講演情報

[R2-03]新規高圧鉱物相で発見されたユニークな結晶構造

*土屋 卓久1、JIang Jiajun1、梶原 萌1 (1. 愛媛大・地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:

高圧相、結晶構造、第一原理計算

近年、従来知られていなかった興味深い結晶構造をもつ新たな鉱物高圧相が、相次いで発見されている。高圧相構造は通常、常圧下で安定な異なる化学組成物質の結晶構造と同一である場合が多いが、これらの幾つかは常圧安定物質には例を見ない全く新しい結晶構造である。このことは、高圧下では従来想定されていた以上に多様な結晶構造が実現し得ることを示している。本研究では、こうした新規高圧鉱物構造のうち、最近、著者らのグループで研究を進めてきた例を紹介する。
① SiO2のLi2ZrF6型相 (Tsuchiya and Nakagawa, 2022):α-石英を非静水圧条件下で圧縮することにより出現する相であり、常圧下のLi2ZrF6と同一の結晶構造をとる。この構造はα-石英と同じく三方晶系に属し、高圧含水ケイ酸塩の一つphase Dとも共通する結晶構造である。隕石衝突痕に見られるラメラ構造の衝撃下での状態との報告がなされており (Otzaen et al., 2023)、石英の圧力誘起非晶質化と関連する可能性もある。さらなる加圧により、二酸化ケイ素の極超高圧相として知られるFe2P型構造へ転移するが、エネルギー的にはコーサイトやスティショバイトに対して準安定である。
② CaSiC2O7 (Aprilis et al., under rev; Tsuchiya and Isobe, 2026):約120 GPaで実験的に合成された高圧ケイ酸塩炭酸塩という新たなカテゴリーに属する高圧鉱物。第一原理計算により、ケイ酸塩と炭酸塩または二酸化ケイ素との反応によって、より低圧でも安定化し得ることが示された。本相は、2つの4配位CO4多面体が頂点共有した構造ユニットから成る、これまで知られていなかった新奇な結晶構造をもつ。地球深部における炭素の主要なホスト相となる可能性が高い。
③ α-MgSiO4H2 (Shao et al., 2024; Jiang and Tsuchiya, under rev):Phase Hとして実験的に合成されていた高圧含水マグネシウムケイ酸塩の安定結晶構造である。この構造も従来知られていなかったものであり、従来想定されていたPhase Hの構造モデルとは異なり、水素結合の対称化を生じない。このため、弾性異方性が大きく低下することが明らかとなった。
④ CaSiO4H2 (Takaichi et al., submitted):常圧下で安定なスオルナイトの高圧相転移が約10 GPaの圧力で実験的に発見され、第一原理計算によってもポスト・スオルナイト相の安定圧力領域が確認された。このポスト・スオルナイトは、高圧型の6配位SiO6多面体と低圧型の4配位SiO4多面体の両方を含む、新奇な結晶構造を有する。高密度含水マグネシウムケイ酸塩(DHMS)についてはこれまで多数の研究例があるが、高密度含水カルシウムケイ酸塩(DHCS)としては本相が初めての例となる。