Presentation Information
[12人-口-07]20世紀初頭の日本における健康イメージの創造『通俗衛生圖解』から読み解く健康観
*Masashi Watanabe1 (1. Mukogawa Women's University)
『通俗衛生圖解』(以下『圖解』)は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックでにわかに注目を集めた「スペイン風邪」が最も激しく流行した1918年に発行された。そこには今日につながる感染症対策の原初的な光景をみることができる。
本発表は衛生思想の啓発のための文化装置である『圖解』を読み解くことによって、近代日本における健康イメージがどのように創造されたのかを明らかにしようとするものである。
『圖解』は大日本国民教育会編による縦118センチ・横62センチの掛軸であり、同会が1917年に編纂した『日常衛生と伝染病予防心得』の理解を図るための付圖として作成したものである。
『圖解』の構成は上段の「健康へ行く道」、下段の食物分析表に二分される。最上段には「健康へ行く道」を起点に、終点の「無病息災」までが鉄道路線図を模して示されている。駅にあたるところには「早起」「清潔」「適度の運動」「規律的生活」「禁酒禁煙」「休養」「伝染病の予防」「迷信を去れ」「公衆衛生」と並ぶ。「健康へ行く道」の下、『圖解』全体の三分の二を占めるスペースにおいて、視覚に訴える絵解きが展開される。
『圖解』は衛生をめぐる行動規範を可視化してみせ、教えこむための啓蒙的掛図である。そこでは、養生論という19世紀前半までの身体観と、衛生という19世紀後半以降の新たな身体観が、前者をベースにしつつ、後者を接木している。
絵解きでは、衛生のために否定すべき事象を取り上げ、反転させた地点に価値を与える、すなわち健康イメージをもたせるという語り方がとられる。
『圖解』によって、人びとは「不潔」を知り、対極の「清潔」の側に自らを位置付け、衛生思想に基づく新たな「無病長寿」=健康のイメージを内面化していったのである。
本発表は衛生思想の啓発のための文化装置である『圖解』を読み解くことによって、近代日本における健康イメージがどのように創造されたのかを明らかにしようとするものである。
『圖解』は大日本国民教育会編による縦118センチ・横62センチの掛軸であり、同会が1917年に編纂した『日常衛生と伝染病予防心得』の理解を図るための付圖として作成したものである。
『圖解』の構成は上段の「健康へ行く道」、下段の食物分析表に二分される。最上段には「健康へ行く道」を起点に、終点の「無病息災」までが鉄道路線図を模して示されている。駅にあたるところには「早起」「清潔」「適度の運動」「規律的生活」「禁酒禁煙」「休養」「伝染病の予防」「迷信を去れ」「公衆衛生」と並ぶ。「健康へ行く道」の下、『圖解』全体の三分の二を占めるスペースにおいて、視覚に訴える絵解きが展開される。
『圖解』は衛生をめぐる行動規範を可視化してみせ、教えこむための啓蒙的掛図である。そこでは、養生論という19世紀前半までの身体観と、衛生という19世紀後半以降の新たな身体観が、前者をベースにしつつ、後者を接木している。
絵解きでは、衛生のために否定すべき事象を取り上げ、反転させた地点に価値を与える、すなわち健康イメージをもたせるという語り方がとられる。
『圖解』によって、人びとは「不潔」を知り、対極の「清潔」の側に自らを位置付け、衛生思想に基づく新たな「無病長寿」=健康のイメージを内面化していったのである。
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