Presentation Information
[R7P-15]Mineral assemblages and mineralizing environment of the skarn-type tungsten deposit in the Kuga area, Iwakuni City, Japan.
*Shoma Suetomi1, Mariko Nagashima2 (1. Yamaguchi University, 2. Yamaguchi Univ. Sci.)
Keywords:
Skarn-type tungsten deposit,Kuga area,Mineral chemistry,scheelite
【はじめに】
山口県岩国市には, 玖珂, 喜和田, 藤ヶ谷などのタングステン鉱床が多数分布しており,これらは主にスカルン型鉱床である. 本地域は, 西南日本内帯の弱変成ジュラ紀付加体である玖珂層群からなり,後期白亜紀の火成活動に伴う花崗岩類が貫入する. 玖珂層群は,主に泥質岩や砂質岩から構成され,少量のチャート,石灰岩ブロック,緑色岩を含む.形成年代は古い順にユニットIII → II → Iに区分され[1],タングステン鉱床はユニットⅠに胚胎する. このユニット内の石灰岩体が熱水流体により交代作用を受けることでスカルン型タングステン鉱床が形成され, 灰重石や鉄マンガン重石などのタングステン鉱物が多産する. 一方,玖珂層群のチャート中には, 層状マンガン鉱床も多く胚胎している.しかし,含タングステン鉱物の産出は限定的で[2],タングステン鉱床と層状マンガン鉱床の関連性については十分に理解されていない.また, 1950~1970年代には玖珂鉱山, 喜和田鉱山, 藤ヶ谷鉱山に関する研究が盛んにおこなわれたものの,周辺の小規模な鉱床については,詳細な記載が乏しい.したがって本研究では, 主要3鉱山近傍のタングステン鉱床から得られた鉱石試料を対象に,鉱物組み合わせやそれらの化学的特徴を明らかにすることを目的とする.これにより,玖珂地域におけるタングステン鉱床全体の形成プロセスと産状を包括的に検討し,タングステンの起源, 層状マンガン鉱床との関係, および構造地質学的な分布の支配要因などを解明することを試みる.
【実験手法】
調査地周辺のズリより採取した鉱石試料の研磨薄片を作製し, 鏡下観察後, 電子プローブマイクロアナライザ(EPMA:JEOL製JXA-8230)を用いて鉱石鉱物の詳細な組織観察および化学分析を行った.
【結果・考察】
試料の主要構成鉱物に基づき, 灰鉄輝石主体のHd帯, ザクロ石・菱鉄鉱・方解石主体のGrt-Sd-Cal帯, 石英・方解石主体のQz-Cal帯の3帯に分類した. 灰重石は各帯に分布しており, 特にHd帯で顕著であった. スカルン鉱物と鉱石鉱物の組み合わせ,および切断・置換関係から,鉱化作用は初期から晩期にわたる3ステージに区分される.
鉱化初期には, スカルン鉱物としてザクロ石・灰鉄輝石が産出した. EPMA分析の結果,Hd帯の灰鉄輝石の組成はほぼ一定(Hd73Jo17Di10)であった.Grt-Sd-Cal帯では,光学異常を示し波動累帯構造を有するザクロ石(Grs41-78Sps12-48Alm9-12)と,光学異常を示さないザクロ石(Grs46-59Sps28-42Alm10-14)が共存していた。ザクロ石の組成がグロシュラーおよびスペサルティン成分に富み,アンドラダイト成分を含まないことから,鉱化初期は高温・還元的な環境であったと考えられる.
続く鉱化中期には,磁硫鉄鉱・黄鉄鉱・閃亜鉛鉱などの主要鉱石鉱物が,スカルン鉱物を溶解しながら産出した. 特に磁硫鉄鉱が卓越することは, 鉱化初期から続く還元的な環境を支持する.
その後,鉱化後期になると, 鉱石鉱物として灰重石と錫石,および燐灰石が形成された. 含タングステン鉱物はすべて灰重石であり,鉄マンガン重石は確認されなかった.これは流体からのWO42-, 石灰岩からのCa2+の供給により灰重石が産出したことを示唆する. 鉱化中期に産出した黄鉄鉱は多孔質化し, 粒間は菱鉄鉱に置換していた(図1a). また, 磁硫鉄鉱外縁が黄鉄鉱に置換されていたこと(図1b), および菱鉄鉱・方解石の卓越は,硫黄フガシティ(fS2)の上昇と炭酸塩鉱物が形成される環境への遷移を示す.しかし,磁硫鉄鉱の残存や菱鉄鉱とチタン鉄鉱の共生から,環境は依然として還元的であったと推察される.
これらの鉱化ステージ後に, 一部スカルン鉱物が緑泥石化していることから, 低温かつH2Oに富む環境へと変化したことが示唆される.
本研究により,詳細な記載の乏しかった小規模なスカルン型タングステン鉱床の鉱物組み合わせやそれらの化学的特徴が明らかとなった. 特に,鉱化初期のザクロ石にスペサルティン成分が卓越する特徴は,近傍の玖珂層群中に胚胎する層状マンガン鉱床との関連を示唆している可能性がある.本結果は,本地域におけるタングステン鉱床全体の形成プロセスと広域的な鉱化作用モデルの構築に貢献することが期待される.
[1] 高見ほか, 地質学雑誌, 99, 545-563(1993), [2] 渋谷ほか, 山口県立山口博物館研究報告, 39, 9-50(2013).
山口県岩国市には, 玖珂, 喜和田, 藤ヶ谷などのタングステン鉱床が多数分布しており,これらは主にスカルン型鉱床である. 本地域は, 西南日本内帯の弱変成ジュラ紀付加体である玖珂層群からなり,後期白亜紀の火成活動に伴う花崗岩類が貫入する. 玖珂層群は,主に泥質岩や砂質岩から構成され,少量のチャート,石灰岩ブロック,緑色岩を含む.形成年代は古い順にユニットIII → II → Iに区分され[1],タングステン鉱床はユニットⅠに胚胎する. このユニット内の石灰岩体が熱水流体により交代作用を受けることでスカルン型タングステン鉱床が形成され, 灰重石や鉄マンガン重石などのタングステン鉱物が多産する. 一方,玖珂層群のチャート中には, 層状マンガン鉱床も多く胚胎している.しかし,含タングステン鉱物の産出は限定的で[2],タングステン鉱床と層状マンガン鉱床の関連性については十分に理解されていない.また, 1950~1970年代には玖珂鉱山, 喜和田鉱山, 藤ヶ谷鉱山に関する研究が盛んにおこなわれたものの,周辺の小規模な鉱床については,詳細な記載が乏しい.したがって本研究では, 主要3鉱山近傍のタングステン鉱床から得られた鉱石試料を対象に,鉱物組み合わせやそれらの化学的特徴を明らかにすることを目的とする.これにより,玖珂地域におけるタングステン鉱床全体の形成プロセスと産状を包括的に検討し,タングステンの起源, 層状マンガン鉱床との関係, および構造地質学的な分布の支配要因などを解明することを試みる.
【実験手法】
調査地周辺のズリより採取した鉱石試料の研磨薄片を作製し, 鏡下観察後, 電子プローブマイクロアナライザ(EPMA:JEOL製JXA-8230)を用いて鉱石鉱物の詳細な組織観察および化学分析を行った.
【結果・考察】
試料の主要構成鉱物に基づき, 灰鉄輝石主体のHd帯, ザクロ石・菱鉄鉱・方解石主体のGrt-Sd-Cal帯, 石英・方解石主体のQz-Cal帯の3帯に分類した. 灰重石は各帯に分布しており, 特にHd帯で顕著であった. スカルン鉱物と鉱石鉱物の組み合わせ,および切断・置換関係から,鉱化作用は初期から晩期にわたる3ステージに区分される.
鉱化初期には, スカルン鉱物としてザクロ石・灰鉄輝石が産出した. EPMA分析の結果,Hd帯の灰鉄輝石の組成はほぼ一定(Hd73Jo17Di10)であった.Grt-Sd-Cal帯では,光学異常を示し波動累帯構造を有するザクロ石(Grs41-78Sps12-48Alm9-12)と,光学異常を示さないザクロ石(Grs46-59Sps28-42Alm10-14)が共存していた。ザクロ石の組成がグロシュラーおよびスペサルティン成分に富み,アンドラダイト成分を含まないことから,鉱化初期は高温・還元的な環境であったと考えられる.
続く鉱化中期には,磁硫鉄鉱・黄鉄鉱・閃亜鉛鉱などの主要鉱石鉱物が,スカルン鉱物を溶解しながら産出した. 特に磁硫鉄鉱が卓越することは, 鉱化初期から続く還元的な環境を支持する.
その後,鉱化後期になると, 鉱石鉱物として灰重石と錫石,および燐灰石が形成された. 含タングステン鉱物はすべて灰重石であり,鉄マンガン重石は確認されなかった.これは流体からのWO42-, 石灰岩からのCa2+の供給により灰重石が産出したことを示唆する. 鉱化中期に産出した黄鉄鉱は多孔質化し, 粒間は菱鉄鉱に置換していた(図1a). また, 磁硫鉄鉱外縁が黄鉄鉱に置換されていたこと(図1b), および菱鉄鉱・方解石の卓越は,硫黄フガシティ(fS2)の上昇と炭酸塩鉱物が形成される環境への遷移を示す.しかし,磁硫鉄鉱の残存や菱鉄鉱とチタン鉄鉱の共生から,環境は依然として還元的であったと推察される.
これらの鉱化ステージ後に, 一部スカルン鉱物が緑泥石化していることから, 低温かつH2Oに富む環境へと変化したことが示唆される.
本研究により,詳細な記載の乏しかった小規模なスカルン型タングステン鉱床の鉱物組み合わせやそれらの化学的特徴が明らかとなった. 特に,鉱化初期のザクロ石にスペサルティン成分が卓越する特徴は,近傍の玖珂層群中に胚胎する層状マンガン鉱床との関連を示唆している可能性がある.本結果は,本地域におけるタングステン鉱床全体の形成プロセスと広域的な鉱化作用モデルの構築に貢献することが期待される.
[1] 高見ほか, 地質学雑誌, 99, 545-563(1993), [2] 渋谷ほか, 山口県立山口博物館研究報告, 39, 9-50(2013).

