講演情報

[R1P-16]長崎県対馬市対州層群に産するファーデン水晶の成因と産状に関して

*今井 裕之1、岡田 敏朗2、長瀬 敏郎3、青木 隆弘4 (1. 金石造形、2. 福岡石の会、3. 東北大学総合学術博物館、4. なし)

キーワード:

ファーデン水晶、ファーデン、対州層群

はじめに 
 ファーデン水晶は板状など特異な形態をもつ石英として有名であり,アルプス山脈やパキスタン,アメリカ合衆国などで産出が報告されている.しかし,これまでに本邦での産出の報告はない.今回,長崎県対馬市でファーデン水晶の産出を確認したので,対馬市でのファーデン水晶の産状と組織について報告する. ファーデン水晶の名前は,ドイツ語の「Fadenquarz」を語源としている.「faden」はドイツ語で「糸」または「紐」を意味しており,透明な結晶を貫く白い線を示している.ファーデン水晶は岩石のクラック中に形成される.ファーデン水晶を産するクラックは一般に見られる熱水の通り道の脈と異なるため,違いを強調する意味で,本論文では「脈(vein)」を用いずに「クラック(crack)」を用いた.
実験方法 
 現地にてファーデン水晶の産状と形成環境を調査した.調査で採取した試料から偏光顕微鏡観察用の薄片を作成し組織を観察した.各鉱物の組成はEPMA(EDS)を用いて分析した.
結果並び考察 
 対馬には第三紀中新世のデルタおよびその周辺に堆積した堆積物からなる対州層群が分布している.対州層群は堆積構造が発達した砂岩,砂岩泥岩互層,泥岩から構成され,海底地すべり堆積物を伴っている.対州層群はデイサイトの貫入やデイサイト質凝灰岩を介在している.対州層群は,下部層と中部層,そして上部層の3つの層に分けられてきた.20万分の1地質図厳原を参考にしてみると,ファーデン水晶のクラックは下部層と中部層の層境界付近に多くみられる.ファーデン水晶のクラックは乱流堆積物の砂泥互層中の砂質部に発達する.地層中でのファーデン水晶のクラックの連続性は悪い.砂泥互層の泥質部では発達が悪くなる.ファーデン水晶の伸びの方向はクラックの開き方向と同じ方向を向く時と異なる方向を向く時の2つのタイプがある.結晶の中心部にファーデンは位置し,この部分には多くの包有物がみられ,これにより白く見える(図1).ファーデンを形成する包有物は面上に並んでいる.しかし,面と言っても平面ではなく凹凸のある面であり,この面の間隔は数μmである.対馬に産出するファーデン水晶の内部組織はファーデン部分と透明部部分に分けられる.対馬産ファーデン水晶のファーデンの形状は直線に近いものが多いが,ファーデンの方向が曲がったり,ギザギザになったり,途切れることもある.また,クラックの端から端まで結晶が続いてない試料もある.クラックに対するファーデンの方向も垂直から斜めに交わるものまでクラックによって様々である.そして,ファーデンクラック中の石英の伸長方向は決まっておらず,結晶学的な規則性は見られない.さらに,これに加えてファーデンの方向は石英のc軸に対して様々な角度で交わり,その角度によって形状が変化する.堆積物の続成中において岩石のシリカ成分が溶けた間隙水がファーデン水晶の形成に寄与したと考えられる.この溶液はクラック内部に染み出して,ファーデン水晶を成長させたと考えられる.ファーデンの形成時にはクラックは一定の速度で開き続けなければならず,石英の成長速度とクラックの開く速度の比,開く方向が組織に影響する.ファーデン水晶は砂泥互層に特有な組織と考えられる.
Keywords: Faden quartz, Faden, Taishu Group