講演情報

[R3-06]高圧合成含水シリカガラスの含水量と中距離構造秩序

*奥地 拓生1,2、高橋 柊斗2,1、小木曽 哲3、清水 健二4、牛久保 孝行4、富岡 尚敬4、小野寺 陽平5、有馬 寛1,2 (1. 京都大・複合研、2. 京都大・院工、3. 京都大・人環、4. JAMSTEC・高知コア研、5. 物質・材料研究機構)

キーワード:

シリカガラス、H2O、中距離構造、高圧力

シリカ(SiO2)を主成分とするマグマは、地球の表層から地殻の内部に至る領域において、海水を起源とするH2Oを貯蔵し、運搬し、放出する主要な媒体である。マグマに乗って表層と内部の間を循環するH2Oの役割を理解するためには、地殻内部の条件でつくられる含水マグマの物理的な性質を明らかにする必要がある。高圧力条件で含水マグマを合成したのちに急冷すると、ガラス化温度でのマグマの構造を維持したガラスを回収することができる。この含水ガラスを物質科学的な手法で研究することにより、含水マグマの物理的な構造と性質に関する基本的な情報を得ることができる。このような含水ガラスの研究を進展させることにより、水素ガスセンサーや水素燃料電池に応用されるプロトン伝導体としての、新たなガラス材料を作り出せる可能性もある[1]。

⾚外吸収分光などによる含⽔ケイ酸塩ガラスの先行研究によって、マグマ中でSiとOがつくる三次元ネットワークの内部にH2Oが取り込まれる際に、Si–O結合を切断してヒドロキシ基を形成する場合と、H2O分⼦に近い構造で取り込まれる場合があることが示された[e.g. 2]。一方で大量に水を含むシリカガラスの量子ビーム回折によって、First Sharp Diffraction Peak(FSDP)と呼ばれる、回折パターンの最もQの低い領域に出現する鋭いピークの位置が、Qの増加方向に移動することが明らかにされた[3]。非晶質構造のFSDPは最近接の原⼦間距離を超えた構造の相関(中距離構造秩序)に由来すると考えられている。無水のシリカガラスのSiとOがつくる三次元ネットワークは空間的に疎に分布しており、その間の空隙越しに多⾯体の⾯が揃ってできる緩やかな秩序がFSDPを産み出している。そこで本研究では、含水量が比較的低濃度のものを含む含水シリカガラスの中距離構造を含水量の関数として系統的に解析することで、H2Oの取り込みがネットワーク構造に与える影響を明らかにすることを試みた。5 kbarと10 kbarの各圧⼒において、異なる封入H2O量の複数種類の含水マグマをつくり、それらを急冷することによって含水ガラスを合成した(一例は添付画像を参照)。得られたガラスのH2O濃度を熱重量分析法と二次イオン質量分析法によって封入H2O量とは独立に分析した上で、得られた分析の結果を相互に比較した。中距離構造の解析は上述のFSDPに注目し、SPring-8放射光施設での⾼エネルギーX線回折法を用いて行った。得られた結果から、含水シリカガラスのFSDPの位置が、含水量及び圧力と相関して系統的かつ非線形的に増加することがわかった。この増加はガラスのネットワーク構造の総体的な高密度化を示し、H2Oが溶け込むことで圧力に敏感な新しい構造がつくられたことを意味するものである。以上のような含水シリカガラスの系統的な解析の例は過去になく、本研究によってシリカガラスへのH2Oの取り込みが構造に与える影響の理解が大きく進んだと考えられる[1]。

文献 [1] 高橋柊斗 (2025) 京都大学工学研究科修士論文. [2] Stolper, E. (1982) Contrib. Mineral. Petrol. [3] Urakawa, S. et al. (2020) Minerals.