Presentation Information
[R8-04]Constraint on the formation depth of Alpe Arami garnet peridotite from the European Alps
Osuke IZUMI1, *Daisuke NAKAMURA1 (1. Okayama Univ. Sci.)
Keywords:
Alpe Arami,garnet peridotite
ヨーロッパアルプス・Alpe Aramiザクロ石かんらん岩は、従来型の地質温度圧力計の適用から、6GPa程の著しく高い圧力条件にあったことが指摘されている(Paqui & Altherr, 2001)。一方で、その平衡圧力は3GPa程しかないという推定結果も存在している(Nimis & Trommsdorff, 2001)。このように、このザクロ石かんらん岩はマントル深部に由来する完全なテクトニックブロックであるのか、周囲の岩石と伴に沈み込みを経験した蛇紋岩起源の変成岩なのか意見が分かれている。本研究では、Alpe Aramiザクロ石かんらん岩試料の鉱物化学組成分析と従来型の地質温度圧力計の適用から、その平衡温度圧力条件の推定を行い、上記の考えのどちらが妥当であるかを検討した。
顕微鏡観察と鉱物化学組成の分析の結果、次のような特徴が得られた。ザクロ石は直径3mm以上の斑状変晶をなし、コアでMgに富み{XMg[=Mg/(Fe+Mn+Mg+Ca)] = 0.700-0.710}、Feに乏しく{XFe[=Fe/(Fe+Mn+Mg+Ca)] = 0.160-0.170}、リム近傍でMgにやや乏しくなり(XMg = 0.690-0.705)、Feにやや富むようになる(XFe = 0.170-0.180)後退変成型の累帯構造を示す。マトリクスは直径1.6mm以下のかんらん石、直方輝石、単斜輝石から主に構成される。直方輝石は比較的均質でAlに乏しく[Al = 0.030-0.040 apfu (O=6)]、ザクロ石斑状変晶の傍に位置する粒子と離れた粒子間で顕著な組成の違いはない。単斜輝石も分析した範囲内でほぼ均質で [Si apfu = 1.960-1.970 (O=6); Mg/(Fe+Mg) = 0.920-0.930]、かんらん石も顕著な組成の違いを示さない[Mg/(Fe+Mg) = 0.90-0.91]。また、マトリクスには角閃石も産するが、非常に細粒な鉱物粒子からなる脈を切るように発達している角閃石がある。さらに、Mgをかなり含むチタン鉄鉱[Mg/(Fe+Mg) = 0.25-0.33]の存在も認められた。その他、スピネル[Mg/(Fe+Mg) = 0.39-0.42; Cr/(Al+Cr) = 0.55-0.58]がかんらん石中の包有物としてチタン鉄鉱とともに産している。
以上のようにマトリクスの鉱物はほぼ均質で、ある平衡時の化学組成を保持していると考えられる。一方、ザクロ石斑状変晶はコアとリムで化学組成が異なり、Mgに富むコアが示す高温のステージとMgにやや乏しいリムが示す相対的に低温のステージに分けられる。そこで、ザクロ石の組成をコアの約0.5mm幅の平均組成とリムから約0.5mm幅の平均組成に分けて、それらを従来型の温度圧力計(ザクロ石-直方輝石温度圧力計、ザクロ石-単斜輝石温度計、ザクロ石-かんらん石温度計、両輝石温度計)に適用して温度圧力条件を算出した。その結果、ザクロ石のコアを用いた場合、ザクロ石-かんらん石温度計が示す約1100℃から両輝石温度計が示す820℃程度まで大きな算出温度の違いが生じた。一方、ザクロ石のリムを用いた場合には、ザクロ石-かんらん石温度計が示す温度は約1000℃まで低下し、他のFe-Mg交換型温度計が示す約950℃と近い温度となった。両輝石温度計が示す温度(820℃程度)とは未だ違いが大きいものの、両輝石温度計の結果を除いた他の地質温度圧力計の示す温度圧力条件の収束の程度はかなり高く、約950℃、4GPaとなる。マトリクスの鉱物の化学組成はそうした温度圧力条件下でザクロ石斑状変晶のリムと平衡化したものであるのだろう。ザクロ石のMgに富むコアと平衡化したときのマトリクスの鉱物の化学組成は改変されてしまっており、それらから得られた温度圧力条件はばらついた結果となったのであろう。それでも、ザクロ石のコアの組成を用いた場合に、ザクロ石-かんらん石温度計が1100℃程の高温条件を与えたのには意味があると考える。かんらん石はかんらん岩中の主要構成鉱物であり、温度圧力条件が変化してもその化学組成の変化は小さいものとなる。その結果、ザクロ石のコアと平衡状態にあったかんらん石の化学組成は現在残っているかんらん石の化学組成と大きく異ならなく、算出される温度もザクロ石のコア形成時のものと大きく異ならないと考える。その際の圧力の制約条件はないが、直方輝石のAl含有量があまり変化していないのであれば、ザクロ石-直方輝石圧力計が適用され、その温度圧力条件は1100℃、4.5-4.8GPa程となる。この値は6GPaには達しないものの、3GPaを大きく超えるものであり、Alpe Aramiザクロ石かんらん岩はマントル深部から上昇してきたテクトニックブロックであることを支持する。
顕微鏡観察と鉱物化学組成の分析の結果、次のような特徴が得られた。ザクロ石は直径3mm以上の斑状変晶をなし、コアでMgに富み{XMg[=Mg/(Fe+Mn+Mg+Ca)] = 0.700-0.710}、Feに乏しく{XFe[=Fe/(Fe+Mn+Mg+Ca)] = 0.160-0.170}、リム近傍でMgにやや乏しくなり(XMg = 0.690-0.705)、Feにやや富むようになる(XFe = 0.170-0.180)後退変成型の累帯構造を示す。マトリクスは直径1.6mm以下のかんらん石、直方輝石、単斜輝石から主に構成される。直方輝石は比較的均質でAlに乏しく[Al = 0.030-0.040 apfu (O=6)]、ザクロ石斑状変晶の傍に位置する粒子と離れた粒子間で顕著な組成の違いはない。単斜輝石も分析した範囲内でほぼ均質で [Si apfu = 1.960-1.970 (O=6); Mg/(Fe+Mg) = 0.920-0.930]、かんらん石も顕著な組成の違いを示さない[Mg/(Fe+Mg) = 0.90-0.91]。また、マトリクスには角閃石も産するが、非常に細粒な鉱物粒子からなる脈を切るように発達している角閃石がある。さらに、Mgをかなり含むチタン鉄鉱[Mg/(Fe+Mg) = 0.25-0.33]の存在も認められた。その他、スピネル[Mg/(Fe+Mg) = 0.39-0.42; Cr/(Al+Cr) = 0.55-0.58]がかんらん石中の包有物としてチタン鉄鉱とともに産している。
以上のようにマトリクスの鉱物はほぼ均質で、ある平衡時の化学組成を保持していると考えられる。一方、ザクロ石斑状変晶はコアとリムで化学組成が異なり、Mgに富むコアが示す高温のステージとMgにやや乏しいリムが示す相対的に低温のステージに分けられる。そこで、ザクロ石の組成をコアの約0.5mm幅の平均組成とリムから約0.5mm幅の平均組成に分けて、それらを従来型の温度圧力計(ザクロ石-直方輝石温度圧力計、ザクロ石-単斜輝石温度計、ザクロ石-かんらん石温度計、両輝石温度計)に適用して温度圧力条件を算出した。その結果、ザクロ石のコアを用いた場合、ザクロ石-かんらん石温度計が示す約1100℃から両輝石温度計が示す820℃程度まで大きな算出温度の違いが生じた。一方、ザクロ石のリムを用いた場合には、ザクロ石-かんらん石温度計が示す温度は約1000℃まで低下し、他のFe-Mg交換型温度計が示す約950℃と近い温度となった。両輝石温度計が示す温度(820℃程度)とは未だ違いが大きいものの、両輝石温度計の結果を除いた他の地質温度圧力計の示す温度圧力条件の収束の程度はかなり高く、約950℃、4GPaとなる。マトリクスの鉱物の化学組成はそうした温度圧力条件下でザクロ石斑状変晶のリムと平衡化したものであるのだろう。ザクロ石のMgに富むコアと平衡化したときのマトリクスの鉱物の化学組成は改変されてしまっており、それらから得られた温度圧力条件はばらついた結果となったのであろう。それでも、ザクロ石のコアの組成を用いた場合に、ザクロ石-かんらん石温度計が1100℃程の高温条件を与えたのには意味があると考える。かんらん石はかんらん岩中の主要構成鉱物であり、温度圧力条件が変化してもその化学組成の変化は小さいものとなる。その結果、ザクロ石のコアと平衡状態にあったかんらん石の化学組成は現在残っているかんらん石の化学組成と大きく異ならなく、算出される温度もザクロ石のコア形成時のものと大きく異ならないと考える。その際の圧力の制約条件はないが、直方輝石のAl含有量があまり変化していないのであれば、ザクロ石-直方輝石圧力計が適用され、その温度圧力条件は1100℃、4.5-4.8GPa程となる。この値は6GPaには達しないものの、3GPaを大きく超えるものであり、Alpe Aramiザクロ石かんらん岩はマントル深部から上昇してきたテクトニックブロックであることを支持する。

