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[生涯スポーツ-SA-1]The inheritance of sport as “benefit of inconvenience” culture and development of human potential

*Junji Nakanishi1 (1. Ritsumeikan University)
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<演者略歴>
筑波大学大学院体育研究科修了後、筑波大学準研究員(文部技官)・助手、福岡教育大学教授などを経て、2012年4月より立命館大学産業社会学部教授。専門は体育経営学、スポーツ経営学、スポーツマネジメント論。日本体育・スポーツ経営学会副会長。主著は『はじめて学ぶスポーツマネジメントの基礎と実践』(みらい、2024年)。
人間中心の超スマート社会(Society 5.0)とそれに伴うスマートシティ構想は、DX化によって、人間のWell-beingの向上をめざしている。しかし、こうした便利で効率的な社会は本当に、人々のWell-beingな生活を実現することができるのだろうか。むしろ、「人間中心の社会」とはいえ、DX化(≒人間の手間を省くの)と引き換えに、人間の主体性や思考力・創造力、および身体能力などを退化させてしまう「人間的貧困」(宇沢、1989)をもたらし、人間的可能性(幸福を追求し健康で文化的な生活)が淘汰される「リスク社会」(Beck、1986=1998)へと変貌していくのかもしれない。
 それゆえ、こうした人間崩壊社会におけるスポーツの「文化」的な役割(価値)の再考は、21世紀生涯スポーツ社会の創新にとっても喫緊の課題である。いってみれば、スポーツは、「身体運動の制御・表現」(伊藤、1974)の楽しみや喜びを自発的に求めていく点に独自の意味があり、「不便で面倒くさい運動に自ら進んで挑戦しなければ得られない価値(益)」がある「不便益」(川上、2019)文化なのである(中西ほか、2020)。
 本発表では、「スポーツの価値」を総論的に提示しながら、次代に向けて、スポーツという「不便益」文化を継承し、人間的可能性の開発との好循環を創出する必要性について議論を深めたい。

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