日本化学会 第105春季年会 (2025)

開催予定のシンポジウム

開催予定のシンポジウムの情報を随時掲載いたします。掲載時点の情報であり今後変更する可能性があります。

 

企画詳細

イノベーション共創プログラム(CIP)

気候変動、自然破壊、資源の枯渇、人口動態の変化、感染症の蔓延など、我々人類が直面する社会課題は年々多様化し、深刻さを増しています。これらの課題解決には化学をコアとする革新的技術の開発と実装が不可欠であり、我々化学者には、分野の垣根を越えて知恵と技術を結集し、共に挑戦することが求められています。本プログラムでは、イノベーションの共創をキーワードに13のテーマを設定し、持続可能な未来を創造するための議論と産学連携発掘の場を提供し、共創の精神を育むことを目指しています。またCIPポスターではイノベーション共創講演賞を新設し、優れた研究発表を表彰します。
 
シンポジウム名称
 
研究開発を変革するラボオートメーション技術の最前線
近年データ駆動科学が台頭してきています。データ駆動科学というとAI関連技術に目が向きがちですが、実際の研究開発の現場においては基となるデータの収集がボトルネックとなっているケースが少なくありません。そのようななか、従来法の限界を超える実験データ大量収集法として注目されているのがラボオートメーションです。また単純な高速化にとどまらず、コロナ禍を経た働き方・研究スタイルに変革をもたらす基盤技術としても期待されています。本セッションでは、将来のAI技術活用を念頭に置いた自動化技術やコンビナトリアル技術に焦点を当て、これらの最新研究成果と活用法について議論します。
PCP/MOFからCOFそしてHOFへの新展開
多孔性配位高分子(Porous coordination polymer, PCP)や金属有機構造体(Metal-organic framework, MOF)は、その規則構造と細孔がもたらす機能性により、様々な応用検討がなされています。近年では、共有結合で形成されたネットワーク構造をもつ共有結合性有機構造体(Covalent organic framework, COF)、さらには水素結合により有機分子が連結して生成する水素結合性有機構造体 (hydrogen bonded organic framework: HOF) の開発も盛んに進められ、それらが示す特異な機能が注目を集めています。本セッションでは、これらPCP/MOF、COF、HOFの研究動向と最新の研究成果をご紹介いただき、今後の展開を議論する場としたいと考えています。
AI×自動計算×自動実験による化学研究のデジタル革新
『AI×自動計算×自動実験』を主題として,AI,ハイスループットシミュレーション,ロボティクス,自動・自律実験分野の最前線で活躍する研究者を講師に迎え,最新の研究成果について解説して頂きます。2023年から2024年のわずか1年間に,Google DeepMind社をはじめとする巨大企業や卓越研究者をリーダーとする国際コンソーシアムが巨額の資金援助・調達を受けて,革新的なデータ駆動型材料研究手法を開発しており,この分野でのトップの座を巡る競争が激化しています。本企画では,各講演者からの問題提起を通じて,聴講者一人一人が「化学研究のデジタル変革」や「計算科学と自動実験の融合」がもたらすデータ駆動型化学研究のあり方とその可能性について深く考える機会を提供し,本分野での後れが指摘されている我が国において,今何をすべきかを考える気付きの機会としたいと思います。
マテリアルズ・インフォマティクスの実践的応用:多元素化による未踏機能の創出
化学分野の材料開発はこれまで経験と勘に裏打ちされた実験的手法が中心的な役割を果たしてきましたが,新物質の発見から実用化までに長い時間とコストを必要とします。蓄積された多くのデータ・情報を駆使して所望の構造・材料候補を導き出すデータ駆動型科学,マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の重要性が益々高まるなか,材料開発現場では,概念や理論の構築に留まらず,MI戦略を実践に移す段階にきました。本セッションでは,多元素化による未踏機能の開拓と材料創製インフォマティクスを主眼に,ハイスループット実験・計算やデジタル技術を駆使する,MI応用の新潮流に焦点をあて最新の研究成果について講演頂きます。
実用化に近づく次世代太陽電池とさらなる基盤技術開発
次世代太陽電池の開発は、カーボンニュートラル社会実現、エネルギー自給率の向上、温室効果ガス排出規制対応の鍵となる技術として注目されています。このセッションでは、次世代太陽電池の最新の研究動向とその実用化に向けた取り組み、および、さらなる基盤技術の開発について紹介します。材料開発や基本原理の開拓から、耐久性向上、製造プロセスのスケールアップなど、基礎および実用化に向けて克服すべき課題に焦点を当てます。さらに、現在進行中の実証実験や商業化の進展状況について具体的な事例を紹介し、将来の展望を示します。
カーボンニュートラル実現のためのカーボンリサイクル技術
2020年10月の「2050年カーボンニュートラル」宣言を契機として、2030年度までの温室効果ガス削減目標を2013年度比で46%削減とし、さらには2050年には完全にカーボンニュートラルを達成すべく大胆な方針も示されております。これらの目標達成のためには、再生可能エネルギーを用いた水素製造、CO2の水素化や有価物への触媒的変換だけでなく、CO2の直接回収に加え、資源としての廃プラスチックの回収と再利用に代表されるカーボンリサイクル技術との連携が必要となります。本セッションでは、これらの研究について世界をリードする研究者に紹介いただきます。カーボンニュートラル達成のためのカーボンリサイクルについてどんな挑戦が必要か、活発な議論の場の提供を考えております。
電解液の革新に基づく新電池開発
リチウムイオン電池等の蓄電池における電解液は、イオン輸送に加えて界面形成という重要な役割を担っており、電池の性能を決定する重要な構成材料です。近年、これまでに使用されてきた一般的な電解液とは異なる溶媒和構造や電気化学機能、イオン輸送メカニズムを有する革新的な電解液開発が活発に行われています。新規電解液により、電池の高エネルギー密度化や高安全化、大電流特性の向上などが期待されています。本セッションでは革新的な電解液の開発や、その機能発現機構の解明、次世代電池への適用などについて議論します。
熱エネルギー工学の最前線とカーボンニュートラルへの展望
カーボンニュートラル実現に向けて、熱利用分野の脱炭素シフトと共に、一次エネルギーの約6割に達するとされている未利用熱エネルギーの有効活用も、カーボンニュートラル実現には避けられない課題です。これらの課題解決を支える熱エネルギー工学は、基礎理論と計測技術の深化と高度化、材料探索の高速化、社会実装の取組などにより大きく発展しています。本セッションでは、カーボンニュートラル実現のために、熱エネルギー工学分野で活発に研究を展開されているアカデミアや企業の先生方にご講演を頂くことで、この分野の最新動向、課題、将来の展望などについて広く議論します。
バイオ医薬品の最前線を支えるスマートケミストリー
低分子医薬品では満たされなかったニーズを満たす新時代の医薬品として期待され、抗体医薬や核酸医薬そして細胞などのバイオ医薬品の新薬上市が近年急増している。今回は、抗体医薬・ADC、核酸医薬に加え、昨年度のアンケートで要望の多かったゲノム編集やmRNA医薬に関する講演も盛り込みました。本セッションでは、これらバイオ医薬品の開発・生産を支える先端材料や技術に関する化学とバイオ医薬品の安全性評価や社会実装に関して議論します。
デジタルヘルスケアの最前線
各種デバイスを活用した健康データの記録や、人工知能(AI)や機械学習の活用による診断・治療の支援を行う技術開発は、近年長足の進歩を遂げ大きな注目を集めています。これらデジタルヘルスケア技術の開発には、代謝産物、腸内細菌叢、ゲノム情報などの生体情報に関するビッグデータを活用して、個々人の体質にあった生活習慣やケア方法を提案することが重要となってきました。また生成される大量のデータは、ヒトの健康情報、モニタリングデータ、診断結果、治療効果など、その膨大な量と多様な情報を活用することで、個々の健康管理や医療プロセスの向上を通じてよりよい地域社会に貢献すると期待されています。本セッションでは、これら最新の技術やその事業化に向けての取り組みについて話題を提供します。
未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略
近年、分子レベルでの疾患の発症メカニズムの理解により、従来の手法では治療が困難であったターゲットに対する新たな医薬品や治療法の開発が進んでいます。その背景として、創薬モダリティの選択肢の著しい増加や、情報科学技術の進化等、従来の医薬品開発に対する画期的な手法の確立が挙げられます。このセッションでは、新たな戦略を通じて未来の医療に貢献するバイオベンチャーの代表の方々にご講演をお願いし、議論します。
フレキシブル分子性結晶材料ソフトクリスタルが切り拓く⾰新的技術開発
ソフトクリスタルは規則正しい結晶構造と周期構造を持つ安定な構造体であり、結晶性を保ちながらも、特定の弱い刺激によって容易に構造変換や相転移を起こすという特異的な性質を持ちます。その結晶内分子構造・配列だけでなく、結晶の形を変形することで、光学特性が変わることがわかってきています。一方、結晶の形やその並びを制御するエンジニアリングは、メタマテリアルとしての応用が期待できます。本セッションでは、分子性結晶材料における最先端の基礎研究やメタマテリアルを基盤とした応用研究を開しているアカデミア・企業の先生方にご講演をいただくことで、この材料の新たな応用展開の可能性を探ることを目指します。
持続可能社会を創出する高分子科学
石油化学は高分子科学工業を生み出し、衣食住にわたって我々の生活を豊かにしてきた一方で、近年では温室効果ガス排出やプラスチックごみの環境拡散といった新たな問題を生み出しています。高分子科学におけるサーキュラーエコノミーは、これら諸問題に対する革新的解決策創出の重要な切り札と考えられます。CO2やバイオマスなどから合成される新規材料や、樹脂を再利用するための技術、生分解される材料等、様々な研究成果が生まれつつあり、高分子科学は大転換期を迎えようとしています。本セッションでは、持続可能社会を創出する高分子科学の研究前線を紹介すると共に、これからの高分子科学の在り方について議論します。
 

中長期テーマシンポジウム

中・長期戦略に基づくシンポジウムを春季年会実行委員会と学術研究活性化委員会の合同企画として継続的に実施しています。 本年会では次の6テーマを実施予定です。
 

シンポジウム名称

マテリアルズ・インフォマティクスが拓く無機機能材料

シーケンシャル物質化学:最先端分析法によるブレイクスルー

生命科学と化学の交差領域を探る2

流れを制する分子機能デザイン

カーボンニュートラルを志向した電解技術および電極触媒開発の最前線

次世代分子システム化学のフロンティア―協奏的機能発現の素過程的理解

 
マテリアルズ・インフォマティクスが拓く無機機能材料
多量の計算・実験データに基づくマテリアルズ・インフォマティクス(MI)による機能材料の開発研究に期待が集まっている。特に多数の元素の組み合わせや結晶構造が考えらえる無機材料は、電池、発光、触媒、光電変換、熱伝導などの機能を最大化するために多くの材料とプロセスの検討が必要であり、MIによるアプローチが有効である。本企画では、各分野の計算、実験研究において先端を走っている新進気鋭の研究者を講演者として招き、今後の無機材料化学分野におけるMIの発展に向けた課題を議論する。
シーケンシャル物質化学:最先端分析法によるブレイクスルー
化学者が扱う物質はより複雑さを増し、狙いの構造を精密に合成する手法の開発だけでは不十分で、得られた物質や化合物におけるキャラクタリゼーションの重要性が増している。未知・既知を問わず、物質の構造・配列を正確に分析することは、科学や技術のブレイクスルーにもつながる。本シンポジウムでは、独自の解析法や計測技術を駆使した最新の研究について、実りある討論を行う。
生命科学と化学の交差領域を探る2
「化合物ー生物ー環境の相互作用を読み解く科学」と題する連続企画の第5回シンポジウムです。今回もケミカルバイオロジーのトップ研究者から最新の話題提供をいただきます。さらに、生物の環境応答の視点から生物時計研究の最新動向を紹介します。参加者は、最先端の研究情報に触れ、新たな共同研究の可能性について議論できます。
流れを制する分子機能デザイン
物質やエネルギーの流れを制御することは、物性や触媒など様々な機能発現を狙う上で重要な課題となっている。その解決に向けて、無機、錯体、界面、超分子など幅広い化学分野において、異方的かつ階層的な構造設計を施した材料開発が進められている。本企画では、研究者独自の目線で拓いてきた異方的な構造と機能の相関に関する最新の成果を共有することで、流れを能動的に制御可能な新材料開発のための指針について議論する。
カーボンニュートラルを志向した電解技術および電極触媒開発の最前線
化石資源に依存しないクリーンな水素製造あるいは二酸化炭素再資源化の手段として、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用した電解技術が注目され、高効率システムや新規電極触媒の開発などが盛んに進められている。しかし例えば水電解では、各システムに対して固体高分子膜やアニオン交換膜の開発も重要であり、かつそれぞれに特化した触媒系の開発も必須となるなど、開発項目は多岐に渡る。そこで本シンポジウムでは、これらの電解技術を俯瞰しながら、最先端の電極触媒の開発動向を共有し議論する場を提供する。
次世代分子システム化学のフロンティア―協奏的機能発現の素過程的理解
分子が複雑な集合体を形成することにより新たな分子機能の発現を目指す―それが次世代分子システムであり,そのフロンティアでは,従来の分子単体での機能に特化した化学では到達できない新規機能物質の開発に対して分野横断的な新たなアプローチが展開されている。分子を組み合わせることで1+1以上の新たな機能を創出するためには,それらの協奏的連動が不可欠である。本シンポジウムでは,高機能性を有する協奏的新機能の生成へ向けた分子機能活性化の理解と分子デザインに関して議論を行う。特に生体分子などの高度で複雑な協奏的分子機能に関して、分子機能が発現する瞬間的な時空間状態を直接観測する計測技術、それを理論的にモデリングしデザインする理論技術、そして現実に新機能を創出する実験技術を独自に有する研究者を一同に集め、最新の研究成果の講演およびパネルディスカッションを行い、次世代分子システム化学の将来展開を討論する。