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[スポーツ文化-B-07]「見るスポーツ」における能力主義の検討(哲)「するスポーツ」における不可能性との対比から

*Ai Tanaka1 (1. Tokyo Gakugei Univ.)
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本研究の目的は,「見るスポーツ」における能力主義とはなにか,ということについて,「するスポーツ」がもつ不可能性との対比を通して問い直すことである。「する・見る・支える・知る」スポーツのうち,「するスポーツ」は,様々な身体的・能力的条件に規定され,限界づけられる。このことは,すべての人がそれに携われるわけではない,ということを示している。また,このような「するスポーツ」の限界が,スポーツと能力主義との結びつきを自明視させているとも言えるだろう。そうであるなら,身体的能力の影響を受けない形で,「見る・支える・知る」スポーツも育てていくことは,多様な属性をもつ人々が,豊かにスポーツにかかわるために必要とされることであろう。
 しかし,「見るスポーツ」は,ファン・サポーター・マスメディア等の影響に着目するなら,むしろ能力主義を強化しているようにも見える。したがって,多様なスポーツ文化を育てるためには,「見るスポーツ」の能力主義的側面と,その社会的な影響を改めて捉え直す必要がある。このことによって,より豊かなスポーツ文化を育てることに対し,「見る」ことがいかに貢献しえるのかについて議論することが可能となる。
 考察に際して,(1)「する」ことの不可能性について,現象学的観点から考察を加え,(2)優れたパフォーマンスを「見る」ことと能力主義との関係について,スポーツ哲学領域に蓄積されている諸文献に依拠しながら検討を加える。(1)及び(2)を通して,「するスポーツ」をも含めたスポーツにおける能力主義とは何かを示し,「見るスポーツ」の理想的なあり方を議論するための手がかりを得たい。

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