講演情報

[R2-14]REE含有アパタイトの結晶構造に及ぼす複合置換様式とハロゲン種の影響

*三鳥川 璃音1、松下 能考2、興野 純3 (1. 筑波大院・生命地球科学、2. NIMS、3. 筑波大・生命環境)

キーワード:

希土類元素、フッ素燐灰石、塩素燐灰石、ランタン、ネオジム

【はじめに】 アパタイト Ca₅(PO₄)₃(F,OH,Cl)は,希土類元素(REE)の主要なホスト鉱物であり,2種類の複合置換様式,2Ca²⁺ = REE³⁺ + Na⁺およびCa²⁺ + PO₄³⁻ = REE³⁺ + SiO₄⁴⁻によってREEを取り込む.前者はbelovite型置換(Na型置換),後者はbritholite型置換(Si型置換)と呼ばれる.REEはランタノイド収縮により,原子番号の増加に伴ってイオン半径が小さくなるため,原子番号が大きいほどCaと置換されにくくなる.しかし,アパタイトとREE間の分配係数を実験的に調べた研究では,原子番号57のLaよりも,60のNdや64のGdの方がアパタイトに取り込まれやすいことが示されており,REEの固溶はイオン半径差だけでなく,結晶化学的要因が関与していると考えられている.アパタイトの結晶構造(空間群P6₃/m)には,2種類のCa席,すなわちCa1席およびCa2席が存在する.天然のフッ素アパタイト(FAp)では,REEは主にCa2席を占有することが示されている. 一方,最近のDFT計算によれば,FApにおけるREEの席選択性は複合置換の様式に依存し,Si型置換ではREEがCa2席を優先的に占有し,Na型置換では一部のREEがCa1席を優先的に占有することが示されている.さらに,アパタイト構造へのREEの分配係数は,FApに比べて,塩素アパタイト(ClAp)の方が小さいことが報告されており,ハロゲン種もREE固溶に影響を与えている. 以上のことから,アパタイトにおけるREEの固溶は,(1) REE種,(2) 複合置換の様式,(3) ハロゲン種が複合的に関与していると考えられる.そこで本研究では,La-FAp,La-ClAp,Nd-FAp,Nd-ClApの単結晶を,Na型置換およびSi型置換で合成し,REEの固溶量および結晶構造を調べた.
【実験方法】 La-FAp,La- ClAp,Nd-FAp,Nd-ClApの単結晶は,CaCl₂・2H₂O,CaF2,(NH₄)₂HPO₄,SiO₂, Na₂CO3,REECl3,REE2 (CO3)3を出発物質として合成した.得られた単結晶は,Rigaku XtaLAB Synergy-Rを用いて100Kで単結晶X線回折(XRD)測定を行い,SHELXLプログラムにより結晶構造精密化を行った.単結晶XRD測定後,同一結晶を回収し,JEOL JXA-8530F EPMAを用いて化学組成を定量分析した.
【結果と考察】EPMAの結果,Si型置換で合成したアパタイトのLa含有量は,FApで0.32-2.18 apfu,ClApで0.15-1,56 apfu, Nd含有量は,FApで0.46-2.09 apfu,ClApで0.08-1.45 apfuであった.一方,Na型置換で合成したFApのLa含有量は,0.26-1.26 apfu,Nd含有量は,0.21-1.15 apfuであった.これらの値は,先行研究において合成FApおよびClApで報告されているREE最大含有量を大幅に上回る値であった.単結晶XRDの結果,Si型置換条件で合成したLa-FApはLaを最大2.18 apfu固溶し,端成分FApと比較して単位格子a,c,Vがそれぞれ,2.1%,2.2%,6.4%増加した.一方,Si型置換で合成したNd-FApはNdを最大2.09 apfu固溶し,a,c,Vがそれぞれ,1.1%,0.8%,3.1%増加し,その変化率はLa-FApに比べて小さかった.このことは,Ndの方がLaよりもアパタイト構造に与える歪みが小さく抑えたままREEを固溶できることを示唆しており,REE分配係数に関する先行研究の結果とも調和的である.また,Si型置換で合成したLa-ClApは,Laを最大1.56 apfu固溶し,端成分ClApと比較して,a,c,Vがそれぞれ,0.8%,2.1%,3.8%増加した.一方,Si型置換で合成したNd-ClApでは,Ndを最大1.45 apfu固溶し,a,c,Vがそれぞれ,0.1%,1.3%,1.3%増加し,その変化率はLa-ClApよりも小さい傾向を示した.この結果は,FApの場合と整合的であった.さらに,ClApではLaとNdを固溶した場合に,FApに比べてREE固溶量が低くなる傾向が認められた.このことは,ハロゲン種がREEの固溶限界や結晶構造変化に影響を及ぼす可能性を示している. 本研究の結果から,アパタイト構造へのREEの固溶は,REE種,複合置換の様式,およびハロゲン種の影響を受け,これらの要因が相互作用することで,REEの固溶量,席選択性,および結晶構造変化が制御されていることが示唆された.