講演情報

[R3-05]石英の高温高圧力下その場単結晶X線回折測定に向けた外熱式ダイヤモンドアンビルセル実験

*間宮 大晴1 (1. 明治大・院理工)

キーワード:

石英

石英は地殻を構成する主要鉱物の一つであり、花崗岩質岩石や堆積岩中に広く存在する。近年、一部地域の地殻深部で観測される地震波不連続面が、石英のα-β相転移に起因する可能性が指摘されている。地震波不連続面は、地球内部において地震波速度が急激に変化する境界であり、地球内部の温度・化学組成異常や鉱物相転移を反映している。常温常圧力下で安定なα石英は三方晶系の結晶構造をとり、常圧力下573 ℃付近で六方晶系のβ石英へ相転移する。このα-β相転移は、結晶構造の対称性が高くなる二次相転移であり、温度・圧力条件の変化に伴って石英の弾性特性や地震波速度に大きな影響を及ぼす可能性がある。石英のα-β相転移条件と、それに伴う弾性特性の変化が明らかになれば、地殻深部の温度や化学組成を推定することができると期待される。しかし、石英の高温高圧力下弾性定数は、α石英では比較的よく決定されている一方、β石英については依然として先行研究間の差が大きい。β石英の結晶構造は、単結晶X線回折測定や理論計算により研究が進められてきた。β石英は常温に回収できないため、地球深部条件における結晶構造を精密に決定するにはその場単結晶X線回折測定が必要であるが、技術的な制約からいまだに行われていない。本研究では、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧力発生と、外部抵抗加熱による高温発生を組み合わせ、高温高圧力下におけるβ石英の結晶構造を単結晶X線回折法により精密決定することを目的とした。まず、有限の開口角をもつDAC中に封入された試料から十分な回折点を観察できるかを検証するため、セル内に封入したα石英試料に対して常温常圧力下単結晶X線回折測定を行った。DACにはBoehler-Almax型のセルを用いた。XRD測定にはBruker社の D8 VENTUREを用い、Mo Kα線、50 kV、1.4 mAで測定を行った。解析にはAPEX4およびSHELXLを使用した。回折角度4.79 – 24.87°、-4 < h < 4、-5 < k < 5、-6 < l < 6、の範囲で903の回折点(独立な点は91、十分な強度の点は77)が得られた。結晶構造を精密決定した際のR値は、R1 = 0.0285、wR2 = 0.0790であった。回折データに基づいて先行研究と整合的な結晶構造データを得ることに成功した。また、新たに構築した単結晶X線回折測定用DACの到達可能温度を常圧力下で検証した。セルに封入した試料を1気圧、675℃まで加熱し、その場ラマン散乱測定を行った。ラマン散乱測定は、JASCO社のNRS-4500を用いた。波長532.06 nm、出力50 mWの励起レーザーを用い、分光には1800grooves/mmの回折格子を用いた。レーザー集光径は直径約1μmで、スペクトル分解能は約0.8 cm−1 であった。高温ラマン散乱スペクトルでα-β相転移が観察され、構築したセルがα-β相転移温度まで到達可能であることが示された。さらにX線回折測定システムを最適化することで、セル内の試料に対して1気圧、100 ℃まで単結晶回折測定を行い、α石英の結晶構造の決定に成功した。今後、新たに構築したその場測定システムを用い、高温高圧力下におけるβ石英の結晶構造を精密決定する。測定が進展することで、β石英弾性特性に関する基礎データが得られ、地殻内地震波不連続面の解釈に貢献できると期待される。