講演情報

[R1-04]宝石質かんらん石(ペリドット)の産地鑑別

*三浦 真1、Palke Aaron2、Jollands Mike3、Sun Ziyin2、Vertriest Wim4、桂田 祐介1、猿渡 和子1、三河内 岳5 (1. GIA Tokyo、2. GIA Carlsbad、3. GIA New York、4. GIA Bangkok、5. 東大・総研博)

キーワード:

かんらん石、ペリドット、産地鑑別、FTIR、LA-ICP-MS

宝石品質のかんらん石はペリドットという名で、8月の誕生石として広く知られている。古代エジプトでは太陽の石として歴代のファラオの装飾品や副葬品として使用された歴史があり、古くから珍重されてきた宝石の一つである。大きさ・質・色合いとともに現代最高級のペリドット産地としてはミャンマー・パキスタンが知られており、特に大きな結晶は高値で取引されている。この様なペリドットの産地情報は付加価値および考古学的な価値を考慮する上で重要となる。本研究では様々な産地・鉱床の宝石質かんらん石を顕微鏡観察、および赤外分光・LA-ICP-MSを用いた微量元素組成分析を行い、特定のペリドットに関して産地鑑別が可能かどうか検討を行った。
かんらん石は地球のマントルの主要構成鉱物の一つであり、地表で見られるかんらん石の大半は玄武岩中のマントル捕獲岩・捕獲結晶として見出される。この様な玄武岩中から見出されるペリドットの産地としては米国アリゾナ・ベトナム・中国等が知られており、産出量は多いものの結晶は小さいものが殆どで、色合いも黄色みがかった緑のものが多い傾向にある。一方で超マフィック岩体中の熱水鉱床、ある種のドロマイトスカルン鉱床からは比較的大きなペリドットの結晶が稀に見つかる(e.g., Bouilhol et al., 2012)。この様なペリドットは産出量が少ないものの、緑色が濃く品質もよい事から珍重されている。ミャンマー・パキスタン・エジプトのペリドットがこの鉱床起源となる。また、ノルウェーのペリドットは蛇紋岩化を免れたマントルかんらん岩中から比較的大きな結晶として見つかる様である(Garmo 2013)。
顕微鏡下では、ミャンマー産のペリドットは特徴的に主に磁鉄鉱からなるラメラ様内包物を多く含んでいる。またパキスタン産のものはチューブ状の主にルドウィヒ石からなるホウ酸塩鉱物の内包物を含むことがある。また文献によるとエジプト産のものは主に塩水からなる流体包有物を含む様である(Kurat et al., 1993)。
FTIRを用いた赤外分光解析を行ったところ、玄武岩・マントル捕獲岩起源はTi4+欠陥、熱水・スカルン鉱床起源およびかんらん岩体起源のものでは主にSi空孔欠陥に関連する水酸基の吸収が見られ、特徴が系統的に異なっている事がわかった。またパキスタン産のものは特徴的にホウ素が関連した欠陥による吸収が見られる。これは明らかに形成環境の違いを反映している。またLA-ICP-MSを用いた微量元素組成においても、特に鉄・マグネシウム・ホウ素・マンガン等の元素組成において、玄武岩・マントル捕獲岩起源のものを除けば各産地毎に異なる特徴を示す事がわかった。
以上の事から、顕微鏡観察および赤外分光・微量元素組成解析によってミャンマー・パキスタン・エジプト・ノルウェーといくつかの特殊な玄武岩起源のペリドットは産地鑑別が可能であると考えられる。一方で、米国アリゾナ・ベトナムといった玄武岩・マントル捕獲岩起源のペリドットは構造欠陥および化学的な特徴が類似していることから、産地鑑別は簡単ではないと思われる。

References:
Bouilhol, P., Burg, J.P., Bodinier, J.L., Schmidt, M.W., Bernasconi, S.M., Dawood, H. (2012) Gem olivine and calcite mineralization precipitated from subsuction-derived fluids in the Kohistan arc-mantle (Pakistan). The Canadian Mineralogist, Vol. 50, pp. 1291-1304. Garmo, T.T. (2013) Olivine und Eklogite aus Åheim – und jetzt auch noch Diamanten!, Mineralien Welt, 24 (2), pp.81-86.Kurat, G., Palme, H., Embey-Isztin, A., Touret, J., Ntaflos, T., Spettel, B., Brandstätter, Palme, C., Dreibus, G., Printz, M. (1993) Petrology and geochemistry of Peridotites and associated vein rocks of Zabargad Island, Red Sea, Egypt. Mineralogy and Petrology, Vol. 48, pp. 309-341.