦鉄質岩類と共通する起源を有するものであろう。
 白馬岳蛇紋岩は,日本で最も高所に産するマントル起源のハルツバーガイトである。その岩石学的特徴は,飛驒外縁帯を構成する超苦鉄質岩のなかでも,比較的部分溶融度の低いものに相当する。マントルから現位置に至るまでの垂直変位量は,ヒマラヤ山脈のエベレストに露出する海成層のそれに相当するものであり,白馬岳蛇紋岩はユーラシア大陸の縁辺部に位置してきた,日本の活発な地殻変動を象徴づける存在であるといえよう。