講演情報
[R1-10]新潟県糸魚川市産ラピスラズリ
*松原 聰1、門馬 綱一1、徳本 明子1、草葉 陽子1、今井 裕之2、下林 典正3、伊藤 加奈子4、伊藤 大貴4 (1. 国立科博、2. 金石造形家、3. 京都大・理、4. 無所属)
キーワード:
ラピスラズリ、藍方石、方ソーダ石、糸魚川
糸魚川の海岸、姫川や青海川の河床は、翡翠礫を探す人の姿が絶えない。翡翠以外にもさまざまな鉱物を含む礫があり、採集対象として、軟玉(緑閃石、エカーマン閃石などからなり、稀にコスモクロア輝石を伴う)、含コランダム岩、ぶどう石岩(ダイアスポア、新潟簾石などを含む)などがある。また、古くから青色系鉱物も気付かれていて、糸魚川石(青色の翡翠輝石と思われていた)、“コバルト翡翠”(青色のオンファス輝石)、デュモルティエ石が知られている。ラピスラズリは、海岸の礫として古くから拾われていたが、『外国産のものが石拾いイベントでまかれたもの』と考えられ、興味をもたれることはなかった(今では、イベントでまかれた石はすべて翡翠であったと判明している)。さらにその一部は、肉眼鑑定でデュモルティエ石と同定されていたようである。 今回確認されたラピスラズリは、地元の石愛好家が姫川およびその支流で採集した2個の大礫、別の愛好家が採集した小礫、さらに別の愛好家が採集した小片の4個である。そのうちの3個は藍方石(アユイン、haüyne)から、残り1個は方ソーダ石(ソーダライト、sodalite)から構成されるものであった。以上は、EDS、XRDのデータと薄片による光学的データから同定された。これらとは別に、糸魚川の海岸で採集された小礫2個が、ラピスラズリとして間違いないものであった(松原の肉眼鑑定による)。また、国立科学博物館のプレスリリース(2026年3月)以降、フォッサマグナミュージアムに鑑定依頼で持ち込まれた小礫の中にもラピスラズリが10点以上確認されたとのことである(小河原孝彦私信)。
ラピスラズリは、方ソーダ石[Na8(Al6Si6O24)Cl2]や、瑠璃(ラズライト、lazurite)、藍方石、黝方石(ノゼアン、nosean)といった方ソーダ石の構造中の(Al6Si6O24)ケージを共通して持つ鉱物が主な構成鉱物とされてきたが,実際には瑠璃と藍方石が主となるものが一般的である。なお,ラピスラズリは宝石名であり,特に黄鉄鉱が適度に伴われたものを青金石とよんでいる(実際にはほとんどがそうなので,ラピスラズリを青金石とほぼ同義語として使われることがある)。 有名なアフガニスタン産ラピスラズリの主成分鉱物は、長らく瑠璃とされてきたが、瑠璃の再定義(Sapozhnikov et al., 2021)によって、模式産地はロシアのバイカル湖付近、理想化学組成はNa7Ca(Al6Si6O24)(SO4)(S3)·H2Oとなった。その結果、多くのアフガニスタン産の“瑠璃”は藍方石[Na6Ca2(Al6Si6O24)(SO4)2]ということになってしまった。両者の明瞭な差はSの量と状態であるが,今回は,化学分析(EDS)によって、量だけを検討することで簡易的に同定してみた.Al+Si=12にした時、Sが3以上なら瑠璃、それ以下なら藍方石とした。糸魚川産のもの(3試料)の合計25点分析した結果、Sが3を超えた分析点は1ヶ所あったが、平均値では明らかにS<3になり、藍方石の範疇に入った。なお、Al+Si=12にした場合、Na+Caが8に満たないことがあるのは、藍方石の分析では知られている。一方、糸魚川産方ソーダ石は理想化学成分に極めて近い。
糸魚川産の藍方石は、黄鉄鉱のほか、多量の珪灰石を伴うのが特徴である。その他の共存鉱物は、方解石、灰礬石榴石、透輝石、曹長石、チタン石、燐灰石が認められ、スカルンのような鉱物群である。一方、方ソーダ石の共存鉱物は、ダイアスポア、シデロフィル雲母、ゴナルド沸石であり、アルカリ深成岩ペグマタイト産の方ソーダ石でよく伴われる霞石、灰霞石、エジリン輝石、カリ長石、方沸石は認められなかった。
藍方石を主とする糸魚川産ラピスラズリ(研磨面)(横約56mm)
ラピスラズリは、方ソーダ石[Na8(Al6Si6O24)Cl2]や、瑠璃(ラズライト、lazurite)、藍方石、黝方石(ノゼアン、nosean)といった方ソーダ石の構造中の(Al6Si6O24)ケージを共通して持つ鉱物が主な構成鉱物とされてきたが,実際には瑠璃と藍方石が主となるものが一般的である。なお,ラピスラズリは宝石名であり,特に黄鉄鉱が適度に伴われたものを青金石とよんでいる(実際にはほとんどがそうなので,ラピスラズリを青金石とほぼ同義語として使われることがある)。 有名なアフガニスタン産ラピスラズリの主成分鉱物は、長らく瑠璃とされてきたが、瑠璃の再定義(Sapozhnikov et al., 2021)によって、模式産地はロシアのバイカル湖付近、理想化学組成はNa7Ca(Al6Si6O24)(SO4)(S3)·H2Oとなった。その結果、多くのアフガニスタン産の“瑠璃”は藍方石[Na6Ca2(Al6Si6O24)(SO4)2]ということになってしまった。両者の明瞭な差はSの量と状態であるが,今回は,化学分析(EDS)によって、量だけを検討することで簡易的に同定してみた.Al+Si=12にした時、Sが3以上なら瑠璃、それ以下なら藍方石とした。糸魚川産のもの(3試料)の合計25点分析した結果、Sが3を超えた分析点は1ヶ所あったが、平均値では明らかにS<3になり、藍方石の範疇に入った。なお、Al+Si=12にした場合、Na+Caが8に満たないことがあるのは、藍方石の分析では知られている。一方、糸魚川産方ソーダ石は理想化学成分に極めて近い。
糸魚川産の藍方石は、黄鉄鉱のほか、多量の珪灰石を伴うのが特徴である。その他の共存鉱物は、方解石、灰礬石榴石、透輝石、曹長石、チタン石、燐灰石が認められ、スカルンのような鉱物群である。一方、方ソーダ石の共存鉱物は、ダイアスポア、シデロフィル雲母、ゴナルド沸石であり、アルカリ深成岩ペグマタイト産の方ソーダ石でよく伴われる霞石、灰霞石、エジリン輝石、カリ長石、方沸石は認められなかった。
藍方石を主とする糸魚川産ラピスラズリ(研磨面)(横約56mm)

