講演情報

[R2-08]強い残留磁化を示すSi含有磁鉄鉱の微細組織と磁束分布

*大川 真紀雄1、安東 淳一1、富岡 尚敬2 (1. 広島大・院理工、2. JAMSTEC・高知コア研)

キーワード:

天然磁石、Si含有磁鉄鉱、電子線ホログラフィー

磁鉄鉱は天然に存在する鉱物の中で最も強い自発磁化を有するが、純粋な磁鉄鉱は保磁力が極めて低いため、通常は強い残留磁化を保持できない。しかし、天然には強い残留磁化を有する磁鉄鉱主体の鉱石が存在し、天然磁石と呼ばれている。天然磁石の強い残留磁化は、磁鉄鉱中の不純物元素や微細組織の発達による保磁力の増大に起因すると考えられている。現在、有力なモデルとして、磁赤鉄鉱(γ-Fe2O3)化に伴う離溶組織の形成(Type-1)と、チタノマグネタイト系列におけるイルメナイト(FeTiO3)ラメラの析出による磁性粒子の細分化(Type-2)が知られている。本研究では、従来Type-1に分類されてきた天然磁石の高保磁力発現機構を再検証することを目的とした。
試料には、Si、Mg、AlおよびCaを比較的高濃度に含み、チタノマグネタイト系列試料を上回る保磁力を示す、アメリカ合衆国ユタ州アイアン郡産の天然磁石を用いた。XRD分析、EPMA分析を行った後、集束イオンビーム加工装置(SMI4050)によりTEM観察用薄膜試料を作製し、分析電子顕微鏡(JEM-ARM200F)を用いて微細組織観察および組成分析を行った。電子線ホログラフィー測定は、顕微イメージングソリューションプラットフォーム事業を通じて共用された日立製作所製超高圧ホログラフィー電子顕微鏡(加速電圧1 MV)を用いて実施した。
高分解能TEM観察の結果、試料はほぼ純粋な磁鉄鉱からなる母相中にSiに富むスピネル相およびCa-Mg-Siに富むスピネル相の微細析出物を含むことが確認された。一方、XRD分析、EPMA分析ならびにTEM観察の範囲では、磁赤鉄鉱の存在を示す明瞭な証拠は得られなかった。さらに、超高圧ホログラフィー電子顕微鏡による磁束分布観察では、磁鉄鉱母相中に比較的均質に分布する磁束が、これらの析出相へ引き寄せられるように集中する様子が観察された。特にCa-Mg-Siに富む析出相では、析出物の伸長方向に平行な磁束線が認められた。これらの結果は、Siを含むスピネル析出相が磁区構造や磁壁移動に影響を与え、高保磁力の発現に重要な役割を果たしている可能性を示唆する。従来、Type-1天然磁石の高保磁力は主として磁赤鉄鉱化に起因すると考えられてきたが、本試料では磁赤鉄鉱の存在が確認されなかったことから、Siを含むスピネル析出相が高保磁力発現の主要因である可能性が高い。