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[R3-07]SiO2スティショバイトにおける水の溶解機構:第一原理計算による知見

*薛 献宇1 (1. 岡山大学)

キーワード:

スティショバイト、水、第一原理計算、核磁気共鳴、振動分光法

スティショバイトは、沈み込み帯により水を深部マントルへと運搬する際の重要な水のキャリア候補の一つである。SiO2スティショバイトにおける水の溶解機構ついては、複数の先行研究がなされたが、その解釈(ハイドロガーネット置換様式か、分子H2Oか)は分かれている。
本研究の最終的目的は、第一原理計算と、NMRおよび振動分光法測定等を用いた包括的なアプローチによる徹底的解明であるが、その第一段階として、本発表では第一原理計算の結果を報告する。
計算は、我々の最近のMgSiO3エンスタタイトに関する研究(Xue et al., 2024)と同様に、Quantum-ESPRESSOパッケージ(v. 7.0)を用い、第一原理密度汎関数理論(DFT)法により、Siを4つの水素で置換する(4H)Si欠陥を含むSiO2スティショバイトモデル(2x2x3スーパーセル、2.54 wt% H2O含有)のエンタルピー、及び1H, 29Si NMRと振動(IR/Raman)スペクトルを計算した。
最もエンタルピーの低い2つのモデルは、Palfeyら(2023)の報告と同様に、4つのbasal oxygen原子にそれぞれ水素原子が1つずつ結合し、それらがaxial oxygen原子と強い水素結合を形成する配置を示し、点群はそれぞれD2とC2hである。いずれも格子定数aは無水より0.59-0.60%大きく、cは無水より0.11-0.12%小さい結果を示し、実験で報告された含水スティショバイトの特徴(e.g. Spektor et al. 2016)と一致する。
得られた1H化学シフトはそれぞれ10.7と11.0 ppmであり、実験的に観測された値(10.5~11.5 ppm)とおおむね一致する。Kueterら(2023)は、観測された1H NMRピークのspinning sidebandsの強度は (4H)Si欠陥と一致せず、分子H2Oによると解釈した。しかし、これは彼らが仮定した(4H)Si欠陥の水素間距離が長過ぎたせいと考えられる。予想される(4H)Si欠陥の1H-29Si CPMAS NMRスペクトルも、NMR測定結果(Spektor et al., 2011)とおおむね一致する。
各モデルについて、4つの異なるOH伸縮振動数が予測されており、Palfeyら(2023)の計算結果及び実験的に観測された複数のバンドとおおむね整合する。ただし、OH伸縮振動は、SiOH変角振動の倍音と周波数が近いため、両者の間でフェルミ共鳴により、スペクトルがより複雑になっている可能性があるため、一対一のband assignmentは必ずしも正しくない。また、計算では、圧力の上昇に伴いOH伸縮振動数が低下すると予測されるが、Nisrら(2017)によるラマン測定では、逆の傾向が報告された。その原因は、フェルミ共鳴による可能性がある。
結論としては、これまで報告された含水スティショバイトの格子定数の変化、及び1H, 29Si NMRやIR/Ramanデータは、概ね計算で得た(4H)Si欠陥の特徴と整合的である。