講演情報

[R1P-21]宮崎県西臼杵郡日之影町小河内産のA席を占有するCaを含むパーガス閃石の新データ

*坂野 靖行1、岡田 敏朗2、上原 誠一郎3 (1. 産総研、2. 福岡石の会、3. 九州大学・博物館)

キーワード:

パーガス閃石、フッ素カンニッロ閃石、固溶体、日之影町小河内、宮崎県

角閃石に含まれるCaは通常M4席(Bグループ陽イオン席)だけを占めるため,M4席以外の席をCaが占める組成データは誤った分析値と考えられていた。しかしHawthorne et al. (1996)はフッ素カンニッロ閃石[理想式ACaBCa2C(Mg4Al)T(Si5Al3)O22F] を新種として記載し,CaはM4席だけでなくA席も占有しうることを明らかにした。しかしながら確実にA席を占有するCa(ACa)を含む角閃石の組成データの報告例は極めて少ない。我々は宮崎県西臼杵郡日之影町小河内よりA席を占有するCaを含むカルシウム角閃石を見出したので,この角閃石のEPMA分析値を報告する。
 試料は岡田ら(2026)が報告した水酸コンドロ石を含む露頭より得られた。それは主に透輝石に富む部分と金雲母に富む部分から構成される。透輝石に富む部分の金雲母の量は金雲母に富む部分から離れるにしたがって減少する。角閃石は金雲母粗粒結晶・水酸コンドロ石混在部と透輝石に富む部分の境界部に多く見られた。角閃石や透輝石は金雲母によって部分的に置換され,金雲母集合体中に残晶として産するので,透輝石・角閃石→金雲母の順に形成されたと考えられる。
 角閃石は淡褐色から緑褐色で最大長径5 cm程度の柱状もしくは他形を示す。角閃石はAl-rich部とAl-poor部から構成される。Al-poor部はAl-rich部中に脈状に産する。Al-poor部は初生的角閃石であるAl-rich部が熱水変質等で組成が改変された二次的角閃石と解釈できる。
 以下の二つの方法を用いて角閃石のEPMA分析値から実験式を導いた:(1) OH + F + Cl = 2 apfuを仮定して24(O, OH, F, Cl),(2) (OH, F, Cl) = (2 – 2Ti) apfuを仮定して24(O, OH, F, Cl)。その結果,(2)の方法だと,Al-rich部の総陽イオン数が全鉄=Fe2+の場合16.034-16.097(平均値16.064)apfu,全鉄=Fe3+の場合15.987-16.045(平均値16.009)apfuとなり一部の分析値は理想値16を超える。したがって(Mg, Fe2+) + 2(OH)- = Ti4+ + 2O2-置換の影響は大きくないと判断し,(1)の方法で実験式を導いた。またSrはCaよりもより大きなイオン半径を有するので SrはCaよりも優先的にA席に入ることを仮定した。
 Al-rich部の平均値(n = 20)の全鉄=Fe2+の場合と全鉄=Fe3+の場合の実験式はそれぞれA(Na0.523K0.163Ca0.251Sr0.054)Σ0.991B(Ca1.912Mn0.002Fe2+0.086)Σ2.000C(Mg4.232Fe2+0.068Al0.590Ti0.104Cr0.006)Σ5.000T(Si5.901Al2.099)Σ8.000O22W[(OH)1.201F0.777Cl0.022]Σ2.000 及び A(Na0.522K0.163Ca0.200Sr0.053)Σ0.938B(Ca1.956Mn0.002Mg0.042)Σ2.000C(Mg4.175Fe3+0.154Al0.562Ti0.103Cr0.006)Σ5.000T(Si5.882Al2.118)Σ8.000O22W[(OH)1.203F0.775Cl0.022]Σ2.000となり,Feの価数にかかわらずCaの一部(及びSr)はA席を占有し, A(Ca,Sr)を含むパーガス閃石に対応する。
 一方,Al-poor部の平均値(n = 5)の全鉄=Fe2+の場合と全鉄=Fe3+の場合の実験式はそれぞれA(Na0.635K0.096Ca0.137Sr0.037)Σ0.905B(Ca1.918Fe2+0.082)Σ2.000C(Mg4.392Fe2+0.021Al0.527Ti0.056Cr0.004)Σ5.000T(Si6.276Al1.724)Σ8.000O22W[(OH)1.319F0.669Cl0.012]Σ2.000 及び A(Na0.634K0.096Ca0.104Sr0.036)Σ0.870B(Ca1.947Mg0.053)Σ2.000C(Mg4.329Fe3+0.103Al0.508Ti0.056Cr0.004)Σ5.000T(Si6.262Al1.738)Σ8.000O22W[(OH)1.321F0.667Cl0.012]Σ2.000であり,Al-poor部もA(Ca,Sr)を含むパーガス閃石となる。