Presentation Information
[02社-口-14]公共的空間のスポーツ利用が生む軋轢の実態と公共性の萌芽日本スカイランニング協会公認レース「太郎山登山競走」におけるコミュニティ・アクションリサーチの成果をもとに
*Shinichi Chubachi
森林や里山の「トレイル」のスポーツ利用が広がり、他目的の利用者、住民、管理者、地権者などとの間で軋轢が生じている。道路、公園、海岸、河川など他の公共的空間でも同様に、スポーツ利用によって軋轢が起きていることはスポーツのプロモーションを阻害する。しかし、軋轢は利害関係者の単純な対立と捉えられがちで、発生や変容の実態についての実証的な研究が乏しく、解決を導き出す理論は確立されていない。
こうした課題に取り組むため本研究は、長野県上田市で毎年5月に開催される日本スカイランニング協会公認レース「太郎山登山競走」の実行委員会が取り組んだ軋轢解決の過程を、コミュニティ・アクションリサーチの手法で調査した。発生から解決に至るまでの動的で間主観的な状態を記述し、軋轢の状態を変容させた利害関係者間の相互作用を分析した。その結果をもとに、軋轢の解決を目指して利害関係者が互いの行為と意見を解釈する過程で、既存の価値や規範を問い直す対話が創造され、よりよい論拠を求めあう中で市民的公共性が形成されたことを議論した。
スポーツの価値は多様な論拠に基づいて形成されるが、不特定多数の人々が織りなす公共的空間では、スポーツの価値が他の価値や関心事に劣後すると解釈される場合がある。太郎山登山競走の軋轢はその事例である。スポーツの価値を共有する組織は、そうした意見の複数性を乗り越えるため、不特定多数がアクセスできる空間や言説をあえて開いて、スポーツの価値を改めて吟味する共同学習的な方策を選択することができる。そうすることによって、たとえ完全な合意の形成が阻まれたとしても、一定の利害関係者にとって共約可能なスポーツの価値が再解釈・再構築されるだけでなく、不同意が表明されにくくなり、他の利害関係者の判断が信頼されるようにもなる。この過程は、スポーツによる公共性の実態だと考えられる。
こうした課題に取り組むため本研究は、長野県上田市で毎年5月に開催される日本スカイランニング協会公認レース「太郎山登山競走」の実行委員会が取り組んだ軋轢解決の過程を、コミュニティ・アクションリサーチの手法で調査した。発生から解決に至るまでの動的で間主観的な状態を記述し、軋轢の状態を変容させた利害関係者間の相互作用を分析した。その結果をもとに、軋轢の解決を目指して利害関係者が互いの行為と意見を解釈する過程で、既存の価値や規範を問い直す対話が創造され、よりよい論拠を求めあう中で市民的公共性が形成されたことを議論した。
スポーツの価値は多様な論拠に基づいて形成されるが、不特定多数の人々が織りなす公共的空間では、スポーツの価値が他の価値や関心事に劣後すると解釈される場合がある。太郎山登山競走の軋轢はその事例である。スポーツの価値を共有する組織は、そうした意見の複数性を乗り越えるため、不特定多数がアクセスできる空間や言説をあえて開いて、スポーツの価値を改めて吟味する共同学習的な方策を選択することができる。そうすることによって、たとえ完全な合意の形成が阻まれたとしても、一定の利害関係者にとって共約可能なスポーツの価値が再解釈・再構築されるだけでなく、不同意が表明されにくくなり、他の利害関係者の判断が信頼されるようにもなる。この過程は、スポーツによる公共性の実態だと考えられる。
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