講演情報
[R1P-05]ナノテラスBL09Wにおける白色硬エックス線CT測定の鉱物学的試料への応用
*安武 正展1、松本 恵2、奥村 聡2、松野 淳也3、森田 朋代2、渡辺 華奈2、高瀬 大河2、堀田 修平2 (1. 高輝度光科学研究センター、2. 東北大学、3. 京都大学)
キーワード:
放射光X線、X線CT、サンゴ、地球外物質、火山噴出物
[はじめに]NanoTerasuは、東北大学青葉山キャンパスに新設された3GeV放射光施設である。同施設に設置されたビームライン(BL)、BL09Wはウィグラー光源を有し、現時点で同施設における唯一の白色硬X線イメージングが可能なBLである。本BLでは22 mm視野幅を持つ広視野CT撮影とマイクロCT撮影が可能であり、2026年度より共用利用が開始され広く利用促進が図られているフェイズにある。 CT撮影は非破壊での内部構造観察をはじめとして、空隙率測定、クラックなどの走行解析などに有効な手法であり鉱物学的試料にも広く応用されている。
一方で、BL09Wにおいて鉱物学的試料への応用例はほぼ無い状況であり、その実用性や最適な測定条件は十分調査されているとは言い難い。そこで我々は、数種の鉱物学的試料を対象としてBL09WにてCT撮影を実施し、その実用性と課題について評価を行った。
[試料と分析手法]本研究では、10mm程度のサンゴ、2mm程度のSaratov隕石、および1mm以下のRyugu粒子、有珠火山噴出物から採取した輝石斑晶(以下有珠輝石)の撮影を行った。広視野CT撮影(視野幅22mm、画素サイズ:4.9 µm、露光時間:50 ms/枚)はサンゴを用いて実施した。マイクロCT撮影(視野幅2.2mm、画素サイズ:500 nm、露光時間:100 ms/枚)はサンゴ、Saratov隕石を用いて実施した。高分解能マイクロCT撮影(視野幅1.1mm、素サイズ:250 nm、露光時間:400 ms/枚)は有珠輝石、及びRyugu粒子にて実施した。利用した白色X線の実効エネルギーは、30-40 keV程度である。サンゴのみ広視野撮影後、全体像を確認したのちにマイクロCT検出器へと切り替えて中心部の局所撮影を実施した。
[結果と考察]広視野CT撮影の結果、良好なCT像が得られ、サンゴの空隙構造を解析する上で十分な像質であると判断できた。試料周辺部にはビームハードニングに由来するとみられるコントラスト不均一が確認されたが、試料内部では骨格構造と思われる放射状構造が確認でき、マイクロCT撮影による局所撮影では、骨格内の微小空隙や骨格間のマクロ空隙内に残存するプランクトン遺骸と推察されるものまで鮮明に捉えることができた(図1)。マイクロCT撮影の結果、Saratov隕石ではケイ酸塩鉱物を主体とする断面では良好な像が得られた(図2)。ポーフィリティックオリビンパイロキシンに類似するコンドリュールの斑晶組織や微小な空隙も捉えることができている。一方で、一部にはカマサイトと推測されるX線吸収が極めて強い物質が含まれており、これらの相が集中する領域では強い放射状アーティファクトが発生した。これは周囲との間に著しいX線吸収の差があることに起因すると考えられる。高分解能マイクロCTでは、有珠輝石、Ryugu粒子いずれにおいても試料全体で非常に明瞭な再構成像が得られた。CT像では数ミクロンの微小な空隙が明瞭に確認でき高分解能観察が実用的であることが示される(図3)。これらの試料には磁鉄鉱あるいは磁硫鉄鉱とみられる結晶が含まれるが、Saratov隕石のような顕著なアーティファクトの発生は抑制されている。これは試料サイズが1mm以下と小さいため、十分な透過X線が得られているためであると考えられる。
[まとめ]サンゴのような多孔質物質であれば22mm視野幅の広視野CT撮影が十分に応用可能であることが示された。場合によりマイクロCT検出器への切り替えにより広視野観察により得られたデータから興味領域をその場で拡大して観察することも可能である。ケイ酸塩鉱物のような軽元素主体の物質に対しては、2mm視野幅のマイクロCTを用いた高精細3次元観察が可能である。数百ミクロンのサイズでは、さらに高倍率な撮影が応用可能であり少量の鉄質鉱物を含む場合でも高精細な3次元観察を行う事ができる。一方で、サンゴやSaratov隕石の測定例のように、試料によるX線吸収が強いケースでは白色X線特有のアーティファクトが生じるケースも確認された。このアーティファクトへの対処法として、露光時間とのトレードオフとなるが、より吸収の強いエネルギーフィルタを用いて、ピークエネルギーを高エネルギーシフトすることで軽減できると考えられる。これらの結果は、試料構成鉱物に応じた適切なエネルギー調整、サンプルサイズ調製を行うことで、BL09Wの白色硬X線CTが鉱物学的試料の3次元的解析に極めて強力なツールとなることを示している。
一方で、BL09Wにおいて鉱物学的試料への応用例はほぼ無い状況であり、その実用性や最適な測定条件は十分調査されているとは言い難い。そこで我々は、数種の鉱物学的試料を対象としてBL09WにてCT撮影を実施し、その実用性と課題について評価を行った。
[試料と分析手法]本研究では、10mm程度のサンゴ、2mm程度のSaratov隕石、および1mm以下のRyugu粒子、有珠火山噴出物から採取した輝石斑晶(以下有珠輝石)の撮影を行った。広視野CT撮影(視野幅22mm、画素サイズ:4.9 µm、露光時間:50 ms/枚)はサンゴを用いて実施した。マイクロCT撮影(視野幅2.2mm、画素サイズ:500 nm、露光時間:100 ms/枚)はサンゴ、Saratov隕石を用いて実施した。高分解能マイクロCT撮影(視野幅1.1mm、素サイズ:250 nm、露光時間:400 ms/枚)は有珠輝石、及びRyugu粒子にて実施した。利用した白色X線の実効エネルギーは、30-40 keV程度である。サンゴのみ広視野撮影後、全体像を確認したのちにマイクロCT検出器へと切り替えて中心部の局所撮影を実施した。
[結果と考察]広視野CT撮影の結果、良好なCT像が得られ、サンゴの空隙構造を解析する上で十分な像質であると判断できた。試料周辺部にはビームハードニングに由来するとみられるコントラスト不均一が確認されたが、試料内部では骨格構造と思われる放射状構造が確認でき、マイクロCT撮影による局所撮影では、骨格内の微小空隙や骨格間のマクロ空隙内に残存するプランクトン遺骸と推察されるものまで鮮明に捉えることができた(図1)。マイクロCT撮影の結果、Saratov隕石ではケイ酸塩鉱物を主体とする断面では良好な像が得られた(図2)。ポーフィリティックオリビンパイロキシンに類似するコンドリュールの斑晶組織や微小な空隙も捉えることができている。一方で、一部にはカマサイトと推測されるX線吸収が極めて強い物質が含まれており、これらの相が集中する領域では強い放射状アーティファクトが発生した。これは周囲との間に著しいX線吸収の差があることに起因すると考えられる。高分解能マイクロCTでは、有珠輝石、Ryugu粒子いずれにおいても試料全体で非常に明瞭な再構成像が得られた。CT像では数ミクロンの微小な空隙が明瞭に確認でき高分解能観察が実用的であることが示される(図3)。これらの試料には磁鉄鉱あるいは磁硫鉄鉱とみられる結晶が含まれるが、Saratov隕石のような顕著なアーティファクトの発生は抑制されている。これは試料サイズが1mm以下と小さいため、十分な透過X線が得られているためであると考えられる。
[まとめ]サンゴのような多孔質物質であれば22mm視野幅の広視野CT撮影が十分に応用可能であることが示された。場合によりマイクロCT検出器への切り替えにより広視野観察により得られたデータから興味領域をその場で拡大して観察することも可能である。ケイ酸塩鉱物のような軽元素主体の物質に対しては、2mm視野幅のマイクロCTを用いた高精細3次元観察が可能である。数百ミクロンのサイズでは、さらに高倍率な撮影が応用可能であり少量の鉄質鉱物を含む場合でも高精細な3次元観察を行う事ができる。一方で、サンゴやSaratov隕石の測定例のように、試料によるX線吸収が強いケースでは白色X線特有のアーティファクトが生じるケースも確認された。このアーティファクトへの対処法として、露光時間とのトレードオフとなるが、より吸収の強いエネルギーフィルタを用いて、ピークエネルギーを高エネルギーシフトすることで軽減できると考えられる。これらの結果は、試料構成鉱物に応じた適切なエネルギー調整、サンプルサイズ調製を行うことで、BL09Wの白色硬X線CTが鉱物学的試料の3次元的解析に極めて強力なツールとなることを示している。

