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[競技スポーツ-A-12]段違い平行棒における「高棒内向き懸垂前振り後方伸身宙返り低棒支持」の図式技術解明に向けた動感志向構造分析(方,スポーツ運動学)

*Minori Iseki1, Tsuyoshi Nakamura2 (1. University of Tsukuba, 2. Tsukuba Univ.)
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近年,段違い平行棒ではD難度以上の「棒間移動技」(以下,「移動技」とする)が高く評価される。この移動技は,他の移動技や放れ技と連続することで組み合わせ加点を獲得できる。そのため,トップランクの選手は移動技や放れ技の連続を演技に取り入れることで高得点獲得を目指している。この移動技に関わる連続を演技に組み込む上で重要な技が,〈高棒内向き懸垂前振り後方伸身宙返り低棒支持〉(以下,「パク宙返り」とする)である。この技は,現在多くの選手が習得を目指している。しかし,この技の習得過程には多くのつまずきがみられ,習得に苦労する選手やその指導に難渋している指導者は少なくない(井関ら,2023)。それにも関わらず,この技について取り上げた研究は少ない現状にある。そこで本研究では,発生運動学の立場から熟練者の〈パク宙返り〉の図式技術解明に向けた基礎資料獲得を目的とする。具体的には,この技の熟練者に対して,実施に関わる動感志向性の特徴と習得までの動感意識の様相変動を問う「借問」(金子,2002,p.524)を実施することで,この技の「コツ身体知」(金子,2007,p.327)を明らかにしようとする。この借問分析の結果,熟練者は抜き・あふり局面において,一定の「抜き位置」に身体を反らずに締めた姿勢で鋭く短い時間で抜き,「あふり位置」に向かって一気に背中側が丸くなるようにあふっていることがわかった。また空中局面では,足先を止める意識で回転抑制させ,素早く身体を締めながら反ることで上体のみ回転させており,支持局面では身体を締め,肩帯と胸部で低棒を押すように支持することで,握り変え動作を行いやすくしているということが明らかになった。本研究の成果は,パク宙返りの習得を目指す選手やその指導者に対して,習得の近道となる貴重な資料を提供するとともに,この技の指導方法論構築に向けた基礎資料になると考える。

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