Presentation Information
[R7P-07]The formation process of Jadeitite in the Voikar Complex
*Kaito Abe1, Satoko Ishimaru1, Yui Maeda1, Makoto Miura2,3, Vladimir R Shmelev4, Shoji Arai3 (1. Kumamoto University, 2. GIA, 3. Kanazawa University, 4. Zavaritsky Institute of Geology)
Keywords:
Jadeitite,peridotite,Polar Urals,slab fluid
ヒスイ輝石岩は蛇紋岩化したかんらん岩中などに存在し,形成に流体が関わっているものが2種類ある(P-type, R-type; Tsujimori and Harlow, 2012)。P-type のヒスイ輝石岩は熱水流体から直接沈殿することで,R-typeのヒスイ輝石岩は源岩への熱水流体が浸透し,置換されることで形成されたと解釈されている(Harlow et al., 2015)。ヒスイ輝石の研究は,沈み込むスラブから上盤マントルに放出される流体の直接的な性質や,流体による元素の移動の様子を知る重要な手がかりである。
北極圏ウラル地域の超苦鉄質岩体は,360~ 350Ma に古ウラル海が閉じる衝突イベントにより形成された(Glodny et al., 2004)。北極圏ウラルでは,3 つの超苦鉄質岩体(シム・ケウ, ライ・イズ, ヴォイカー)が,下層に形成された高圧変成岩ユニットとともに主ウラル断層(MUT)で衝上している。いずれの超苦鉄質岩体にもヒスイ輝石岩の存在が報告されている。本研究では,北極圏ウラル地域のヴォイカー岩体北部から採集したヒスイ輝石岩,かんらん岩(蛇紋岩)の解析をおこない,ヒスイ輝石岩の形成に関与した流体組成の推定を試みた。
本研究で用いたヒスイ輝石岩を,鉱物組み合わせや肉眼での色といった特徴に基づいて黒色,白色,緑色の3つに分類した。そのうち,特に詳細な解析をおこなった5試料(黒色, B-Jd; 白色, WA-Jd, W-Jd; 緑色, Gs-Jd, G-Jd)について以下に記す。黒色ヒスイ輝石岩(B-Jd; RY23-01)はヒスイ輝石,オンファス輝石,黒雲母,角閃石,ジルコン,リン酸塩などが観察されるほか,Caリン酸塩のリムがSrに富むリン酸塩に置換された構造がみられる。白色ヒスイ輝石岩2試料(WA-Jd; RY23-10, W-Jd; RY23-09)は主にヒスイ輝石,ナトロライト,黒雲母などから構成され,WA-Jd(RY23-10)は斜長石も含む。W-Jd(RY23-09)は斜長石を含まないがオンファス輝石が確認される。加えて,顕微レーザーラマン分析による流体包有物相の解析により,ともにCH4 が流体として確認された。緑色ヒスイ輝石岩2試料(Gs-Jd; RY23-13, G-Jd; RY23-17)は主にオンファス輝石とナトロライトからなり,ヒスイ輝石は確認できなかった。オンファス輝石の組織は「自形~半自形」と「放射状」がみられる。Gs-Jd(RY23-13)はクロムスピネルを含み,その周囲のオンファス輝石が濃緑色を呈す。G-Jd(RY23-17)はクロムスピネルを含まず,濃緑色部と淡緑色部で鉱物量比やオンファス輝石の組織に差はない。また,ヒスイ輝石岩以外で特に詳細な解析をおこなった蛇紋岩2試料(ウェールライト, ダナイト),斜長岩1試料について以下に記す。ウェールライト(RY23-05)は主にかんらん石と単斜輝石からなり,直方輝石,蛇紋石,スピネルを少量含む。ダナイト(RY23-11)はかんらん石や輝石が残存せず,蛇紋石とスピネルのみ観察される。斜長岩(RY25-04)は主に斜長石からなり,緑簾石を少量含むが,ヒスイ輝石や石英は確認されない。
SEM-EDSを用いた解析から,斜長岩(RY25-04)はほぼ全体が斜長石で構成され,An0-10である。G-Jd(RY23-17)中のオンファス輝石は組成累帯があり,コアではCaO含有量が高くNa2O含有量に乏しい(15.9 wt %, 6.0 wt %)。一方,リムではそれぞれ9.8 wt %,9.82 wt %であった。また,G-Jd(RY23-17)と同じく緑色ヒスイ輝石岩であるGs-Jd(RY23-13)では累帯構造はないが,クロムスピネル近傍の緑色部ではCr2O3に非常に富んでいる(0.2~9.5 wt%)。Cr2O3含有量を淡緑色部と濃緑色部で比較したところ,ほとんど差がなかった。全岩の微量元素組成の特徴は,白色ヒスイ輝石岩2試料はMORBで規格化して0.1程度と低く,Harlow et al.(2015)で示されたP-typeヒスイ輝石岩と類似している。B-Jd(RY23-01)は希土類元素や液相濃集元素に富む堆積物やOIBのほか,Harlow et al.(2015)で示されたR-typeヒスイ輝石岩と類似している。Gs-Jd(RY23-13)はウェールライトと同様の組成を示す。
堆積物やOIBと類似した微量元素組成の特徴を示すことから,B-Jd(RY23-01)は堆積物メルトを原岩とする岩石だと考えられる。加えて,Caリン酸塩のリムがSrに富むリン酸塩に置換された構造がB-Jd(RY23-01)にみられることから,Srに富む熱水流体が堆積物メルトに浸透して置換されてB-Jd(RY23-01)が形成されたと推定される。また,微量元素の組成の結果から,白色ヒスイ輝石岩2試料は同様の熱水流体から直接沈積して形成されたと推定される。そして,ウェールライトと似た全岩希土類元素組成や縁が一部変質したスピネルの存在が確認されることから,Gs-Jd(RY23-13)は同様の熱水流体との反応によってウェールライトが置換されて形成されたと推定される。
以上より,ヴォイカー岩体のヒスイ輝石岩の形成には,堆積物由来の還元的なスラブ流体が関与したと考えられる。
北極圏ウラル地域の超苦鉄質岩体は,360~ 350Ma に古ウラル海が閉じる衝突イベントにより形成された(Glodny et al., 2004)。北極圏ウラルでは,3 つの超苦鉄質岩体(シム・ケウ, ライ・イズ, ヴォイカー)が,下層に形成された高圧変成岩ユニットとともに主ウラル断層(MUT)で衝上している。いずれの超苦鉄質岩体にもヒスイ輝石岩の存在が報告されている。本研究では,北極圏ウラル地域のヴォイカー岩体北部から採集したヒスイ輝石岩,かんらん岩(蛇紋岩)の解析をおこない,ヒスイ輝石岩の形成に関与した流体組成の推定を試みた。
本研究で用いたヒスイ輝石岩を,鉱物組み合わせや肉眼での色といった特徴に基づいて黒色,白色,緑色の3つに分類した。そのうち,特に詳細な解析をおこなった5試料(黒色, B-Jd; 白色, WA-Jd, W-Jd; 緑色, Gs-Jd, G-Jd)について以下に記す。黒色ヒスイ輝石岩(B-Jd; RY23-01)はヒスイ輝石,オンファス輝石,黒雲母,角閃石,ジルコン,リン酸塩などが観察されるほか,Caリン酸塩のリムがSrに富むリン酸塩に置換された構造がみられる。白色ヒスイ輝石岩2試料(WA-Jd; RY23-10, W-Jd; RY23-09)は主にヒスイ輝石,ナトロライト,黒雲母などから構成され,WA-Jd(RY23-10)は斜長石も含む。W-Jd(RY23-09)は斜長石を含まないがオンファス輝石が確認される。加えて,顕微レーザーラマン分析による流体包有物相の解析により,ともにCH4 が流体として確認された。緑色ヒスイ輝石岩2試料(Gs-Jd; RY23-13, G-Jd; RY23-17)は主にオンファス輝石とナトロライトからなり,ヒスイ輝石は確認できなかった。オンファス輝石の組織は「自形~半自形」と「放射状」がみられる。Gs-Jd(RY23-13)はクロムスピネルを含み,その周囲のオンファス輝石が濃緑色を呈す。G-Jd(RY23-17)はクロムスピネルを含まず,濃緑色部と淡緑色部で鉱物量比やオンファス輝石の組織に差はない。また,ヒスイ輝石岩以外で特に詳細な解析をおこなった蛇紋岩2試料(ウェールライト, ダナイト),斜長岩1試料について以下に記す。ウェールライト(RY23-05)は主にかんらん石と単斜輝石からなり,直方輝石,蛇紋石,スピネルを少量含む。ダナイト(RY23-11)はかんらん石や輝石が残存せず,蛇紋石とスピネルのみ観察される。斜長岩(RY25-04)は主に斜長石からなり,緑簾石を少量含むが,ヒスイ輝石や石英は確認されない。
SEM-EDSを用いた解析から,斜長岩(RY25-04)はほぼ全体が斜長石で構成され,An0-10である。G-Jd(RY23-17)中のオンファス輝石は組成累帯があり,コアではCaO含有量が高くNa2O含有量に乏しい(15.9 wt %, 6.0 wt %)。一方,リムではそれぞれ9.8 wt %,9.82 wt %であった。また,G-Jd(RY23-17)と同じく緑色ヒスイ輝石岩であるGs-Jd(RY23-13)では累帯構造はないが,クロムスピネル近傍の緑色部ではCr2O3に非常に富んでいる(0.2~9.5 wt%)。Cr2O3含有量を淡緑色部と濃緑色部で比較したところ,ほとんど差がなかった。全岩の微量元素組成の特徴は,白色ヒスイ輝石岩2試料はMORBで規格化して0.1程度と低く,Harlow et al.(2015)で示されたP-typeヒスイ輝石岩と類似している。B-Jd(RY23-01)は希土類元素や液相濃集元素に富む堆積物やOIBのほか,Harlow et al.(2015)で示されたR-typeヒスイ輝石岩と類似している。Gs-Jd(RY23-13)はウェールライトと同様の組成を示す。
堆積物やOIBと類似した微量元素組成の特徴を示すことから,B-Jd(RY23-01)は堆積物メルトを原岩とする岩石だと考えられる。加えて,Caリン酸塩のリムがSrに富むリン酸塩に置換された構造がB-Jd(RY23-01)にみられることから,Srに富む熱水流体が堆積物メルトに浸透して置換されてB-Jd(RY23-01)が形成されたと推定される。また,微量元素の組成の結果から,白色ヒスイ輝石岩2試料は同様の熱水流体から直接沈積して形成されたと推定される。そして,ウェールライトと似た全岩希土類元素組成や縁が一部変質したスピネルの存在が確認されることから,Gs-Jd(RY23-13)は同様の熱水流体との反応によってウェールライトが置換されて形成されたと推定される。
以上より,ヴォイカー岩体のヒスイ輝石岩の形成には,堆積物由来の還元的なスラブ流体が関与したと考えられる。
