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[1M10]Adult Learning in protracted refugee situation: Case of Myanmar refugees along Thailand border

*Takafumi MIYAKE1 (1. Shanti Volunteer Association)

Keywords:

Myanmar Refugees,Adult learning,Protracted crisis

背景と定義 
 約1,590万人の難民が5年以上他国に逃れている長期化状況にある(UNHCR 2022)。難民の59%は若者と成人であり、世界全体の成人識字率は 85 % であるのに対して、紛争の影響を受けた国の成人識字率は55 % と低い(UNESCO 2011)。長期化した難民、特に途上国における難民の成人の教育機会に関するデータは不足している (Jacobsen & Fratzke 2016, Mallett & Slater 2016)。本研究では、成人学習の定義をUNESCOの「成人教育に関する勧告」(2015)に基づき、①識字と基礎スキル開発、②職業・技術スキル開発、③シティズンシップ教育の3つを学習領域とし、成人学習は、自己主導型で、柔軟で、行動指向型であるという特徴を有するものとする。
研究課題 
 本研究は、長期化した難民状況における成人学習者が、①いかにして学ぶことを志し、学習の場を選んだのか、②学ぶことの障壁は何か、③学習によってどのような成果を獲得し、生活や意識に変化が生じたのか、将来の希望や計画は何か、を40年間難民状況にあるタイ国境のミャンマー難民を事例に明らかにする。研究方法は、①ミャンマー難民キャンプにおける成人学習プログラムのマッピング、②成人学習者の半構造化インタビューである。
予備調査結果と作業仮説
 タイ国境のミャンマー少数民族地域では、1949年から軍事政権と少数民族勢力との紛争始まり、1980年中頃から戦闘や人権侵害を逃れて人々がタイ側へ流出し、難民は一時15万人を超えた。紛争が長期化し、本国帰還の目途がたたないことから2005年から2013年に米国、欧州諸国、豪国へ9万人が第三国定住をした。2015年総選挙で国民民主連盟(NLD)が圧勝し、少数民族との間で和平合意、難民帰還が始まった。しかし2021年2月に軍事クーデターが発生し、少数民族地域でも紛争が再発し、現在も続いている。再度流出した難民は10万8千人(2025年5月)を数えている。ミャンマー難民キャンプにおける成人学習プログラムとしては、識字、外国語(英語、タイ語)、初等教育未修了者のための同等教育、技術職業訓練(コンピューター、縫製・織物、ラジオ修理等)、生計向上訓練(菜園、酪農、栄養等)、キャンプ内での援助関係の仕事の職能訓練、地域課題学習(地雷回避、マラリア予防、家庭内暴力等)が、援助組織(NGO等)の支援を受けて住民組織(女性グループ、青年グループ等)によって実施されている。
 研究課題①いかにして学ぶことを志し、学習の場を選んだのか、については、学習ニーズとの妥当性、学習による喜び、自己発達、自尊感情、キャンプ内での無為な時間、利他主義を想定している。 
 研究課題②学ぶことの障壁は何か、については、学習成果の活用機会の少なさ、キャンプ外への移動、就労の禁止、識字能力の不足、水平的な学習機会は多いが垂直的な学習機会は限られていること、学習者側の制約(時間、仕事、家事、育児、障害、高齢)、成人学習に対する認識の低さ、タイおよびミャンマー政府双方における教育課程認証の欠如、職業訓練における性別役割を想定している。
 研究課題③学習によってどのような成果を獲得し、生活や意識に変化が生じたのか、将来の希望や計画は何か、については、学習者のエンパワメント(基礎・技術スキルの向上、教養・知識の習得、自己実現、誇りや自尊感情の向上)ならびに地域コミュニティである難民キャンプの改善(社会関係資本の強化含む)を想定している。

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