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[R8P-10]Metamorphic Conditions of Lower Arc Crust-Derived Clinopyroxenite Inferred from Fe–Ni–Cu Minerals in the Kurosegawa Serpentinite Mélange

*Kazuki TSUCHIDA1, Hikaru SAWADA1 (1. University of Toyama)

Keywords:

clinopyroxenite,Fe–Ni–Cu minerals,serpentinization,Kurosegawa Tectonic Belt

大陸下部地殻を構成する超苦鉄質岩は,前弧マントル由来マグマの分化・集積によって形成され,二次的な改変や断片化,深部マントルへの消失を通じて大陸地殻形成史に重大な影響を及ぼしうる.西南日本内帯に分布する黒瀬川帯には,部分的に蛇紋岩化したかんらん岩や輝岩などの超苦鉄質岩ブロックが産する¹.これらの蛇紋岩化作用と交代作用を解明することは,大陸下部地殻を構成する超苦鉄質岩の形成から改変・断片化に至る過程を復元する上で重要である.本研究では,高知県南国市岡豊の黒瀬川帯蛇紋岩露頭に産する単斜輝岩ブロックについて,変質鉱物に伴うFe–Ni–Cu鉱物の産状および化学組成を記載し,その変成環境について検討した.

 高知県南国市岡豊には黒瀬川帯の蛇紋岩メランジュが分布し,蛇紋岩基質中に超苦鉄質岩ブロックが含まれる².本研究では,部分的に蛇紋石化した単斜輝岩と蛇紋岩が明瞭な境界をなして接する約30 cmのブロックを採取し,鏡下観察およびEPMA分析を行った.単斜輝岩部は0.2~1 mmの透輝石を主体とし,粒間に蛇紋石,緑簾石ないし斜灰簾石,含水灰鉄柘榴石,クロムスピネルが認められる.含水灰鉄柘榴石およびクロムスピネルには溶解再沈殿組織が認められ,これらに伴いアワルワ鉱,ヒーズルウッド鉱,自然銅が産する.BSE像では,クロムスピネルにアワルワ鉱・自然銅が,含水灰鉄柘榴石にはヒーズルウッド鉱が包有され,そのリムにアワルワ鉱が認められた.粒径は5~30 μmで,自然銅は約3 wt%のNi,アワルワ鉱は約5 wt%のCuを含む.

 本研究で分析した透輝石組成のAl含有量は0~0.02 wt%と極めて低く,TiO₂–Al(z)図では,沈み込み帯起源の単斜輝石組成³と同様の領域にプロットされる.加えて本試料は蛇紋岩化したかんらん岩と互層をなすことからも,前弧マントル由来マグマから形成された大陸下部地殻の集積岩と考えられる.一般に,ロディン岩化作用において,Caに富む流体から含水灰鉄柘榴石や緑簾石類が形成されることや,初生クロムスピネルの変質部にも含水灰鉄柘榴石を生じることが報告されている⁴⁻⁵.本試料の産状は類似した作用を受けた可能性を示唆する.Caは外部流体および透輝石の局所的溶解により供給されたと考えられる.超苦鉄質岩の初生Fe–Ni–Cu硫化鉱物は,蛇紋岩化作用による再平衡で各元素が再分配される⁶⁻⁷.また,H₂生成に伴うfO₂とfS₂の低下は,ヒーズルウッド鉱,アワルワ鉱,自然銅を晶出させる⁷⁻⁸.本研究でも,これらの鉱物がクロムスピネルや含水灰鉄柘榴石に伴って産することから,蛇紋岩化流体による局所的な元素の再分配が示唆される.特に,ヒーズルウッド鉱が含水灰鉄柘榴石に包有され,アワルワ鉱がそのリム部やクロムスピネルに認められる産状は,還元環境の進行を反映している.この鉱物組合せは,嶺岡帯の蛇紋岩から報告された鉱物種に類似しており⁹,本試料も同様の低fO₂・低fS₂環境を経験したと考えられる.

 以上より,本研究対象の単斜輝岩は,前弧マントル由来マグマから形成された大陸下部地殻の集積岩を原岩とし,その後蛇紋岩化作用およびロディン岩化作用に類似したCa交代作用を伴う還元的変質を受けたと考えられる.本研究の成果は,大陸下部地殻を構成する超苦鉄質岩の形成から改変・断片化に至る過程を解明する上で新たな知見を与えるものである.

引用文献
1:Yokoyama, K. (1987): J. Jpn. Assoc. Mineral. Petrol. Econ. Geol., 82, 319–335.
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5:Schmitt, A. K., et al. (2019): J. Mineral. Petrol. Sci., 114, 117–131.
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9:Kanehira, K. et al. (1975): J. Geol. Soc. Japan, 81, 43–50.