Presentation Information
[S3-01]Rheology of the lower oceanic crust inferred from natural samples
*Kohei Nimura1 (1. National Institute of Polar Research)
Keywords:
Plagioclase,Gabbro,Lower oceanic crust,Oceanic core complex
海洋下部地殻は海洋地殻の大部分を構成し、そのレオロジーは中央海嶺や背弧海盆におけるプレート拡大過程に大きく影響する。主要構成岩石であるハンレイ岩類には、鉱物スケールで結晶化、変形、変成などの記録が保存されている。したがって、海洋下部地殻のレオロジーを理解するためには、天然ハンレイ岩試料から、これらの過程を読み解くことが重要である。さらに、ハンレイ岩類は斜長石、単斜輝石、角閃石、Fe-Ti酸化物などを含む多相岩石であり、各鉱物の変形挙動と相互作用にも注目する必要がある。
海洋下部地殻のレオロジー研究において、斜長石の変形過程は重要な出発点の一つである。斜長石の変形に関する研究は、再結晶組織や組成変化を伴う変形過程の理解から、変形実験に基づく流動則や変形機構図の構築へと発展してきた(Stünitz, 1998, Contrib. Mineral. Petrol.; Rybacki and Dresen, 2004, Tectonophysics)。その後、中央海嶺系および背弧海盆系の海洋コアコンプレックスから採取された変形ハンレイ岩類を対象に、実験研究で得られた知見を天然試料に適用する試みが進められてきた。これらの研究では、斜長石の結晶方位定向配列、粒径変化、相混合、組成変化が、転位クリープから拡散クリープへの遷移や歪局所化、冷却過程における流体関与反応や後退変成作用を記録することが示されてきた(Mehl and Hirth, 2008, JGR Solid Earth; Harigane et al., 2008, Tectonophysics)。
近年では、海洋下部地殻のレオロジーを単一鉱物の流動則だけでなく、天然多相岩石の変形過程として捉える視点が重要になっている。斜長石-輝石系を対象とした変形実験では、変形と鉱物反応の相互作用が細粒多相混合物の形成を促進し、岩石全体の著しい弱化を引き起こしうることが示されている(Mansard et al., 2020, JSG)。また、海洋コアコンプレックスの変形ハンレイ岩類からは、結晶塑性に加えて、脆性変形、流体侵入、溶解-析出クリープが相互に作用し、歪局所化や長期的な弱化に寄与することも示されている(Taufner et al., 2023, JSG)。このように、海洋下部地殻のレオロジー研究は、単相系から多相系へ、さらに塑性変形過程から脆性変形過程へと対象を広げつつある。
このような背景のもと、我々の研究グループは、フィリピン海四国海盆の海洋コアコンプレックスの一つであるMado Megamullionから得られた変形ハンレイ岩類を対象に、研究を進めてきた。Nimura et al.(2025, Isl. Arc)では、斜長石、単斜輝石、角閃石の微細構造、結晶方位、化学組成を統合的に解析し、斜長石の転位クリープと溶解-析出クリープ、角閃石形成を伴う相混合、単斜輝石-角閃石境界における粒界すべりが、剪断帯の発達と海洋下部地殻の弱化に関与することを示した。これらの結果は、中央海嶺と背弧海盆という異なるテクトニックセッティングにおいて、溶解-析出クリープや粒界すべりが、変形ハンレイ岩類の歪局所化に共通して関与する重要な変形過程であることを示している。Nimura et al.(2026, Sci. Rep.)では、Mado Megamullionの変形ハンレイ岩中の斜長石に注目し、劈開面および亜粒界に沿った微小亀裂と亀裂充填組織を、結晶方位解析と化学組成マッピングにより検討した。その結果、斜長石粒内における破壊、反応、物質移動、透水性変化が密接に結びつく可能性が示され、海洋下部地殻の変形過程を考えるうえで、粒内スケールの脆性変形過程も重要であることが示唆された。
本講演では、海洋下部地殻のレオロジーに関する実験研究および天然試料研究を概説し、Mado Megamullionの変形ハンレイ岩類を例に、海洋下部地殻の変形・反応・物質移動過程を検討する。さらに、天然試料研究の今後の方向性と、実験研究や大陸下部地殻研究への展開について議論する。
海洋下部地殻のレオロジー研究において、斜長石の変形過程は重要な出発点の一つである。斜長石の変形に関する研究は、再結晶組織や組成変化を伴う変形過程の理解から、変形実験に基づく流動則や変形機構図の構築へと発展してきた(Stünitz, 1998, Contrib. Mineral. Petrol.; Rybacki and Dresen, 2004, Tectonophysics)。その後、中央海嶺系および背弧海盆系の海洋コアコンプレックスから採取された変形ハンレイ岩類を対象に、実験研究で得られた知見を天然試料に適用する試みが進められてきた。これらの研究では、斜長石の結晶方位定向配列、粒径変化、相混合、組成変化が、転位クリープから拡散クリープへの遷移や歪局所化、冷却過程における流体関与反応や後退変成作用を記録することが示されてきた(Mehl and Hirth, 2008, JGR Solid Earth; Harigane et al., 2008, Tectonophysics)。
近年では、海洋下部地殻のレオロジーを単一鉱物の流動則だけでなく、天然多相岩石の変形過程として捉える視点が重要になっている。斜長石-輝石系を対象とした変形実験では、変形と鉱物反応の相互作用が細粒多相混合物の形成を促進し、岩石全体の著しい弱化を引き起こしうることが示されている(Mansard et al., 2020, JSG)。また、海洋コアコンプレックスの変形ハンレイ岩類からは、結晶塑性に加えて、脆性変形、流体侵入、溶解-析出クリープが相互に作用し、歪局所化や長期的な弱化に寄与することも示されている(Taufner et al., 2023, JSG)。このように、海洋下部地殻のレオロジー研究は、単相系から多相系へ、さらに塑性変形過程から脆性変形過程へと対象を広げつつある。
このような背景のもと、我々の研究グループは、フィリピン海四国海盆の海洋コアコンプレックスの一つであるMado Megamullionから得られた変形ハンレイ岩類を対象に、研究を進めてきた。Nimura et al.(2025, Isl. Arc)では、斜長石、単斜輝石、角閃石の微細構造、結晶方位、化学組成を統合的に解析し、斜長石の転位クリープと溶解-析出クリープ、角閃石形成を伴う相混合、単斜輝石-角閃石境界における粒界すべりが、剪断帯の発達と海洋下部地殻の弱化に関与することを示した。これらの結果は、中央海嶺と背弧海盆という異なるテクトニックセッティングにおいて、溶解-析出クリープや粒界すべりが、変形ハンレイ岩類の歪局所化に共通して関与する重要な変形過程であることを示している。Nimura et al.(2026, Sci. Rep.)では、Mado Megamullionの変形ハンレイ岩中の斜長石に注目し、劈開面および亜粒界に沿った微小亀裂と亀裂充填組織を、結晶方位解析と化学組成マッピングにより検討した。その結果、斜長石粒内における破壊、反応、物質移動、透水性変化が密接に結びつく可能性が示され、海洋下部地殻の変形過程を考えるうえで、粒内スケールの脆性変形過程も重要であることが示唆された。
本講演では、海洋下部地殻のレオロジーに関する実験研究および天然試料研究を概説し、Mado Megamullionの変形ハンレイ岩類を例に、海洋下部地殻の変形・反応・物質移動過程を検討する。さらに、天然試料研究の今後の方向性と、実験研究や大陸下部地殻研究への展開について議論する。
