第37回福島県作業療法学会

特別講演

 

特別講演

 

 

ルックスケアから考えるこれからの作業療法―参加力の視点より―

座長:田島 明子 氏(医療創生大学)
講師:石橋 裕 氏(東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 教授)

所属・社会活動

東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 教授
ルックスケア研究会 理事
日本老年療法学会 理事
東京都作業療法士会 理事

研究活動

参加力あるいはルックスケアに焦点をあてた評価尺度の開発
社会参加支援に関する研究
作業遂行に関する研究

要旨
 近年の作業療法は、国際生活機能分類(ICF)や生活行為向上マネジメント(MTDLP)などを基盤に、対象者がしたい、あるいはする必要のある生活行為を中心に支援を展開することが広く普及し、あらゆる分野で一般的となった。心身機能への支援においても生活行為との関連が重視されるようになり、作業療法は以前にも増してシステマティックな実践へと発展している。一方で、化粧、洋服選び、ネイル、ヘアスタイルといった身だしなみに関わる生活行為への支援報告は、依然として少ないように感じられる。これらの行為は、単に見た目を整えるという課題にとどまらず、自己表現や社会的アイデンティティの形成・維持と深く結びついている。対象者自身も作業療法士自身も、その重要性にはうすうす気づいていながら、目標として挙げられた作業に付随する周辺的なものとして扱われがちであり、時間や環境の制約、あるいは支援者側の技能不足も重なって、実際の支援には至らないことが少なくない。こうした状況への取り組みとして、演者は「参加力」という概念を提唱している。参加力とは、身体・心理・環境といった個々が有する資源を、実際の社会参加につなげていく統合的な力であり、生活リテラシーや健康行動の選択といった要素が複雑に絡み合いながら立ち上がるものと捉えている。また、参加力は固定的な特性ではなく状況に応じて変化しうる状態であり、作業療法士により支援することが重要と考えている。身だしなみの可能化が社会参加の機会を高めることは、蓄積された事例報告が示唆するところである。作業療法ルックスケア支援モデル(OT-LCSuM)は、こうした事例報告を統合・解釈することを通じて生まれた実践モデルであり、ルックスケア支援を体系的に社会参加につなげるプロセスを示している。今後の課題は、このモデルの効果をより広く示すために、エビデンスの質を高めた研究方法論へと昇華させていくことにある。
 本講演では、まずなぜ身だしなみに関わる生活行為が支援対象になりにくいのかを考えたうえで、OT-LCSuMを題材に、作業療法が支援すべき生活行為をどのように捉える必要があるのか、また、作業療法士はどのような知識や技能を習得する必要があるのか、この2点を中心に議論したい。