Presentation Information
[S3-04]Thermal and deformation history of the lithosphere-asthenosphere boundary decoded from spinel lamellae in pyroxene and associated microstructures
*Yuto SATO1, Kazuhito Ozawa2 (1. JAMSTEC, KCC, 2. Univ. Tokyo, AORI)
Keywords:
Exsolution lamella,Lithosphere-asthenosphere boundary,Grain boundary migration,P-t-d path,Mantle xenolith
リソスフェア―アセノスフェア境界(LAB)はプレートテクトニクスにおける「プレートの底」であり、上部マントルに存在する粘性コントラストである。LABにおけるダイナミクスを理解するには、マントル物質の断片であるマントル捕獲岩を用いてレオロジー情報を抽出する物質科学的手法が有効であるが、その変形履歴を復元することは容易ではない。本研究は秋田県男鹿半島一ノ目潟に産するスピネルカンラン岩捕獲岩(8個)を用いて、輝石中に含まれる離溶ラメラに関連する微細構造を解析することで、LABの熱―変形履歴を復元した。捕獲岩中の単斜輝石と直方輝石にはスピネルの離溶ラメラが普遍的に含まれ、冷却過程を経たことが示唆される。これらのスピネルラメラを含む輝石に隣接する鉱物(輝石・カンラン石)には、ラメラの形態に類似するがより丸みを帯びたスピネル包有物(液滴状スピネル)が特徴的に含まれていることが確認された(Takahashi, 1986; Abe et al., 1995)。液滴状スピネルはポーフィロクラスチックな岩石組織を呈し部分溶融由来のガラスを含む試料にのみ見られるが、これらは先行研究(Sato & Ozawa, 2019, 2023)においてLABに相当する約40kmより深い領域に由来すると推定されている。
液滴状スピネルはスピネルラメラと空間的に連続した分布を示し、それぞれのホスト鉱物の界面を跨いで形態を劇的に変化させる。ホスト鉱物の界面形状はラメラを含む輝石の内側へ湾入するが、薄片中において湾入の方向は一定方向に整列し面構造と一致するか低角(0-31度)に斜交する。電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて、スピネルラメラと液滴状スピネルおよびそれぞれのホスト鉱物の格子選択配向(CPO)を分析した結果、ラメラとホストの輝石にはトポタキシーが認められ、ラメラと液滴状粒子は同様の結晶方位を有することが明らかになった。一方、液滴状粒子とそのホスト鉱物との間にトポタキシーは認められなかった。また、ラメラを含む輝石は粒内歪み(Kernel Average Misorientation; KAM)が高いのに対し、液滴状粒子を含む鉱物の粒内歪みは低い。液滴状スピネルを含む領域の輝石の化学組成を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて分析した結果、液滴状粒子はAl含有量の増加を示す輝石のリム部に含まれることがわかった。
上記の観察結果から形成過程を推定すると、液滴状スピネルは冷却過程(~14myrs; Sato & Ozawa 2023)において輝石中に析出したスピネルラメラに由来し、冷却過程に続く加熱過程(~12kyrs; 同上)において輝石に隣接する鉱物との粒界が移動することでスピネルラメラが隣接する鉱物に取り込まれたものであることが示唆された。液滴状スピネルが試料全体に認められることから粒界移動は岩石全体の変形微細構造の発達に寄与していたと考えられる。ラメラと液滴状粒子のホスト鉱物の間に顕著な粒内歪みの差があること、液滴状粒子のホスト鉱物がラメラのホスト鉱物に湾入する方向が岩石にかかる差応力と整合的であることから、岩石変形の最中において粒内歪みの開放を駆動力とする圧力溶解に類似した変形機構によって液滴状スピネルが形成されたことが示唆される。液滴状スピネルは深さ約40km以深のLABに由来する試料にのみ認められ、約40kmより浅いリソスフェリックマントル由来の試料には認められないことから、一ノ目潟下マントルの粒界移動を伴う岩石変形のタイミングを熱履歴と関連付けて議論することが可能である。
液滴状スピネルはスピネルラメラと空間的に連続した分布を示し、それぞれのホスト鉱物の界面を跨いで形態を劇的に変化させる。ホスト鉱物の界面形状はラメラを含む輝石の内側へ湾入するが、薄片中において湾入の方向は一定方向に整列し面構造と一致するか低角(0-31度)に斜交する。電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて、スピネルラメラと液滴状スピネルおよびそれぞれのホスト鉱物の格子選択配向(CPO)を分析した結果、ラメラとホストの輝石にはトポタキシーが認められ、ラメラと液滴状粒子は同様の結晶方位を有することが明らかになった。一方、液滴状粒子とそのホスト鉱物との間にトポタキシーは認められなかった。また、ラメラを含む輝石は粒内歪み(Kernel Average Misorientation; KAM)が高いのに対し、液滴状粒子を含む鉱物の粒内歪みは低い。液滴状スピネルを含む領域の輝石の化学組成を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて分析した結果、液滴状粒子はAl含有量の増加を示す輝石のリム部に含まれることがわかった。
上記の観察結果から形成過程を推定すると、液滴状スピネルは冷却過程(~14myrs; Sato & Ozawa 2023)において輝石中に析出したスピネルラメラに由来し、冷却過程に続く加熱過程(~12kyrs; 同上)において輝石に隣接する鉱物との粒界が移動することでスピネルラメラが隣接する鉱物に取り込まれたものであることが示唆された。液滴状スピネルが試料全体に認められることから粒界移動は岩石全体の変形微細構造の発達に寄与していたと考えられる。ラメラと液滴状粒子のホスト鉱物の間に顕著な粒内歪みの差があること、液滴状粒子のホスト鉱物がラメラのホスト鉱物に湾入する方向が岩石にかかる差応力と整合的であることから、岩石変形の最中において粒内歪みの開放を駆動力とする圧力溶解に類似した変形機構によって液滴状スピネルが形成されたことが示唆される。液滴状スピネルは深さ約40km以深のLABに由来する試料にのみ認められ、約40kmより浅いリソスフェリックマントル由来の試料には認められないことから、一ノ目潟下マントルの粒界移動を伴う岩石変形のタイミングを熱履歴と関連付けて議論することが可能である。
