講演情報

[R1P-11]蛍光X線分析法によるグロッシュラーガーネットの産地鑑別の可能性

*工藤 志緒1 (1. (株)日立ハイテクアナリシス)

キーワード:

ガーネット、蛍光X線、主成分分析

蛍光X線分析法によるグロッシュラーガーネットの産地鑑別の可能性
(株式会社日立ハイテクアナリシス) 工藤 志緒  

1. はじめに
蛍光X線分析は非破壊で元素分析が可能であり,重要文化財や裁判試料の分析に利用されている.三辻ら[1]は古代土器のSr-Rbプロットを,Sunら[2]はパライバトルマリンのSr-CuおよびSr-Pbプロットを用いて産地推定を行っている.本研究では,産地の異なるグロッシュラーガーネットを対象とし,蛍光X線分析で得られた特性X線強度データを用いて産地推定の可能性を検証した.

2. 測定試料
 
測定には産地の異なる市販のガーネットとしてマリ産5個,モザンビーク産5個,アメリカ(ネバダ)産3個,アメリカ(カリフォルニア)産4個,パキスタン産5個,ミャンマー産5個を用いた.また蛍光X線強度を規格化することを目的に標準サンプルとしてLGC Standards GmbH製 XRF TEL-1とFluxana GmbH & Co. KG製FLX-Z4を用いた.なお,XRF TEL-1,FLX-Z4共にSiO2を主成分とするガラス標準である.

3. 装置および測定方法 
装置は日立ハイテクアナリシス製のエネルギー分散型蛍光X線分析装置EA1400を用いた.測定条件を以下に示す.サンプルの前処理は行わず,直接,測定面に一次X線を照射し,各元素の蛍光X線の強度(cps)を測定した.同日・同一装置・同一条件で標準サンプルであるXRF TEL-1,FLX-Z4の蛍光X線強度も測定し,サンプルの強度を標準サンプルの強度で除することで規格化を行った.
管電圧    :15 kV(Na~Cr),50 kV(Mn~)
管電流    :300 µA(フィルタOFF時),700 µA(Pb用)
        1000 µA(Cr用,Cd用)
1次フィルタ  :OFF(15 kV),Cr用(15 kV),
        Pb用(50 kV),Cd用(50 kV)
コリメータ径 :φ5 mm(サンプルの大きさによりφ3 mm)
測定雰囲気  :真空
測定時間   :各フィルタ条件につき300秒

4. 結果と考察
蛍光X線分析の結果,各種ガーネットからMg,Al,Si,S,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Zn,Ga,Sr,Y,ZrおよびNbに由来する特性X線が検出された.そのうち,Mg,V,Cr,Mn,Fe,Zn,Yの規格化強度値を変数として主成分分析を行った結果を図1に示す.主成分分析に用いた元素は,グラフの矢印(各元素の寄与率)の大きいものを選択した.横軸は各元素の第一主成分得点(PC1)で,縦軸はその第2主成分得点(PC2)である.このグラフから,寄与率はPC1で34.4%,PC2で24.2%であった.マリ産はFeおよびMg,ミャンマー産はVおよびYの寄与により他産地と区別される傾向が認められた.PCAスコアプロットにおいて,各産地が異なる領域に分布することが示された

5. まとめ
本研究で用いたガーネットでは,Mg,V,Cr,Mn,Fe,Zn,Yの規格化強度値を用いた主成分分析により,産地ごとの分類が可能であることが示唆された.蛍光X線分析法は,宝石の鑑別に多く用いられるLA-ICP-MSと比較して微量元素検出能力では劣るものの,非破壊かつ簡便に測定できるという利点を有する.また,本研究の結果から,定量分析を行わず規格化強度値を用いた場合でも,産地分類に有用な情報が得られる可能性が示された.産地鑑別のスクリーニングを目的とした利用が期待される.

参考文献
[1] 三辻 利一:古代土器の産地を探る,化学教育 第32巻 第5号(1984)
[2] Ziyin Sun, Michael Jollands, and Aaron C. Palke: Chemical Analysis in the Gemological Laboratory: XRF and LA-ICP-MS,Gems & Gemology, Winter 2024, Vol. 60, No. 4
[3]R Core Team (2018). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. URL https://www.R-project.org/.