講演情報

[R1P-19]茨城県上曽トンネルから産出した鉱物, 特にクリソベリルの産出について

*大木 良弥1、河野 雅英2、阿依 アヒマディ3、門馬 綱一4、浜根 大輔5、片山 裕貴1 (1. なし、2. 石の百年館、3. Tokyo Gem Science LLC、4. 国立科学博物館、5. 東大・物性研)

キーワード:

上曽トンネル、クリソベリル(金緑石)、筑波地方

上曽トンネルは、茨城県筑波山の北東約5kmに位置し、茨城県桜川市と石岡市を結ぶ全長3. 5kmほどのトンネルで、2025年9月に開通した。桜川市側では、ペグマタイトの産地で様々な鉱物を産出した山の尾(真壁町山尾)の地下を通り、また石岡市側では、小判石(球状花崗閃緑岩)の産地である吉生付近を通ることから注目を集めた。本研究では、トンネルから掘削されて桜川市側、石岡市側それぞれの残土置き場に集積された廃石について調査を行った。
 桜川市側の廃石は、山の尾と同一の岩体で、真壁石として採掘されている細粒黒雲母花崗岩(加波山花崗岩類)が主であった。山の尾ほどの大規模なペグマタイトは確認できなかったが、幅数十cmほどの脈状ペグマタイト・アプライトや円形の小さなペグマタイトを確認した他、捕獲岩として変成岩(黒雲母片岩)、閃緑岩、斑糲岩などを確認した。また断層帯にあったと思われる破砕岩を少量確認した。
 石岡市側の廃石からは、掘削初期に粒の粗い斑状黒雲母花崗岩(筑波花崗岩類)の他、変成岩(ホルンフェルスや黒雲母片岩)を、後期に桜川市側と同等の細粒黒雲母花崗岩(加波山花崗岩類)を確認した。ペグマタイトは、筑波花崗岩類、加波山花崗岩類の両方から確認できたが、大規模なものはなかった。
 産出した岩石から、ルーペで判別可能な鉱物の同定を行ったが、肉眼的特徴で確実に同定できる鉱物以外は、EDX、XRD、ラマン分光などの機器分析を併用した。
 加波山花崗岩類やそのペグマタイトから以下の鉱物を確認した。石英、’カリ長石’、曹長石、白雲母、‘黒雲母’、鉄礬柘榴石、緑柱石、クリソベリル、フッ素燐灰石、緑泥石(シャモス石)、緑簾石、セリウム褐簾石、セリウムモナズ石、トール石、ジルコン、ゼノタイム、Y-Ti-Nb系鉱物(イットリウムエシキン石またはイットリウムユークセン石)、Petscheckite様鉱物、パラウラノフェン(旧称βウラノフェン)、方解石、灰束沸石、濁沸石、蛍石、自然蒼鉛、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱、輝水鉛鉱、 硫砒鉄鉱。以上の多くは山の尾からも産出が報告されていたが、クリソベリル、トール石など未報告の鉱物もあった。特にクリソベリルは、本邦では岐阜県の苗木地方と福島県の石川地方のペグマタイト、栃木県足尾山地の片麻岩中から(北野, 2023)に続く産出となる。
 上曽トンネルのクリソベリルは帯緑黄色、透明~半透明の最大5ミリ長の塊状または板状結晶で、ラマン分光法(Horiba XploRA Plus @GSTV宝石学研究所)により、ラマンスペクトルのピークパターンが既存のクリソベリルに一致することで同定した。532nmレーザーを使用して観察された主要ピークは473, 514, 542, 634, 773, 927cm-1で、Burshtein et al. (1989)で検討されたクリソベリルの対称種によれば、各ピークが6~8cm-1ほど低エネルギー側へシフトしているものの、634, 773, 927cm-1はAgに、514, 524cm-1はB2gに、473cm-1はB3gに帰属できる。またEDXにて元素分析(Na~)を行った結果、BeOを除く元素についてO=3で規格化、BeOの原子数=1、Al+Fe+微量元素(Sn, Ga, Ta)の原子数=2としたときの実験式はBe(Al1. 97, Fe0. 02, (Sn, Ga, Ta)0. 01)Σ2O4となった。
 特徴的なのは、加波山花崗岩類と筑波花崗岩類の両方、またそれらのペグマタイトからパラウラノフェンが比較的多産した点である。これらは花崗岩の割れ目やペグマタイトの小空隙に、しばしば方解石や灰束沸石を伴い産出したことから、ペグマタイト後期の生成物、または末期の熱水活動に伴う産物と考えられる。
 また石岡市側で確認したホルンフェルスや黒雲母片岩中に、岩石形成後の熱水活動によると思われる灰束沸石脈が産出した他、黒雲母片岩の一部から苦土電気石が産出した。ホルンフェルスにはパッチ状にスカルンが入っており、珪灰石や灰礬柘榴石が産出した。

【参考文献】
北野 一平 (2023) 栃木県西部足尾山地に産する片麻岩に含有されるクリソベリルの産状報告意義. 日本地質学会第130年学術大会講演要旨 (online), 130, T2-P-10.Burshtein, Z., Henderson, D. O., Morgan, S., and Silberman, E. (1989) Vibrational spectra of chrysoberyl (BeAl₂O₄). Journal of Physics and Chemistry of Solids, 50, 1095–1100.